SSブログ
映像(バレエ) ブログトップ
前の5件 | 次の5件

『ロメオとジュリエット』(ラヴロフスキー振付、ニーナ・アナニアシヴィリ、グルジア国立バレエ) [映像(バレエ)]

 今年の春、グルジア国立バレエ団を率いて来日して大いに話題になったニーナ・アナニアシヴィリ。2010年6月4日のNHK教育『芸術劇場』では、その公演から『ロメオとジュリエット』を全幕放映してくれました。

 『ロメオとジュリエット』と言えば緻密なマクミラン版(英国ロイヤルバレエ等のレパートリー)に慣れているせいか、ラヴロフスキー版は何となく演出が大げさで古めかしいというか、ストーリーと無関係な“にぎやかし”が多くて間が抜けているように感じるとか、振付が単調で動きの繰り返しも多く、登場人物の心理描写とダンスの一体感が不足している、など色々と物足りない気持ちになってしまいます。

 もちろんニーナ・アナニアシヴィリは素晴らしいのですが、大スターとしての貫祿、その存在感、いかにもロシアのバレリーナらしい大仰でくっきりとした踊り(と演技)、見事なテクニックの顕示など、どう観ても舞台にいるのはジュリエットじゃなくてニーナとしか感じられないのがちょっと残念でした。ニーナのファンなら何の問題もないというか、むしろ望ましい、それでこそ、なのかも知れませんが。

 ボリショイバレエの岩田守弘さんのマキューシオは実に素晴らしかった。ロシア人ダンサーと並ぶとずいぶん小柄なんですが、コミカルかつ力強い魅力的なマキューシオを堂々と踊っていて、彼の出番では舞台の雰囲気がぱあーっと華やかになります。観ていて気持ちいいんです。

 グルジア国立バレエ団は、いま一つというか、まだまだこれからのカンパニーだと思えましたが、吟遊詩人と道化師を踊ったヤサウイ・メルガリーエフ、ジュリエットの友人を踊ったラリ・カンデラキの二人は良かった。特にラリ・カンデラキさんの端正でみずみずしいバレエは好感度大。この若さあふれるペアが踊るシーンは何度か出てくるのですが、どれも繰り返し観たいという気になります。今後が楽しみです。

 色々と物足りない印象も受けましたが、良くも悪くもニーナのニーナによるニーナのファンのための舞台でした。ニーナ・アナニアシヴィリを観に行った観客は大満足だっただろうと思います。

『ロメオとジュリエット』(ラヴロフスキー版)
2010年3月12日、14日 ゆうぽうとホール(東京・五反田)
2010年6月4日放映、NHK教育『芸術劇場』

[キャスト]

ジュリエット:ニーナ・アナニアシヴィリ
ロメオ:アンドレイ・ウヴァーロフ
ティボルト:ワシル・アフメテリ
マキューシオ:岩田守弘
ペンヴォーリオ:ゲオルギー・ムシヴェニエラーゼ
パリス:ダヴィド・アナネリ
吟遊詩人/道化師:ヤサウイ・メルガリーエフ
ジュリエットの友人:ラリ・カンデラキ


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

『オンディーヌ Ondine』(フレデリック・アシュトン振付、吉田都、英国ロイヤルバレエ) [映像(バレエ)]

 2009年6月に収録された新しい『オンディーヌ』の舞台映像です。ついに吉田都さんのバレエをブルーレイディスクで鑑賞できる日がやってきました!

 タイトルロールのオンディーヌとは、いわゆる水の精(ウンディーネ)です。たまたま地上で遊んでいたオンディーヌの可憐な姿に一目惚れした貴族のパレモンは、逃げる彼女を追いかけて行って口説き落として結婚してしまいます。

 のんびりと船旅を楽しむ二人。そこにパレモンのもともとの恋人であるベルタが追いかけてきて、何とか二人の邪魔をしようと涙ぐましい努力をします。オンディーヌは無邪気にも魔法を使ってしまい、迷信深い船乗りたちは恐れおののいてオンディーヌを船から投げ落としてしまいます。たちまち海神の怒りで嵐が巻き起こり、船は沈没。

 辛くも生き延びたパレモンとベルタは、色々となかったことにしてご成婚おめでとうございます。そして各国の踊りが披露される華やかな結婚式の最中に、いきなり津波と共にオンディーヌが登場。水の精は人間の男に裏切られたときにはその相手を殺さなければならない宿命なのです。今や彼女のキスはパレモンにとって猛毒です。

