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『超心理学  封印された超常現象の科学』(石川幹人) [読書(オカルト)]

 「科学的には今や、超心理学の結果は有無を言わさぬ水準にまで向上したと言える。しかし依然として、かたくなな否定論者を論破することは難しい」(単行本p.107)

 テレパシー、透視、予知、PK。俗にいう「超能力」を研究対象とする超心理学が、いかがわしい疑似科学扱いされ、その成果が世間的にも科学界からも「封印」されてしまうのはなぜか。日本における第一人者が憤りをこめて語る超心理学の歴史、成果、そして「封印」への抗議。単行本(紀伊国屋書店)出版は、2012年09月です。

 「超心理学は批判を受けることによって実験品質を向上させ、わずかな現象でも確実に把握する統計的分析法を確立してきた」(単行本p.107)

 「超心理学には、科学者同士で評価・査定した論文を掲載する論文誌JPもあり、公表されたデータにもとづいて議論を行う国際会議PAもある。研究の過程は公開されており、隠されたなにかをもとにした主張が正当化される余地はない」(単行本p.318)

 「すなわち超心理学は、科学的な方法論にのっとって研究活動がなされている、れっきとした「科学」である」(単行本p.318)

 「ところが、その成果は科学的方法を踏襲して得られているにもかかわらず、「非科学的だ」などのいわれのない批判にあい、本流科学分野から黙殺されている」(単行本p.10、11)

 日本における超心理学研究の第一人者による、一般向け解説書です。その歴史を振り返りつつ、現代の実験がどのように厳格な条件下で行われているのか、その結果はどのように統計処理され、どんな成果が得られているのかを分かりやすくまとめてくれます。

 筋金入りの懐疑主義者でさえ認めざるを得ないほど厳格にコントロールされた実験の結果として得られたデータ、統計的にきちんとした裏付けと再現性をともなうその成果は、控えめにいっても、私たちの常識的な世界観をぶち壊しかねない衝撃的なもの。

 それなのに超心理学は、軽んじられ、無視され、封印されている。著者は憤りをこめて、その理由を探ってゆきます。ビリーバー、かたくなな否定論者、奇術師、マスメディア、科学界。それぞれが超心理学「封印」にどのような役割を果たしているか。その筆致は熱く、情熱的で、ときに辛辣になります。

 いわゆる懐疑主義の立場から疑似科学を批判している著名な人物や書籍についても、その超心理学に関する批判がいかに的外れであるかを指摘して真っ向から反撃しており、居心地の悪い思いをする読者も多いかも知れません。

 そういった論争的な面とは別に、個人的には、現代の超心理学における主要な実験とその成果についての概説が興味深く感じられました。

 現代的なテレパシー実験である「ガンツフェルト実験」(著者自身による臨場感あふれる体験レポートが素晴らしい)、米軍による「スターゲイト・プロジェクト」(リモートビューイング、遠隔透視実験)の顛末、近年注目を集めている予感実験の詳細、そして全人類の集合的無意識の働きを直接計測しようという大胆な「地球意識プロジェクト」まで、様々なアプローチについて解説されています。

 他にも、ナターシャの人体透視、 霊魂仮説(生まれ変わり)やポルターガイスト現象、TVドラマ『七瀬ふたたび』の科学監修を引き受けたときの逸話、など興味深い話題が次々と登場。

 また、一般の人々よりも奇術師の方がESPを信じる割合が高い、学界では心理学者が最もESPを信じておらず、最も信じているのは工学者(なるほどなあ)、といった調査結果も興味深い。

 付録として、超心理学の「用語集」、統計分析の基礎解説、そして超心理学まわりの読書ガイドが付いています。特に、「日本語で出版されているもののなかから推薦できる70冊」のリスト(すべての本について簡単な紹介つき)が嬉しい。

 なお、本書の内容の一部は、著者による「超心理学講座」と重なっています。超心理学講座のテキストはネット上で公開されていますので、興味がある方はそちらもご確認ください。

超心理学講座
(明治大学情報コミュニケーション学部教授 メタ超心理学研究室 石川 幹人)
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/


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