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『DECADANCE デカダンス』(オハッド・ナハリン振付、バットシェバ舞踊団) [ダンス]

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振付は行ったことがないところへ行く手段であり、多くの場合、そこは存在しない。それは、数世紀前の人々がどこに向かって旅をするのか分からなかったのと同じです。
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オハッド・ナハリン


 2015年10月4日は、夫婦で神奈川県民ホールに行ってイスラエルのオハッド・ナハリン率いるバットシェバ舞踊団の公演を鑑賞しました。ナハリンの芸術監督就任10周年記念作品です。タイトルは頽廃という意味ではなく、DECA-DANCE、10年分のダンス、という意味らしい。17名のダンサーが出演する75分の舞台。

 オハッド・ナハリンの代表作からハイライトシーンだけを集めて再構成した、いわゆるベスト盤みたいなもの。公演を行う都市ごとに構成を変えるそうですが、日本公演は以下の演目から抜粋・再構成されたものだそうです。

Z/na (1995)
Anaphase (1993)
Mabul (1992)
Naharin's Virus (2001)
Zachacha (1998)
Sadeh21 (2011)
Telophaza (2006)
Three (2005)
MAX (2007)

 黒いスーツを着てしなやかに踊る冒頭から、いったん幕を下ろして、いきなり、半円形に並べた椅子に座ったダンサーたちが踊る「アナフェイズ Anaphase」のシーン。賛否両論を巻き起こしたという「ナハリンズ・ウィルス Naharin's Virus」の感染抑圧シーン、「ザチャチャ Zachacha」における観客を舞台上にひっぱり上げて一緒に踊らせるシーン。

 『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド』(乗越たかお)でも魅力たっぷりに紹介されていた数々の有名シーンが登場。ダンスの感動に加えて、ついに「話題のあのシーンを実際に観ることが出来た!」という感激まで。

 後半は、個人的に舞台を観たことがある「テロファーザ Telophaza」「マックス MAX」「Sadeh21」が登場しますが、その三本も「何となく見覚えがある」といった感じで、細かいところはまったく記憶に残っておらず、新鮮な気持ちで鑑賞できて良かった。いや、そこは反省したり悔しがったりすべきところでしょうか。

 「ザチャチャ Zachacha」の、いたずらっぽくも人間味あふれる温かいシーンから、一転して、寒々しい、痛々しい、そんな雰囲気に舞台が包まれます。そして、そこから、ダンサー一人一人の個性、個人としての尊厳のようなものが、滲み出てくるダンスへと。ベスト盤とは思えない見事な構成に驚かされます。

 意表をつくような、しなやかな動き。思わず引き込まれるオフバランス。バットシェバ舞踊団のダンスは見ていて気持ちよく、そして常に驚きがあります。個々の作品から切り出され、その(政治的な暗喩も含めた)意味づけを取り除かれ、純粋な抽象ダンスとなったシーンの数々を観て、やっぱりダンスそのものが、動きそのものが、感動的なのだと、そう再確認させられました。


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