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『世界のプリマ 最後の闘いの日々 ~バレリーナ・吉田都~』(NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」) [映像(バレエ)]

 2010年10月25日に放映されたNHK総合「プロフェッショナル 仕事の流儀」では、先日、英国ロイヤルバレエを退団した吉田都さんを取り上げ、引退公演までの日々を取材してくれました。前回、この番組で吉田都さんを取り上げたのは2007年04月24日ですから、三年半ぶりということになります。

 前半はロンドンでの引退公演『シンデレラ』、後半は東京での引退公演『ロメオとジュリエット』のレッスンが中心となっています。公演日は迫ってきているのにどうしても自分で納得できるレベルのバレエが踊れない。身体に故障を抱えながら、ぎりぎりまで追い詰められた苛烈な練習の日々をカメラが追います。

 2007年の番組に比べてバレエダンサーという職業の過酷さに踏み込んだ内容になっており、英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルという立場がどれほど厳しく恐ろしいものであるかを生々しく伝えてくれます。吉田都さんがときおり見せる手負いのケモノのような目つき。自分をあえて限界に追い込んでゆく、狂気にも似たバレエへの執念。インタビューの途中で引退の抱負を語ろうとして込み上げてきたものに涙ぐんでしまうシーンも印象的。

 ピーター・ライトから最後の指導を受けるシーンでは、ロンドンに来たばかりの幼い吉田都さんがピーター・ライトの指導のあまりの厳しさに泣きながらレッスン場を飛び出していった、というエピソードを思い出してしまい、こちらの胸にも込み上げてくるものが。

 最後の公演に駆けつけて吉田都さんを激励するレスリー・コリアの姿からは受け継がれる伝統という言葉が脳裏をよぎり、ギエムやバッセルやデュランテなど同時代に活躍したダンサーたちの写真が映ればノスタルジーが高まり、色々と心中穏やかではいられず。

 というわけで、前回よりもはるかに見応えのある番組になっていました。

 『ロメオとジュリエット』の舞台映像も、ラストシーンを中心に少しだけ見せてくれたのが嬉しい。11月19日(金)のNHK教育「芸術劇場」で全幕を放映するというお知らせには狂喜乱舞ですよ。(この引退公演、もちろんチケットは取れませんでした)

 放映予定が変更される可能性もあるので、詳しくは次のページで確認して下さい。(たぶん放映後にはリンク切れとなります)
  http://www.nhk.or.jp/art/current/music.html#music1119

 他にもNHKでは「スーパーバレエレッスン ロイヤル・バレエの精華 吉田都」の再放送が続いており、そろそろ『ロメオとジュリエット』のレッスンが始まりますから、興味がある方はこちらもどうぞ。


タグ:吉田都
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『オーレリ・デュポン 輝ける一瞬に』(セドリック・クラピッシュ監督) [映像(バレエ)]

 パリ・オペラ座のエトワール、オーレリ・デュポンの姿を三年間に渡って撮影したドキュメンタリーフィルム。2009年制作です。

 本人へのインタビューを軸にして、レッスン風景、リハーサル(『白鳥の湖』のオデット、『椿姫』のマルグリット)、マニュエル・ルグリとのパートナーシップ、という具合に進んでゆきます。後半は、出産によるブランク、復帰公演に向けた練習と本番舞台(『ライモンダ』のタイトルロール)、そしてルグリ引退へ。ドラマチックに展開してゆきます。

 芸術監督ルフェーヴルとデュポンが会話しているシーンで、背後でマッツ・エック振付『ベルナルダの家』の練習が行われているところから、撮影期間は一部『パリ・オペラ座のすべて』(フレデリック・ワイズマン監督)と重なっているようです。

 もちろんデュポンのファンは必見。バレエ学校時代の幼い少女オーレリ(すげえ美少女!)の映像、出産間近のゆっさゆっさデュポン、復帰公演の舞台裏でブランクから生ずる不安に押しつぶされそうな表情を浮かべるデュポン。カメラの前でカッコ良く煙草をふかすデュポン。そしてルグリとの共演の練習シーン。オーレリ・デュポンの魅力が満載です。ファン感涙ものです。

 デュポンにはさほど興味がないという方も、ルグリの姿をたっぷり拝めますし、二人の練習風景と会話には興味深いものがあります。またインタビューの際には隣にマリ・アニエス・ジロ姐さんが立っていらして、デュポンと一緒に煙草などふかし、とってもふてぶてしい威光など放ってらっしゃいますので、彼女のファンも観る価値ありますよ。

 というか私この映像を見てジロ姐さんとデュポンがよく似ているということに気づきました。ジロ姐さんをちょっと小柄にして、いかり肩を緩やかにして、知性の輝きを加えれば、まさにそれがオーレリ・デュポン。はっ、今私、両方のファンを敵に回してしまいましたか。