 そうとは知らずパレモンはオンディーヌに許しを乞い、男がいっつもそうするようにとりあえずキスしてなだめようとします。オンディーヌも未練があって彼を死なせまいとして拒み続けますが、ついにたまらずに口づけを許してしまいます。たちまち倒れて死んでしまうパレモン。遺体を抱きしめて嘆くオンディーヌ。そのまま遺体を海に引きずり込んで、海底で彼の思い出と共に永遠に過ごすのでした。というか、結婚式の最中に新郎をもののけに奪われてしまったベルタの立場って一体・・・。

 というようなストーリーですが、何しろ元々はマーゴ・フォンティーンのプロモーション用作品ですから、全編に渡ってヒロイン出づっぱり。これだけ長時間に渡って吉田都さんの踊りを堪能できるというのは素晴らしい。しかも吉田都さんの当たり役として名高いオンディーヌ。ありがたやありがたや。

 一幕や二幕における、可憐で無邪気な若い娘であるオンディーヌを踊っているときの吉田都さんは、それはもう本当に十代の小娘に見えます。水に流れるような手足のなめらかな動き。浮力を感じさせるふわふわしたリフト。魂も体重も持たない水の精、手を離すと流れて行ってしまいそうな可愛らしいオンディーヌを観客は目の当たりにします。

 そして三幕における、絶望や悲嘆に苦しむ女性としてのオンディーヌ。印象ががらりと変わって、水にぐっしょり濡れた重い身体、立っているだけで苦しい重力の枷、なまじ魂を得てしまったために宿命に苦しみもがく姿がぞっとするほど生々しく、これまたすごい迫力。

 吉田都さんの超絶的なテクニックが「水の精」の表現をがっちり支えていて、もはや魔法としか思えないレベルに。ブルーレイディスク画質なので、細やかな表情の変化や指先の微妙な動き、衣装の質感などリアルに伝わってきて、もうたまりません。

 深い色彩が神秘的で美しい水精の群舞、三幕前半で披露される様々な踊りの楽しさ、嵐のシーンにおけるスペクタクル、そして英国ロイヤルバレエらしい豪華な(踊りにくそうな)衣装など、見どころもたっぷり。不協和音を多用した現代音楽と、古典の風格漂うアシュトンの振付が見事にマッチしているのも素晴らしい。

 吉田都さんが全幕踊る映像作品は今のところ市販されていないと思われるので、これは貴重なディスクです。吉田都さんのファンはむろん必見。そうでなくても、少しでもバレエに興味がある方ならとにかく観て下さい。これが、吉田都さんです。

[キャスト]

吉田都 Miyako Yoshida :オンディーヌ
エドワード・ワトソン Edward Watson :パレモン
ジェネシア・ロサート Genesia Rosato :ベルタ
リカルド・セルヴェラ Ricardo Cervera :ティレニオ(海神、海の王)


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

『スパルタクス Spartacus』(グリゴローヴィチ振付、カルロス・アコスタ、ボリショイバレエ) [映像(バレエ)]

 来月はいよいよ英国ロイヤルバレエ団の来日公演。吉田都さんの舞台はチケット取れませんでしたが、ええ、もうどうやったって取れませんでしたが、張り切ってカルロス・アコスタを観に行きますよ。

 というわけで、予習をかねて、2008年に収録されたカルロス・アコスタの新しめの舞台映像を鑑賞。演目は、ユーリー・グリゴローヴィチの代表作の一つ『スパルタクス』、もちろんボリショイバレエ団です。

 ブルーレイなので画質は非常に良い。筋肉の力み感や皮膚のしわの感じまでばっちり再現されています。ただ、そのために衣装の安っぽさ、剣とか鎧の偽物チープ感まで、やたらリアルに伝わってくるのが残念。

 カルロス・アコスタは元気一杯で跳ねてました。際立つテクニック、エネルギーあふれるような、きびきびした気持ちいいダンスです。観ていて爽快。ただ、ご本人の魅力である品の良さ、明るさが前面に出ていて、前半の反乱まではいい感じなのに、後半の鎮圧シーンの悲劇的盛り上がりがいま一つに感じられました。

 以前に映像で観たイレク・ムハメドフの舞台は、もう最初から悲壮感、壮絶感あふれていて悲劇一色で圧倒してきたので、比べてしまうとちょっと迫力不足かも。

 スパルタクスの妻、フリーギアを踊ったニーナ・カプツォーワ(Nina Kaptsova)も素晴らしく、すらりと伸びた長く美しい(グリゴローヴィチ的な)脚、びくともしない強靱な姿勢保持、男性ダンサーの肩の上に片手倒立する(フィギュアスケートのペア部門で高得点が期待できそうな)無茶リフトもなんなくこなしていて、何ともカッコ良かった。

