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『曼荼羅の宇宙』(振付・演出:森山開次、音楽:高木正勝) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 2012年10月19日(金)は、夫婦で新国立劇場に行って森山開次さんの新作公演を鑑賞しました。曼荼羅(マンダラ)の宇宙観をダンスで表現する、という野心作です。

 まずは第一部「書」。五名のダンサー(黒装束)が登場して、風や水などの自然、あるいは様々な生き物を連想させるダンスを踊る、という一時間ほどの作品です。忍者のごとき軽やかな身のこなし、遊び心あふれる仕草、さらには曲芸めいた動きまで取り入れ、観客を沸かせます。

 融通無碍に思えたそれらの動きの要素が次第に組み合わさって構造をとり始め、やがて宙に筆を走らせる動きが現れ、ついに曼陀羅(おそらく金剛界曼荼羅)が舞台に投影されて完成。

 いわば森羅万象の様々な断片をクローズアップで映していたカメラが、次第に背後に引いてゆき、じわりと世界の全貌が見えてきたと思ったら、それは曼陀羅の構造をしていました、といった感じでしょうか。卵から始まって、卵で終わる、という循環がいかにも。全体的に軽快でユーモラスな印象でした。

 20分の休憩後、第二部「虚空」が始まります。ピアノの生演奏(高木正勝)を背景に、舞台上に作られた巨大な箱というかテーブル(観客席に向かって傾いている)の上で、森山開次がソロで踊る40分ほどの作品。

 第一部とはがらりと雰囲気が変わって、恐ろしいほどの緊張感に満ちています。暗闇のなか、一条の光に照らされて立つ白装束の森山さん、その肉体美ときたら、もはや人間というより仏像。白塗りの仏像が踊ります。

 しゅっと手刀が宙を切り、だんっと足で大地を踏みしめ、驚異的な身体コントロールによりあり得ない姿勢でぴたりと静止する。圧巻です。正直にいうと、白塗りの仏像というより、妖怪の仕業に見えてきましたけど。いずれにせよ神秘体験。

 おそらく仏教的世界観(色即是空とか)をダンスで表現しているのでしょうが、何しろその超絶的な動き、鋭い呼気、身体から放たれるエネルギー、いずれも圧倒的で、意味とか考える余裕はありません。ひたすら緊迫感に包まれます。

 途中で天井の機器がカンカン音をたてて、劇場が揺れ、さすが森山さんから放たれる気のエネルギーはすごい、などと一瞬感心したり。むろん地震だったのですが、その瞬間も劇場を包んでいる緊迫感にいささかの変化もない、というのが驚きです。幸い、揺れはすぐにおさまり、そのまま続行。

 持続する緊張感のあまり、終わったときには疲労困憊。まるで、もののけの類に生気を吸い取られたようでした。森山開次さんのダンスを観るには、観客にも体力が必要だとつくづく思いました。

[キャスト]

第一部「書」

  演出・振付: 森山開次
  出演: 柳本雅寛、佐藤洋介、龍美、東海林靖志、三浦勇太

第二部「虚空」

  演出・振付・出演: 森山開次
  音楽・演奏: 高木正勝


タグ:森山開次
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『ラブリーバカキノコナイト』(振付:伊藤千枝、珍しいキノコ舞踊団) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 2012年10月13日(土)は、夫婦でパルテノン多摩に行って、珍しいキノコ舞踊団の公演を鑑賞しました。パルテノン多摩開館25周年記念事業の一環としての特別企画とのことですが、もちろんいつものキノコ。伊藤千枝さんを含む五名が踊る一時間強の公演です。

 今年の年初に上演した『ホントの時間』からの抜粋、および年末に上演予定の『動物の〇(えん)』からの抜粋を組み合わせて構成した、いわばキノコ2012年総決算的な楽しい舞台。伊藤千枝さんによるトークや、メンバー紹介のコーナーもあり。

 キュートでにぎやかな雰囲気を盛り上げる舞台美術。グローヴァー・ワシントン・ジュニアから薬師丸ひろ子まで、おなじみのヒットナンバーの数々が流れるなか、とぼけたユーモアと観客を戸惑わせる不穏な感触をあわせ持った独特のダンスが踊られます。体力の限りを振りしぼる力強さ、そしてチャーミングさ。

 観れば観るほどキノコはクセになるというか、中毒性があるというか、脳内にどばどば溢れる多幸感がヤバすぎるというか。

 次のキノコは年末頃の予定。待ち遠しい限りです。

[キャスト]

構成・振付・演出: 伊藤千枝
出演: 山田郷美、篠崎芽美、茶木真由美、梶原未由、伊藤千枝


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『LOVE FIRE』(ヤスミン・ゴデール) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 2012年10月06日(土)は、夫婦でスパイラルホールに行ってイスラエルの著名コレオグラファ、ヤスミン・ゴデールの2009年作品を観てきました。

ヤスミン自身も踊るデュオ作品(乱入者あり)です。踊っているヤスミンを観たのは初めてですが、何といってもまずそのチャーミングさにびっくり。いたずらっぽい表情、葛藤の表情、とても魅力的で、ぐぐっと引き込まれます。

 まずは陽気なシュトラウスのワルツで踊る男性ダンサー。軽妙で楽しそうな動きなのに、表情や仕草からは悲痛なものが伝わってきます。続いて陰気なシベリウスのワルツで踊るヤスミン。こちらの動きは悲嘆にくれているのに、表情や仕草からは激しい情熱が感じられる。

