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インドネシア×日本 国際共同制作公演 『To Belong -dialogue-』(振付・演出:北村明子) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 昨日(2012年09月23日)は、夫婦で三軒茶屋シアタートラムに行って、北村明子さんの新作公演を鑑賞しました。インドネシアの伝統芸能に着想を得たというこの作品、北村明子さんを含む両国混成6名のダンサーたちが踊ります。

 さほど広くない舞台の周囲に掛け軸のように数枚の垂れ幕をおろし、そこに映像を投影する(またその隙間からダンサー達が出入りする)ほかは、特に大道具を使わないシンプルな舞台です。上演時間は1時間強。

 舞台の上で、ダンサーたちは様々な身体対話を試みます。インドネシア伝統武術を取り入れたしなやかで鋭い動き、中腰になって手首をひらめかせながら、「気」だか「オーラ」だか何だか分からないけど互いが発している何かに接触しようとするようなコミュニケーション。二人、ときに三人、組んだ相手との間に交わされる不思議な、目に見えない対話がどのように進んでゆくかが見どころです。

 太極拳めいた流れるような伸びやかな動き、迫力ある殺陣、互いの魂に触れようとする手探り、ときに人形になった相手に心を吹き込み、ときにはうまく通じない言葉をもぎこちなく使いながら、手首を旋回させ、交差させ、あるいは突き、受け、流し、同調し、そして離れ、蝶のように空気の流れに乗って舞う。この身体による「対話」は、おそらく緻密に構成された完璧な振付なのでしょうが、まるで今そこで即興で生まれつつあるかのような生き生きとした印象を与えてくれます。呼吸しているかのような照明効果も絶妙。

 しかし、やはり最も印象的なのは北村明子さん。すっと舞台に立つだけで、その佇まいに胸を突かれます。達人をおもわせるなめらかな身体の流れ、どきどきさせるオフバランス、スピリチュアルな雰囲気を身にまといつつも、何やら邪な企みでもしてそうな知的な顔つき、どれもぐっときます。インドネシア伝統武術の動きも見事で、あまりのかっこよさに鳥肌が立ちました。

[キャスト]

構成・振付・演出: 北村明子
ドラマトゥルグ: 石川慶、スラマット・グンドノ(Slamet Gundono)

出演: マルチナス・ミロト(Martinus Miroto)、今津雅晴、リアント(Rianto)、三東瑠璃、西山友貴、北村明子


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『呼吸 -透明の力-』(勅使川原三郎、佐東利穂子) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 昨日(2012年08月26日)は、夫婦でKAAT神奈川芸術劇場に行って勅使川原三郎さんの新作公演を鑑賞してきました。大道具なし照明効果のみの簡素な舞台で、勅使川原三郎さんが主催する勉強会やワークショップの参加者たちがダンスメソッドを学ぶ様を、そのまま作品に取り入れたという実験的作品です。

 まず照明効果が魔術的。暗闇のなか、五線譜のような光の筋や円が舞台床に投影され、それだけでいとも簡単に遠近感が狂い、空間把握が混乱して奥行きと高さの違いが分からなくなります。ダンサーの位置関係や移動の軌跡がうまく把握できなくなり、まるで異空間に放り込まれたような感覚。過去に観た公演でいうと、『サブロ・フラグメンツ』を連想しました。

 こんな舞踊魔術空間で、勅使川原三郎さんの解像度の高い緻密な動き、佐東利穂子さんの超高速で空気に溶け流れるダンスが交互に踊られ、観客はぐいぐい引き込まれてゆきます。

 やがて、舞台上には勉強会やワークショップの参加者が登場し、呼吸法を軸としたダンスメソッドの実践が行われます。というか、その様子をそのまま作品として観客に見せてくれるわけです。ときどきユーモラスな寸劇めいたやりとりなども混ぜながら、若手ダンサーたちが呼吸や基本動作を繰り返すその様子が、不思議な感動を呼びます。

 総勢30名近い出演者が登場するという規模の大きい公演であるにも関わらず、静謐な暗闇のなか呼吸音が静かに聞こえていた、という印象が強い緊張感の高い舞台でした。

[キャスト]

勅使川原三郎
佐東利穂子

川村美恵、ジイフ、鰐川枝里、加見理一、高木花文、山本奈々、加藤梨花、林誠太郎、
勉強会参加者、ワークショップ受講生たち


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『ナプア・グレイグ&ハワイアン・フラ・ガールズ』 [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 昨日(2012年07月29日)は、夫婦でオリンパスホール八王子に行って、ナプア・(グレイグ)マクア率いるハーラウ・ナ・レイ・カウマカ・オ・ウカの来日公演を観てきました。

 実はこれまでフラには特に興味がなかったのですが、先月、マーク・ケアリイ・ホオマル率いるアカデミー・オブ・ハワイアンアーツのジャパン・ツアー2012を観て衝撃を受け、これからはなるべく積極的にフラの舞台を観ることにしたのです。詳しくは2012年06月26日の日記を参照して下さい。

 ハワイ事変における人民大虐殺を踊りで表現、真っ赤に染まった舞台で人々が銃弾に倒れてゆく様を踊る、というフラを観るのはけっこう辛いものがあったので、次はとりあえず普通というか典型的なフラを気軽に観たいなと。そういうわけで、夫婦でハワイの歌姫ナプアの公演を観ることに。

 途中20分間の休憩を含め100分ほどの公演です。間断なく演目が続き、休憩時間を別にすれば常に誰かしら踊っているという密度の高い舞台。

 前半は典型的なフラのショウで、まずは美しく力強い声で祝詞が唱えられ、やがてバンドの生演奏をバックに、あるときはゆったりとしたリズムで、特に躍動感あふれるテンポで、波、風、大地、神々、そして恋の踊りが披露されてゆきます。この安心感、ストレッチで身体をうーんと伸ばすような心地よさ。いいです。