 作品としては、うーん、グリゴローヴィチ。スペクタクルというか見せ物的な娯楽性に富んでいて、男性群舞が派手で、マクミランらと同時代の作品とは思えない田舎芝居的な大仰で古くさい演出も気にかかりますが、まあ女性の露出と煽情的なシーンが多い(これは堕落したブルジョワのあさましい姿を見せることで観客の革命的精神を鼓舞するための演出なのであります、閣下。もちろんだ、よく分かるともグリゴローヴィチ同志)ところがよろしいんじゃないでしょうか。

[出演]

カルロス・アコスタ(スパルタクス)
ニーナ・カプツォーワ(フリーギア)
アレクサンドル・ヴォルチコフ(クラッスス)
マリーヤ・アラシュ(エギナ)


タグ:ボリショイ
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

『第38回ローザンヌ国際バレエコンクール』(NHK教育) [映像(バレエ)]

 決勝に残った20名のうち16名が男子、さらに入賞者7名のうち5名が男子という異例の状況で大いに話題になった第38回ローザンヌ国際バレエコンクール。その決勝の様子を、5月1日にNHK教育が放映してくれました。

 まず注目は、ギリェルメ・ドゥアルテ・デ・メネゼスとヴィトール・ドゥアルテ・デ・メネゼスという双子の兄弟。双子がともに決勝に残ったというので話題になりましたが、実際に観てみると両名とも溌剌というかきびきびというか、元気で明るいバレエで嬉しかったです。外見そっくりなのに踊りがまた微妙に違うのが面白い。

 小柄で可愛い元気な小動物系、マルチェリーノ・サンベも魅力的でした。昨年の第37回コンクールで踊ったテルモ・モレイナと同じポルトガルのダンサーで、傾向も似ているような気が、というか失礼ながらどっちがどっちだったか個人的に分からなくなってしまったりして、ううむポルトガル恐るべし。ポルトガルのバレエ団の舞台を観てみたいと思いました。

 元気溌剌・明朗快活・小動物系と言えば、クリスティアン・エマヌエル・アムチャステギも木ノ内周さんもそんな感じで、これからの男性ダンサーの主流はこちらになるのでしょうか。嬉しいかも。

 同じく昨年の第37回コンクールの映像で、その端正で丁寧な表現が印象に残ったヨウ・エイキですが、今年はそれに加えて決めポーズの美しさが際立ち、観ていて爽快さを覚えます。

 リョウ・ソウは細かい動きが既にプロっぽく、その落ち着いた安定感が気に入りました。とても15歳とは思えないスケールのでかいバレエを踊った佐々木万璃子さんも立派。

 最終的に一位入賞と観客賞をとったのはクリスティアン・エマヌエル・アムチャステギですが、この子はもうずば抜けていると素人目にも分かる凄いバレエで、審査員全員(+観客)の意見が一致したというのも無理はありません。特に、決勝ではたった一人、彼だけが踊った『カリバン』(キャシー・マーストン振付)は息をのむような迫力でした。将来が楽しみです。

 三位入賞した佐々木万璃さんが番組にゲストとして招かれていました。コンテンポラリー部門において、包容力あふれる大人の魅力で観客を引きつけたあのダンサーが、素で話してるのを見るとまったく年齢相応の子どもなのでびっくり。

 コンテンポラリー部門と言えば、今年はクリストファー・ウィールドンとキャシー・マーストンという若手コリオグラファの作品が課題だったのですが、もうこれがダンス作品として素晴らしく、審査を意識しないでダンス公演として楽しめました。この二人の作品は要チェック。どれも傑作ですが、個人的にはクリストファー・ウィールドン作品では『コメディア』、キャシー・マーストン作品では『カリバン』が特に気に入りました。


[決勝に残ったダンサー]

アクリ瑠嘉
フランシスコ・ムンガンバ・レイナ : 二位入賞
アレクサンドラ・ヴァラヴァニス : スイス賞
ルイス・ターナー : 七位入賞、コンテンポラリー賞
ギリェルメ・ドゥアルテ・デ・メネゼス
ヨ・ギョウトウ
ヴィトール・ドゥアルテ・デ・メネゼス
アーロン・スミス
カイトリン・スタワラック : 四位入賞
リョウ・タクテイ
ヨウ・エイキ
チン・チンイ
マルチェリーノ・サンベ
木ノ内周
リョウ・ソウ
ジョナサン・デ・アラウジョ・バティスタ
アーロン・シャラット : 五位入賞
クリストファー・エヴァンズ : 六位入賞
佐々木万璃子 : 三位入賞
クリスティアン・エマヌエル・アムチャステギ : 一位入賞、観客賞


