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『水と祈り(ミズトイノリ、water angel)』(勅使川原三郎、佐東利穂子、鰐川枝里、カンタン・ロジェ) [ダンス]

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水平線に降り立つ
共鳴する
水面と皮膚
無抵抗の虚無
捉えて
離さない情愛が
両腕を締めつける
水に包まれて生まれ
水に包まれて死する
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「水と祈り」(勅使川原三郎)より


 2015年9月6日は、夫婦でKAAT神奈川芸術劇場に行って勅使川原三郎さんの公演を鑑賞しました。勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんを含む四名のダンサーが踊る公演時間1時間の舞台です。

 何もない舞台の床に、照明の光によって水面が作られ、ゆっくり、じんわりと、波紋が広がってゆきます。そこに立ち、水中のように緩やかな動きで身体を流し、ときには濁流のように激しく身体を迸らせる、勅使川原三郎さんと佐東利穂子さん。すげえ。

 一方では、くっきりとした光の線が舞台を区切り、越えられない境界を作り出して、身体を閉じ込めます。

 KAAT中スタジオの、観客席から舞台を見下ろす構造を活かした照明効果は素晴らしく、その演出には凄みがあります。観ているだけで、水面下に引き込まれそうな不安を覚えるほど。

 勅使川原さんと佐東さんの、人外レベルというか、超絶的なダンスはいつもの通り圧倒的なのですが、合間に走り込んできて踊ってくれる鰐川枝里さんとカンタン・ロジェさんのダンスも素敵でした。

 特に鰐川枝里さん。ああ、ヒトが気合入れて踊っているなあ、呼気、かっこいいなあ、という安心感。今後のKARAS公演でも、がんがん踊ってほしい。

 余談になりますが、終演後、ふと、今大きな話題となっている「トルコの浜辺に打ち上げられたシリア難民の子供の写真」を思い出して、ぞっとしました。いや、もちろん偶然なのですが、しかしその、暗号というか、シンクロニシティというか。

 越えられない境界。水に包まれて生まれ、水に包まれて死する。水と祈り。water angel。芸術家はときにこういったことをするから心底恐ろしい。


[キャスト他]

構成・演出・振付・照明・美術デザイン・選曲: 勅使川原三郎
出演: 勅使川原三郎、佐東利穂子、鰐川枝里、カンタン・ロジェ


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