 後半になると、変化球が次々と繰り出されます。火山の噴火や海に流れ込む溶岩を歌うフラ、ロックンロール風のフラ、沖縄民謡風のフラ、最後に和風フラという具合。バラエティ豊かな演目が取り揃えられており、観客を退屈させません。

 ひときわ印象に残るのが、その衣装です。演目ごとに異なる色鮮やかな衣装には魅了されます。

 特に最後のパートで使われたキモノ風の衣装はデザインも色合いも絶妙。こういう「キモノ風」デザインの舞台衣装は、日本人が見ると困惑してしまうものが多いように思うのですが、そういうキワモノ感というか、滲み出る勘違い感がなく、ハワイと日本をつなぎたい、というメッセージも感じられて、非常に好感が持てました。

 決して狭くはないオリンパスホール八王子の座席がほぼ満席(ざっと見た感じでは二階席と三階席の左右袖に空席が目立つくらい)で、観客のテンションの高さからも、フラに人気があることがよく分かります。フラのリズムは癖になりますし、高齢になっても踊れるダンスというのは確かに魅力的で、ちょっとだけ、フラ教室に通って実際に踊ってみようかしらん、と思いました。いや、思っただけですけど。しかし。


タグ:フラ
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『Nameless Voice ~水の庭、砂の家』(Noism1、振付演出:金森穣) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 先週の土曜日(2012年07月07日)、彩の国さいたま芸術劇場小ホールにて、金森穣率いる「りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館劇場専属舞踊団」"Noism1"の新作公演を鑑賞しました。

 途中15分の休憩をはさむ1時間強の作品で、水、というかいわゆる水危機(ウォータークライシス)がテーマとなっています。

 水を満たしたペットボトルで囲まれた舞台(手前にまで「猫避け」のようにずらりと並べられている)で、人々が水紛争を繰り広げる、というのが第一幕。

 空のペットボトルが散乱するなか、水の入った一本のペットボトルをダークスーツを着用した男たちが大真面目に奪い合うという、深刻なのか滑稽なのか微妙な振付で始まります。

 舞台背景に投影された水危機に関する映像、様々な暴力(性暴力含む)、地域紛争、妊娠出産など様々なイメージを重ねつつ、水資源枯渇(舞台上に降り積もってゆく砂)による終末論的世界へと突き進んでゆきます。

 休憩をはさんで第二幕になると、世界破滅後を思わせる荒涼たる風景が広がります。舞台は砂漠化し、木々は枯れ、かろうじて生き延びている人間たちも何か変容しちゃってる。そんな悲惨でグロテスクな風景の中で、愛や家族の行方が描かれます。

 ダンス公演としては、何といっても井関佐和子さんの動きが素晴らしい。特に、リフトされたときの水中を泳ぎ舞うような動きは印象的で、思わず、はっとさせられます。ラスト近く、出演者全員(ただしシルエット)による群舞が醸しだす静謐な寂寥感にも胸を打たれます。

 随所に驚きを仕掛けた演出は悪くないし、ダンスのシャープさには感心したのですが、環境問題や家族といった象徴性を匂わせすぎるのは、ちょっとダサいかも。個人的には、小細工なしにがんがん踊るシーンがもっと観たかった気もします。


[キャスト]

演出振付: 金森穣
音楽: utp_ ( alva noto + ryuichi sakamoto )
衣裳: 堂本教子
映像: 遠藤龍
出演・テスキト: Noism1
井関佐和子、藤井泉、小尻健太、宮河愛一郎、宮原由紀夫、藤澤拓也、亀井紗加、角田レオナルド仁、真下恵、青木枝美、中川賢


タグ:金森穣
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『絶交わる子、ポンッ』(康本雅子) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 2012年07月01日(日)、シアタートラムで康本雅子さんの新作公演を鑑賞してきました。意味不明ながら妙に気になるタイトルに、「わる子」ちゃんがポンっと絶交しちゃう話なのか、それとも絶えず人と交わる子がポンッと生まれちゃう話なのか、ついつい考えてしまいますが、それは罠。

 康本雅子さんと男女混成七名のダンサーが踊ります。テーマは性愛。あるいは、放射精ストロングチンコ90。

 いかにも思春期っぽく悩める振付から始まって、次第に大人っぽいシモネタに走り、だんだん切実なエロになってきて、ついに出産に至るという、裏筋とおって半生駆け抜けるような舞台です。

 滑稽なシーンが多いのですが、全体を切実な雰囲気が覆っているためか、あるいは思わず自分の体験思い出し身につまされちゃった観客が多いせいか、ほとんど笑いは起きません。

 同じ動作や同じ言葉を延々と繰り返してゆくうちに次第に抜き差しならなくなって絶叫号泣、といった振付が目立ち、普通にがんがん踊っちゃうシーンは少なめ。

 ラスト近く、それまでの馬鹿げたシモやらエロやらが、不意に痛切なものへと昇華するのですが、その後に用意されているシーンが素晴らしい。まず出演者全員が次々と踊るシーン、そして半減期長そうな降下物のなか踊る康本雅子さんのソロ。ここ、個人的にしびれましたね。

 というわけで、我が道を行く康本雅子さんの心意気に打たれる公演でした。

[キャスト]

振付・出演: 康本雅子

出演: あらた真生、遠田誠、菊沢将憲、小山まさし、下司尚実、鈴木美奈子、泊麻衣子


タグ:康本雅子
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