 ドキュメンタリー本篇は一時間ほどですが、特典映像として付いてくる映像が凄い。デュポンとルグリのパ・ド・ドゥが二本も収録されているのです。合計で20分。

 一つはプレルジョカージュ振付『ル・パルク』第三幕のパ・ド・ドゥ。キスしたまま、男性が手放しで高速回転して女性をプロペラのように振り回す、いつもより多めに回しております、のシーンです。

 もう一つはノイマイヤー振付『椿姫』第三幕のパ・ド・ドゥ。いわゆる「黒衣のパ・ド・ドゥ」です。これが凄い名演。観ていて鳥肌がたつほどの感動で、個人的にはこの映像のためにだけでも本作を購入する価値があると思いました。


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『パリ・オペラ座のすべて』(フレデリック・ワイズマン監督) [映像(バレエ)]

 巨匠ワイズマン監督がパリ・オペラ座バレエ団を撮ったというので話題のドキュメンタリー映画。何だかご大層なボックス入りで何枚か写真などオマケをつけて「完全限定生産デラックス版」と称する、まるで観光客相手の土産物のような版しか売ってないようなのですが、エトワールの写真に興味がない方は、いずれ出るであろう「通常版」を待ってから購入しても良いかも知れません。

 三時間近い大作で、特にストーリーや解説はなく、静かに淡々とパリ・オペラ座の姿が映し出されます。いくつかの公演の振付、稽古、リハーサル、本舞台までの過程を軸に、芸術監督ブリジット・ルフェーヴルおばさんの仕事っぷり、スタッフや職員の勤務風景、オペラ座の建物のあちこち、屋上から見渡したパリの風景、などが折り込まれています。

 とにかくエトワール総出演という感じなので、パリ・オペラ座のファンなら満足できるでしょう。他にも食堂の様子とか、衣装や小道具など裏方さんの仕事場を見ることも出来るし、何気なく映し出される階段や廊下などの光景(屋上の養蜂箱から蜂蜜を回収するシーンもあり)もはっとするほど美しく、大口パトロンを招いたパーティの企画を相談するところなど興味深いシーンもたっぷり。

 個人的には、フランスの年金制度改革に反対するスタッフ組合が大規模ストに突入したとき、ダンサー組合がそれに同調するのを防ぐべく、事務局長が若いダンサーたちを必死に説得するという生々しいシーンがお気に入り。ここでも場をまるめこんでしまう役目はやっぱり女傑ルフェーヴルおばさん。

 コンテンポラリーダンスのファンにとって要注目なのは、何といってもサシャ・ヴァルツ、マッツ・エック、ウェイン・マクレガー、プレルジョカージュ、そしてピナ・バウシュといった現代を代表する著名コリオグラファたちの作品を、断片的ながら、その振付シーンから舞台映像まで通して観ることが出来るということ。

 個人的には、マッツ・エックのデビュー作『ベルナルダの家』の舞台映像が、それもマニュエル・ルグリとマリ・アニエス・ジロ姉さんが出ているシーンが収録されていたのには大感激。マッツ・エック自身が指導しているシーンもあります。すげえ。

 ウェイン・マクレガーの『ジェニュス』は初めて観る作品ですが、これが素晴らしい。思わずはっとするような新鮮な動きが印象的で、心に残ります。しかもマリ・アニエス・ジロ姉さんがソロを踊るシーンがけっこう長時間に渡って収録されていて、これがもう最高。他にアニエス・ルテステュとマチュー・ガニオのパ・ド・ドゥ映像もあり。この作品はぜひ全体を観たいと思いました。

 他に、ピナ・バウシュ『オルフェオとエウリディーチェ』、サシャ・ヴァルツ『ロミオとジュリエット』、プレルジョカージュ『メディアの夢』など。いずれも振付指導、リハーサル、本番舞台をそれぞれ見せてくれます。クラシック系では、『パキータ』(ラコット版)、『くるみ割り人形』(ヌレエフ版)。

 というわけで、もちろんパリ・オペラ座のファン向けですが、最新の現代バレエ作品、その振付指導を行うコレオグラファの姿、リハーサルの様子など、普段あまり見ることの出来ないシーンも多く、コンテンポラリーダンスのファンにもお勧めです。


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『ロメオとジュリエット』(ケネス・マクミラン振付、タマラ・ロホ、カルロス・アコスタ、英国ロイヤルバレエ) [映像(バレエ)]

 いよいよ明日、タマラ・ロホ(Tamara Rojo)とカルロス・アコスタ(Carlos Acosta)の舞台を観に行く予定なので、直前の予習としてこの二人が踊った『ロメオとジュリエット』(ケネス・マクミラン版)の舞台映像を観てみました。収録は2007年11月です。