[決勝のコンテンポラリー部門で踊られた作品]

クリストファー・ウィールドン振付
『コメディア』
『コンティヌウム』
『ポリフォニア』

キャシー・マーストン振付
『リベラ・メ』
『キャプテン・アルヴィング』
『トレーセス』
『カリバン』


タグ:ローザンヌ
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

『シンデレラ』(パリ・オペラ座、アニエス・ルテステュ、ジョゼ・マルティネス) [映像(バレエ)]

 パリ・オペラ座によるヌレエフ版『シンデレラ』の新しい舞台映像です。収録は2008年4月、パリ・オペラ座ガルニエ宮。

 ヌレエフ版『シンデレラ』といえば、シルヴィ・ギエムが主役を踊った1987年収録の映像が有名ですが、私の知る限りDVD化されていない(ビデオテープのみ)ため、ようやくこの作品を美しい映像で観ることが出来て嬉しい。

 ヌレエフ版『シンデレラ』では、設定がちょっとひねってあります。舞台は1930年代のハリウッド。王子様は映画スター。魔法使いは映画プロデューサー。舞踏会は新作映画のオーディション会場。

 展開はいわゆる“シンデレラストーリー”というやつで、継母や意地悪な義姉たちにいじめられているシンデレラが、敏腕映画プロデューサーのコネで新人女優としてオーディションに合格。しかしその直後に行方をくらましてしまう。ぜひ彼女を共演者にと望んだ映画スターは、彼女が残したガラスの靴を持って探し回って、ついにシンデレラを見つけて契約書にサインさせたのでした。めでたしめでたし。

 説得力のある設定のもと、黄金時代のハリウッドの華やかさ、そしてくだらなさが、スラップスティックコメディとして展開します。ヌレエフが振り付けたほぼ唯一のコメディ作品だそうです。

 なるほど、いかにもヌレエフらしいコメディ。つまり全然笑えないのです。昔のミュージカルっぽいコミカルな動き、映画スタジオでの『キングコング』撮影風景など、笑えそうなシーンが多く、セットの巨大さ(というか大仰さ)なども楽しいのに、観ていて何だか脱力気味になるのは私だけでしょうか。

 振付のわざとらしさ、間の悪さ、くどさ、など笑いのツボを微妙に外しまくっているように感じます。ヌレエフが他にコメディ作品に挑戦しなかったのはパリ・オペラ座にとって幸いだったかも知れません。

 さらに残念なことに、義姉を踊ったレティシア・プジョルとステファニー・ロンベールがいま一つ。というかシンデレラ役のアニエス・ルテステュがあまりにも貫祿があり過ぎて、第一幕の「いびり倒しシーン」が空回りしてしているのがつらいところ。

 ちなみに1987年の映像では、義姉たちを踊ったイザベル・ゲランとモニク・ルディエールという大ベテランが、とっても弾けた演技で笑わせてくれました。シルヴィ・ギエムをその貫祿でもって威圧しまくり、「あんたみたいな小娘がここで踊るなんて十年早いんだよ」と言わんばかりの堂々たる新人いびりに観客拍手喝采というわけ。

 とまあ色々と不満もあるのですが、二幕の後半、アニエス・ルテステュが映画スタジオにさっそうと登場してからは、もう他のことはどうでも良くなります。ジョゼ・マルティネスのソロに度肝を抜かれ、続くルテステュとのパ・ド・ドゥに魂を奪われ、しまった時間の無駄をしたチャプター飛ばしでここから再生すれば良かった、などと邪念をいだきつつ、うっとり見とれてしまいました。

 とにかくマルティネスが超絶技巧を実に品よくスマートに披露して見せれば、ルテステュが美しいバレエでそっと包み込む。観ているだけで幸福になるような素晴らしいバレエ。個人的には、ジョゼ・マルティネスが素晴らしいと思う。

 見終わった後には、とにかくマルティネスとルテステュが踊れば、他のこたどうでも良くなるんだなあ、といういい加減な感想が残りました。これから観る方は、とりあえず第二幕だけ先に観てしまうというのが吉かも知れません。

[キャスト]

シンデレラ:アニエス・ルテステュ
映画スター:ジョゼ・マルティネス
継母:ステファン・ファヴォラン
義姉:レティシア・プジョル、ステファニー・ロンベール
プロデューサー:ウィルフリード・ロモリ
ダンス教師:クリストフ・デュケンヌ


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇
前の5件 | 次の5件 映像(バレエ) ブログトップ