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『双花町についてあなたが知り得るいくつかのことがら vol.6』(川口晴美:詩、芦田みゆき:写真、小宮山裕:デザイン) [読書(小説・詩)]

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やがてわたしたちのうちの一人がいなくなる お母さんがいなくなったのと同じようにいなくなったのかもしれないね へいき わたしたちは増えたから わたしたちは母で妻で姉で妹で娘 わたしたちは羽ばたく
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 どことも知れぬ不可解な場所、双花町を訪れた「あなた」は、いつしか迷宮に足を踏み入れていることに気づく。長篇ミステリー詩と写真の幻想的コラボレーション、すべての謎が解かれる最終パート。Kindle版(00-Planning Lab.)配信は2015年9月です。


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でも、あなたはやって来た。幾重にも仕掛けた銀色の罠があなたを誘導し、あなたは町の扉を開いたのかもしれない。
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 どこか不穏で心をざわめかせる写真と、幻想ミステリーのような謎めいた雰囲気の長編詩。二つの創作物が電子媒体の上で重なり合い、読者を否応なく双花町という名の迷宮の、その奥へと引き込んでゆきます。


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あなたは夢の中を歩いているような感覚になる。そう、これはすべて夢なのかもしれない。きっとそうだ。そうして最後の、いちばん奥の部屋が開かれる。
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 最終巻。すべての秘密が暴かれ、登場人物たちの背景と関係が明らかにされる「解決篇」です。語られるのは、母-娘、姉-妹、という関係性の錯綜した迷宮。その最奥、ついに一部屋に揃った三人の女と「あなた」。ここから解放されるのは誰なのか。

 あー、もちろん「あなた」ではないことは予想してしかるべきですね。


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あなたは何から逃れてここまで来たのだろう。思い出せない、夢が、何度でも蘇る。そう、きっとあなたはあなたの少女を殺してきた。あなた自身である何かを埋めてきたのだ。
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 最終巻で謎解きされるとは聞いていたのですが、予想外にきちんと説明されたなあというか、一度も書かれたことのない「筋道の通った説明」を、これまでの双花町の雰囲気を壊さないまま書くというのは、いくらなんでもそれは無理ではないかと危惧していたのですが、なんとまあ、ちゃんと片づけていて凄い、です。

 というわけで、長篇詩でホラーでミステリー、しかも写真と言葉とデザインが三位一体となって作り上げられているという、なかなかに希有な作品です。完結したので今や一気読みも可能。色々な意味で、三人の女性に翻弄されてみたい方は、まずはvol.1からどうぞ。


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逃れられない町の名前が、

あなたの内側に
   白く輝きながら舞い降りる。
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 余談ですが、最新詩集『Tiger is here.』(川口晴美) を読むと、双花町についてさらにいくつかのことがらを知り得るかも知れません。


タグ:川口晴美
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