 情熱的で初々しいさわやかな舞台です。若々しくてエネルギッシュで上品という、主演の二人の特徴が際立っていました。逆に言うと、あんまり悲劇的な感じがなく、まあイキオイで色々やっちゃったねえ、という明るい印象が残ります。

 フェリとか数ある名演と比べるとロホのジュリエットはとても健やかで明るい感じで、後半になっても絶望的な情念やら追い詰められた悲壮感といったものはそれほど強く感じられず、むしろ健気さが先に立つような印象があり、個人的な好みですが、こういう清涼感あふれる初々しいジュリエットはとても魅力的だと思います。アコスタの品の良さも素敵。

 例によって英国ロイヤルバレエらしい豪華な衣装、凝った舞台美術、深みのある照明など、演劇としても見応えがあります。さすがシェークスピアの国。

 佐々木陽平(Yohei Sasaki)さんはベンヴォーリオをきっちり踊ってましたが、ソロで踊るシーンがほとんどない上、ストーリー展開上ベンヴォーリオが活躍する唯一の場面(追放されたロメオにジュリエットの「死」を伝えにゆくシーン)が本作ではカットされていて、あまり目立たないのが残念でした。

 キャスト一覧には載ってないのですが、ジュリエットの友人たちの中に、小林ひかるさんと、チェ・ユヒ(崔由姫/Yuhui Choe/チェ・ユフィ)さんが混じっていて、これは思わぬ儲け物というか、大喜び。ユヒさんの端正でみずみずしい踊りはやはり素晴らしく、がっちりハートをつかまれます。

 全体的に隙のない素晴らしい舞台なので、演劇は好きだけどバレエは観たことがないという方にもお勧めです。

[キャスト]

ジュエット:タマラ・ロホ(Tamara Rojo)
ロメオ:カルロス・アコスタ(Carlos Acosta)
マキューシオ:ホセ・マルタン(Jose Martin)
ベンヴォーリオ:佐々木陽平(Yohei Sasaki)
ティボルト:ティアゴ・ソアレス(Thiago Soares)
パリス:デービッド・ピカリング(David Pickering)


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『マイヤリング(うたかたの恋) Mayerrling』(ケネス・マクミラン振付、エドワード・ワトソン、マーラ・ガレアッツィ、英国ロイヤルバレエ) [映像(バレエ)]

 いよいよ来週は英国ロイヤルバレエ来日公演『マイヤリング(うたかたの恋)』を観に行く予定なので、予習のために映像を観てみました。先日観た『オンディーヌ』でパレモンを踊っていたエドワード・ワトソン(Edward Watson)がルドルフ皇太子、そしてマーラ・ガレアッツィ(Mara Galeazzi)がその愛人マリーを踊っています。

 オーストリア皇太子と若い愛人の有名な心中事件を扱った小説を原作とするバレエ作品です。ケネス・マクミランの代表作の一つで、個人的には大好きなんですが、一般的には『マノン』や『ロミオとジュリエット』などに比べてあまり人気がないようです。

 まあ無理もありません。孤独で、神経過敏で、暴力的で、臆病で、虚弱で、偏頭痛持ちで、マザコンで、引きこもり、という皇太子が、どんどん精神的に追い詰められてゆき、ついには狂気に陥って愛人を射殺し自殺するという救いようのないストーリー。人間の負の感情をさらけ出すような振付。性暴力も生々しく表現されており、また意地が悪いことに、女性に対する暴力や支配欲をクラシックバレエの振付そのものを使って表現したりします。

 しかし、人間関係の軋轢や、破滅願望、暴力衝動といったものを演技やマイムではなく徹底的にバレエで表現しているのはさすがで、その表現の鋭さ豊かさに驚かされます。なかでも皇太子とマリーのパ・ド・ドゥはいずれも絶品で、特に最後の(殺人と自殺に向かう)ダンスは思わずぞっとするほどの迫力。その難易度にもまた別の意味でぞっとします。

 以前、イレク・ムハメドフとヴィヴィアナ・デュランテが踊った映像を観たことがあるんですが、この名コンビが踊ると舞台全体がその濃厚な狂気にずぶずぶと沈み込み、戦慄のサイコホラーか精神的スプラッタームービーか、といった感じの恐ろしい舞台になっていました。

 それに比べると、本作のエドワード・ワトソンとマーラ・ガレアッツィのペアはあまりどろどろしておらず、状況に追い込まれて破滅してゆく弱い人々の姿を切々と訴えかけてくるような感じがします。サイコホラーではなく悲恋もの。二人のダンスは実にドラマチックで官能的で、観ていて心が揺さぶられます。

 いかにも英国ロイヤルバレエらしい重厚な舞台装置、豪華で美しい衣装、華やかさの裏側で緊張感に満ちた群舞など、みどころも多い舞台映像です。


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