 こんな風に、ダンスが訴えかけてくるものと、表情や仕草あるいは状況から読み取れるものがずれてくる、溝がある、そのために内面の葛藤や矛盾が生々しく伝ってきて、深い感動を生む。この感覚、ちょっと忘れられないほどのインパクトがあります。

 有名なワルツが流れるなか、ときに無音の静寂を背景に、情熱、高揚感、葛藤、切なさ、苦悩、など様々な愛の側面が踊られます。一つ一つ順番に、あるいはストーリーに沿って表現してゆくのではなく、複数の矛盾する感情を同時に表出せしめるところが凄い。高揚しながら絶望する愛、激しく求めながら傷つけあう愛、盛り上がりながら落胆する愛。

 小道具の使い方はユーモラスで、例えば動物の巨大な遺体(ぬいぐるみ)の腹をかっさばいて内蔵(布切れ)を取り出して並べたり、男性ダンサーがその遺体をかぶってヤスミンがその動物の背(男性ダンサーの肩)にまたがって乗馬ごっこで盛り上がったり。

 最後の方で白煙と共にゲストパフォーマーが乱入し、蛍光管で構築された光るオブジェがどどーっと出てくる。この展開には意表をつかれました。予想外だった。

 というわけで、これまでわずか数作しか観てないヤスミン作品ですが、どれもこれも後々まで尾を引くほど印象が強く、もっと観たい、という気持ちがかきたてられます。

[キャスト]

振付: ヤスミン・ゴデール
出演: Yasmeen Godder、Matan Zamir
ゲストパフォーマー・ライブインスタレーション: Yochai Matos


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『3mmくらいズレてる部屋』(振付:伊藤千枝、珍しいキノコ舞踊団) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 先週の土曜日(2012年09月29日)は、夫婦でスパイラルホールに行って、珍しいキノコ舞踊団2006年作品の再演を鑑賞してきました。振付はもちろん伊藤千枝さん、彼女を含む五名のダンサーが踊る1時間強の公演です。

 舞台の上には奇妙な家具が並べられています。斜めに傾いた机、落ち着かない椅子、歪んだ形のソファ、謎の「&」マーク、天井近く張り渡されたロープから不安定にぶら下がっているハンガー、それに取り付けられた黄色い電球。あ、歪んでるな、ズレてるな、と一目で分かるこの部屋で、キノコのダンサー達がはしゃぎ回ります。

 斜めになった机の上を滑り台のようにすべり下りたり、ソファの両端に足を乗せてゆーらゆら揺らしたり、まるで遊園地。歪んだ家具を組み合わせるといきなり水平になって安定する、卓上照明を机の断ち切られた脚の下に置いたらピタリはまる、など意外性に満ちた舞台です。

 何とも奇妙で不思議、だけどキュートな動き。驚きのあるダイナミックなリフト。ひょうきんなのに、なぜか深刻にも感じられる魅力的なダンス。若い女の子たちが合宿しているような、そんな雰囲気が舞台を包み込みます。

 途中で挟み込まれる他愛もないガールズトークがまた、そういう感じを盛り上げてくれます。観客のところまでやってきて「台風が逸れて良かったですね」とか「いつ衣替えすればいいか迷って」みたいな世間話トークを仕掛けたり。

 何にせよ多幸感あふれる舞台です。いつまでも観ていたい気持ちになりますが、そういうわけにもいかず。終わってしまったときはとても残念でした。しかし、二週間後にはまたキノコを観るのだ。

[キャスト]

構成・振付・演出: 伊藤千枝
演出補: 小山洋子
出演: 山田郷美、篠崎芽美、茶木真由美、梶原未由、伊藤千枝


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『涙目コーデュロイ』(イデビアン・クルー、井手茂太、斉藤美音子) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 本日(2012年09月28日)は、夫婦で十六夜吉田町スタジオに行って、井手茂太さんひきいるコンテンポラリーダンスカンパニー、イデビアン・クルーの最新作を鑑賞しました。このスタジオのオープニング公演だそうで、最後に開店祝いの花が飾られるという演出もあり。

 定員35名という小さなスタジオを舞台とした、井手茂太さんを含む三名だけで踊られる小規模な公演です。中央にある柱のおかげで舞台全体を見渡すことが出来ないのが気になりますが、それを逆に利用する演出も見せ所の一つ。どの席に座っても一部が見えないため、終演後に席を変えてもう一度観たいという気になります。あと、客席は舞台上に椅子を並べただけなので、本当にすぐ目の前で出演者が踊ります。すごい臨場感です。

 作品としては、つるむ関係が次々と移っていったり、あうんの呼吸を期待してたのに外されて困ったり、いい大人が子どもじみた態度に固執したり、三人の様々な関係性で笑わせてくれます。

 出オチを含む様々な笑いが仕掛けられていて楽しいのですが、全体として見ると散漫な印象もあり、また個々のネタも発想としてはありふれているため、新鮮な印象に乏しいのは残念。小芝居ではなくダンスで勝負するシーンがもっと多ければいいのになあ、と思いました。

 とはいえ、いくつかあるダンスシーンは、さすが井手さんの振付だけあって、すっとんきょーでとぼけてるのに妙にかっこいい。手足の細かい動き、絶妙な繰り返し、緻密に組み立てられたコンタクト、うきうきさせる軽やかなステップ。わあーっ、と盛り上がり、終演後は気分爽快。やっぱりイデビアン・クルーの公演は気持ち良いのです。

[キャスト]

振付・演出: 井手茂太
出演: 斉藤美音子、中村達哉、井手茂太


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