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『オンディーヌ Ondine』(フレデリック・アシュトン振付、吉田都、英国ロイヤルバレエ) [映像(バレエ)]

 2009年6月に収録された新しい『オンディーヌ』の舞台映像です。ついに吉田都さんのバレエをブルーレイディスクで鑑賞できる日がやってきました!

 タイトルロールのオンディーヌとは、いわゆる水の精(ウンディーネ)です。たまたま地上で遊んでいたオンディーヌの可憐な姿に一目惚れした貴族のパレモンは、逃げる彼女を追いかけて行って口説き落として結婚してしまいます。

 のんびりと船旅を楽しむ二人。そこにパレモンのもともとの恋人であるベルタが追いかけてきて、何とか二人の邪魔をしようと涙ぐましい努力をします。オンディーヌは無邪気にも魔法を使ってしまい、迷信深い船乗りたちは恐れおののいてオンディーヌを船から投げ落としてしまいます。たちまち海神の怒りで嵐が巻き起こり、船は沈没。

 辛くも生き延びたパレモンとベルタは、色々となかったことにしてご成婚おめでとうございます。そして各国の踊りが披露される華やかな結婚式の最中に、いきなり津波と共にオンディーヌが登場。水の精は人間の男に裏切られたときにはその相手を殺さなければならない宿命なのです。今や彼女のキスはパレモンにとって猛毒です。

 そうとは知らずパレモンはオンディーヌに許しを乞い、男がいっつもそうするようにとりあえずキスしてなだめようとします。オンディーヌも未練があって彼を死なせまいとして拒み続けますが、ついにたまらずに口づけを許してしまいます。たちまち倒れて死んでしまうパレモン。遺体を抱きしめて嘆くオンディーヌ。そのまま遺体を海に引きずり込んで、海底で彼の思い出と共に永遠に過ごすのでした。というか、結婚式の最中に新郎をもののけに奪われてしまったベルタの立場って一体・・・。

 というようなストーリーですが、何しろ元々はマーゴ・フォンティーンのプロモーション用作品ですから、全編に渡ってヒロイン出づっぱり。これだけ長時間に渡って吉田都さんの踊りを堪能できるというのは素晴らしい。しかも吉田都さんの当たり役として名高いオンディーヌ。ありがたやありがたや。

 一幕や二幕における、可憐で無邪気な若い娘であるオンディーヌを踊っているときの吉田都さんは、それはもう本当に十代の小娘に見えます。水に流れるような手足のなめらかな動き。浮力を感じさせるふわふわしたリフト。魂も体重も持たない水の精、手を離すと流れて行ってしまいそうな可愛らしいオンディーヌを観客は目の当たりにします。

 そして三幕における、絶望や悲嘆に苦しむ女性としてのオンディーヌ。印象ががらりと変わって、水にぐっしょり濡れた重い身体、立っているだけで苦しい重力の枷、なまじ魂を得てしまったために宿命に苦しみもがく姿がぞっとするほど生々しく、これまたすごい迫力。

 吉田都さんの超絶的なテクニックが「水の精」の表現をがっちり支えていて、もはや魔法としか思えないレベルに。ブルーレイディスク画質なので、細やかな表情の変化や指先の微妙な動き、衣装の質感などリアルに伝わってきて、もうたまりません。

 深い色彩が神秘的で美しい水精の群舞、三幕前半で披露される様々な踊りの楽しさ、嵐のシーンにおけるスペクタクル、そして英国ロイヤルバレエらしい豪華な(踊りにくそうな)衣装など、見どころもたっぷり。不協和音を多用した現代音楽と、古典の風格漂うアシュトンの振付が見事にマッチしているのも素晴らしい。

 吉田都さんが全幕踊る映像作品は今のところ市販されていないと思われるので、これは貴重なディスクです。吉田都さんのファンはむろん必見。そうでなくても、少しでもバレエに興味がある方ならとにかく観て下さい。これが、吉田都さんです。

[キャスト]

吉田都 Miyako Yoshida :オンディーヌ
エドワード・ワトソン Edward Watson :パレモン
ジェネシア・ロサート Genesia Rosato :ベルタ
リカルド・セルヴェラ Ricardo Cervera :ティレニオ(海神、海の王)


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