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『量子の宇宙でからみあう心たち  超能力研究最前線』(ディーン・ラディン、石川幹人訳) [読書(オカルト)]

 「一世紀以上にわたって高度に洗練化されてきた研究方法と、総計で偶然比10の104乗分の1を達成した1000以上の実験研究報告によって、超心理現象の存在を示す強力な証拠が得られている。(中略)超心理実験に何か興味あることが起きているのは、疑いの余地がない」(単行本p.366)

 現代の超心理学研究がなし遂げてきた驚くべき成果をまとめた一般向け解説書。単行本(徳間書店)出版は、2007年08月です。

 石川幹人さんの『超心理学 封印された超常現象の科学』(2012年09月12日の日記参照)を読んで興奮したので、そのイキオイで石川先生ご推薦の本書も読んでみました。

『トンデモ超能力入門』(皆神龍太郎、石川幹人) より

 「さらに深く知りたい方には、私が翻訳した『量子の宇宙でからみあう心たち  超能力研究最前線』(徳間書店)をおすすめします。この20年ほどの超心理学の発展を日本語で読めるほとんど唯一の本になっています」((単行本p.273)

『超心理学 封印された超常現象の科学』(石川幹人)より

 「ライン以後の超心理学の発展を網羅した内容になっている。(中略)期待がふくらむ情報が満載の一冊」(単行本p.356)

 本書は、「歴史編」、「実験編」、「理論編」の三部構成になっています。歴史編では魔術や迷信の時代から近代的超心理学研究までの流れを概説し、理論編では超心理現象(いわゆる超能力)が働く原理とそれが示唆する世界観について考察しています。

 理論編における考察は、さほど明瞭とはいえません。

 「精緻な量子論と風変わりな超能力現象を関連づけてはいけない。たんにこれらの領域どちらにも神秘的な現象があるからといって関連性を見いだすのは誤りだ、との反対もあろう。たしかにこの反対は理解できる」(単行本p.36、37)

 「けれども、量子論が示唆する世界の構造と、超能力現象にまつわって観察される事実は、かなり似かよっていることが判明してきた。両者が不気味なまでに異様であることで、それらの意味ある関連性がまさに暗示されるのである」(単行本p.37)

 個人的な印象としては、雰囲気と印象(それに用語の類似)だけで超常現象を量子論で「説明」しようとする、いわゆる量子ナンセンス(量子空論)と大差ないように感じられます。

 しかし、本書のキモは何といっても実験編。ここだけ読めば、超心理学がどのような研究をしているのかだいたい分かります。

 ESP(テレパシー、透視)に関しては、ESPカードを用いた古典的な実験から、ウルマン&クリップナーによるドリームテレパシー実験(1960年代末)、これまで最も大規模に行われてきたテレパシー実験であるガンツフェルト実験(1970年代)、視線感知実験や遠隔地にいる相手の自立神経系や内蔵電位に対して影響を与える遠隔的意図作用実験(1990年代)、遠隔脳波同期実験(2000年代)など。

 広い意味でのPK、すなわち精神が物質に対して与える影響に関しては、古典的なサイコロ投げ実験、電子的乱数発生器に対する影響測定実験、強制選択予知実験、コンピュータ画面を用いた予感実験、大規模集団を対象としたフィールド意識実験、そして地球意識プロジェクトなど。

 ミミズを用いた予感実験とか、細胞培養試料に対する遠隔ヒーリング(浄霊)実験といった、ユニークな実験についても触れられています。

 それぞれの実験結果につきデータ(グラフ)とメタ分析が示されます。インチキやバイアスの可能性、お蔵入り効果(よい結果が出た実験だけが報告されるための偏り)の統計的補正、その他の検証をパスした実験結果が統計的にどれほどの有意性を持っているかが定量的に示されます。

 本書に登場する実験報告のメタデータ分析の最終結果は、表14-1(単行本p.367)にまとめられていますので、詳しくはそちらをご覧ください。一言でいうなら、思わず息をのむような衝撃的なものです。

 というわけで、理論編にはさほど感心しなかったのですが、それ以外、特に実験編は非常に面白く、『超心理学  封印された超常現象の科学』(石川幹人)を読んで超心理学実験についてもっと詳しく詳しく知りたい、と思った方にはお勧めです。


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『超心理学  封印された超常現象の科学』(石川幹人) [読書(オカルト)]

 「科学的には今や、超心理学の結果は有無を言わさぬ水準にまで向上したと言える。しかし依然として、かたくなな否定論者を論破することは難しい」(単行本p.107)

 テレパシー、透視、予知、PK。俗にいう「超能力」を研究対象とする超心理学が、いかがわしい疑似科学扱いされ、その成果が世間的にも科学界からも「封印」されてしまうのはなぜか。日本における第一人者が憤りをこめて語る超心理学の歴史、成果、そして「封印」への抗議。単行本(紀伊国屋書店)出版は、2012年09月です。

 「超心理学は批判を受けることによって実験品質を向上させ、わずかな現象でも確実に把握する統計的分析法を確立してきた」(単行本p.107)

 「超心理学には、科学者同士で評価・査定した論文を掲載する論文誌JPもあり、公表されたデータにもとづいて議論を行う国際会議PAもある。研究の過程は公開されており、隠されたなにかをもとにした主張が正当化される余地はない」(単行本p.318)

 「すなわち超心理学は、科学的な方法論にのっとって研究活動がなされている、れっきとした「科学」である」(単行本p.318)

 「ところが、その成果は科学的方法を踏襲して得られているにもかかわらず、「非科学的だ」などのいわれのない批判にあい、本流科学分野から黙殺されている」(単行本p.10、11)

 日本における超心理学研究の第一人者による、一般向け解説書です。その歴史を振り返りつつ、現代の実験がどのように厳格な条件下で行われているのか、その結果はどのように統計処理され、どんな成果が得られているのかを分かりやすくまとめてくれます。

 筋金入りの懐疑主義者でさえ認めざるを得ないほど厳格にコントロールされた実験の結果として得られたデータ、統計的にきちんとした裏付けと再現性をともなうその成果は、控えめにいっても、私たちの常識的な世界観をぶち壊しかねない衝撃的なもの。

 それなのに超心理学は、軽んじられ、無視され、封印されている。著者は憤りをこめて、その理由を探ってゆきます。ビリーバー、かたくなな否定論者、奇術師、マスメディア、科学界。それぞれが超心理学「封印」にどのような役割を果たしているか。その筆致は熱く、情熱的で、ときに辛辣になります。

 いわゆる懐疑主義の立場から疑似科学を批判している著名な人物や書籍についても、その超心理学に関する批判がいかに的外れであるかを指摘して真っ向から反撃しており、居心地の悪い思いをする読者も多いかも知れません。

 そういった論争的な面とは別に、個人的には、現代の超心理学における主要な実験とその成果についての概説が興味深く感じられました。

 現代的なテレパシー実験である「ガンツフェルト実験」(著者自身による臨場感あふれる体験レポートが素晴らしい)、米軍による「スターゲイト・プロジェクト」(リモートビューイング、遠隔透視実験)の顛末、近年注目を集めている予感実験の詳細、そして全人類の集合的無意識の働きを直接計測しようという大胆な「地球意識プロジェクト」まで、様々なアプローチについて解説されています。

 他にも、ナターシャの人体透視、 霊魂仮説(生まれ変わり)やポルターガイスト現象、TVドラマ『七瀬ふたたび』の科学監修を引き受けたときの逸話、など興味深い話題が次々と登場。

 また、一般の人々よりも奇術師の方がESPを信じる割合が高い、学界では心理学者が最もESPを信じておらず、最も信じているのは工学者(なるほどなあ)、といった調査結果も興味深い。

 付録として、超心理学の「用語集」、統計分析の基礎解説、そして超心理学まわりの読書ガイドが付いています。特に、「日本語で出版されているもののなかから推薦できる70冊」のリスト(すべての本について簡単な紹介つき)が嬉しい。

 なお、本書の内容の一部は、著者による「超心理学講座」と重なっています。超心理学講座のテキストはネット上で公開されていますので、興味がある方はそちらもご確認ください。

超心理学講座
(明治大学情報コミュニケーション学部教授 メタ超心理学研究室 石川 幹人)
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/


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『奇貨』(松浦理英子) [読書(小説・詩)]

 「おれにとってきみはそのヤモリ以上に貴重な種なんだ。何としても取っておきたい奇貨って言えばいいかな」(単行本p.84)

 同性愛者である女性と同居する男性作家が、彼女の部屋に盗聴器を仕掛ける。恋愛性愛抜きで共同生活する男女の関係を描いた表題作に加え、単行本未収録短編を収録。単行本(新潮社)出版は、2012年08月です。

 愛を成就させるため犬に変身して飼われる物語『犬身』で読売文学賞を受賞し、大きな話題となってから5年。待望の新作が出ました。『犬身』のような大作ではなく、単行本にして100ページに満たない中篇です。さすがに分量が足りないせいか、1985年に発表され単行本未収録だった短篇小説と合わせての出版です。

 表題作では、恋愛や性愛を抜きに共同生活する男女の関係が扱われます。

 女性は同性愛者で、男性は異性愛者ではあるものの恋愛性愛にいまひとつ淡白。そんな二人が、友達として、互いの生活に干渉しないという約束で一緒に暮らしている。それなりにうまくいっていた二人の生活だが、女性に気の合う同性の友人が出来たことから、男性の嫉妬心が暴走。ついつい彼女の部屋に盗聴器を仕掛けてしまう。

 見つかればせっかくの二人の関係が破綻するのは間違いないのに、どうしても盗聴行為をやめられない男。恋愛とも欲情ともまた別の、自分でもよくわからない執着に駆られてゆく心理が丁寧に書かれます。そしてすべてが発覚したとき、彼女がとった行動とは。

 「自分のやったことを棚に上げて言えば、実に陰惨なやり口である。しかし、私はそのように陰惨な企みをする女が大好きなのだった」(単行本p.78)

 合わせて収録された短篇『変態月』は、27年前に「すばる」1985年09月号に掲載された単行本未収録作品です。ある衝撃的な事件を通じて、語り手である女子高校生が自らのセクシャリティ(同性愛)に気づき、戸惑いながらそれを受け入れてゆく物語。

 「鏡子はパジャマの上からギブスを嵌めた部分を撫でるような仕草をした。それだけでギブスの下の生身にも微かに指先の動きが伝わって来るような気がした。鏡子がどういうつもりでそうしているのかわからなかったが、私は昂奮していた。その癖身動きがとれなくて、張り子の人形のようにベッドの上に鎮座したままだった」(単行本p.154)

 さすがに著者26歳の作品らしく、文章も展開も若々しい。一途な印象を受けます。


タグ:松浦理英子
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『たくさんの窓から手を振る』(中村梨々) [読書(小説・詩)]

 「ナオちゃんがいうには、あたしたち自転車に乗って/ロシアの平原を突っ走っていたって/すごいねぇ、ロシアなんて行ったこともないし行きたいと/思ったこともないのに、ロシア」
 (『ロシア』より)

 少女漫画の感性を詩の言葉にしてみせた、一つ一つの文字が美しく発光するような詩集。単行本(ふらんす堂)出版は、2012年04月です。

 「あなたと出会えたことを私はしあわせに思っている。」
 (『二0一一 秋から』より)

 出会えたことがしあわせだと思えるきれいな詩集です。個人的に強く連想するのは、少女漫画の絵。言葉の連なりから、少女漫画に描かれる心象風景が立ち上がってくるような気がします。

 「あたしたち、自転車に乗ってどこまででも行けてたよね/とにかくペダルを踏めばどこへだって行けた/だから今だってふたりでロシアに行って/ナオちゃんのブラウンの自転車とあたしの水色自転車は/まだ走ってる走ってる」
 (『ロシア』より)

 「こどもたちがさがしていたのはそれです、そのくうきのたまご ふわり/てをのばして、あごをあげてっ つまさきだちで! じゃんぷしてっ!!」
 (『そんな簡単なことじゃないし、そんな複雑でもない』より)

 「暖かいね、暖かいね/心臓から新芽が出たみたいにちょっと/ちくっとするね/暖かいだけが取り柄なら/このまま春が終わってしまってもいい/胸に草原を持って/ざくざくの草っぱら/見ているだけなら誰も手を切ったりしない」
 (『はちみつとはちみつでないものをつなぐ』より)

 少女漫画によくあるじゃないですか。叙情的な効果線や舞い飛ぶ綿毛のような小さな光のつぶ(たぶんオルゴンエネルギー)に包まれた、心象風景を描いた印象的なコマが。そしてそこには、誰のセリフというわけでもない、何かの想いがあふれてこぼれました風の独白が、風景にまぎれるように書かれてたりしますよね。

 あの感じ。

 懐かしい。

 「海はただ、近くあるもの 月明かりの夜に砂浜/は真昼と同じ明るさでうるおっている 空気の/束がところどころ浮き上がっては佇み引き潮の/とき吸い込まれた砂がやがて青く光る」
 (『夏の日』より)

 こうした超現実的な光景もすばらしく印象的です。もしも少女漫画にこういう幽玄なシーンが描かれたら、それを「見てる」人物は既に亡くなっているのではないでしょうか。

 「ひらひら舞っているからっぽの老婆は胸に木靴を/抱いて。しあわせはからっぽでした。しあわせは/水の底で揺れる空でした。青い絵葉書が振ってく/る、しろつめくさはなざかり。滴って、滴って/空はどこにもいません」
 (『天気予報』より)

 「生まれてすぐに、それから死の隣に、誰のものでもない空白があっ/た。そこで少しの間夢を見ていた。ささやかれた未来の物語。/とおい今日のこと。」
 (『二0一一 秋から』より)

 こうした叙情的な響きからも、私はどうしても少女漫画のそれを連想してしまうのです。視覚的にとらえてしまう。そして、一つ一つの文字がかすかな燐光を放っているように感じられる。きれいな言葉です。きれいな詩集です。


タグ:中村梨々
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