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『てつぞうはね』(ミロコマチコ) [読書(小説・詩)]

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てつぞうはね
わたしの ねこ

しろくて ふかふかの ねこ
すわると おにぎり みたい
すっごく でっかい おにぎり
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 独特のタッチと色彩で描く動物画や植物画で多くの人々を魅了する画家、ミロコマチコさんが愛猫の思い出を描いた絵本。単行本(ブロンズ新社)出版は2013年9月です。

 飼い猫の「てつぞう」が紹介されます。エッセイ集でも愛情ほとばしる文章で描写されていた、あの鉄三です。


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 こうやっていざ、文章に書こうと思っても愛おしい。毎日、愛でる。胸が高鳴る。
(中略)
 飼い主の私であっても、突如噛まれたりひっかかれたりすることは日常茶飯事だ。毎朝顔を叩かれたり足の指を噛まれたりして起こされるのだが、かといって、鉄三は抱っこをされるのも撫でられるのも大っ嫌い。だけど、どれだけ攻撃されても私は懲りずに抱っこしてグリグリ顔を押し付ける。私の腕は傷だらけだが、最高に幸せだ。
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『ホロホロチョウのよる』文庫版p.69、72


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とれたことのない とりを まいにち ねらう
ほんものの ねずみを みたことない
めを ダイヤにして いぬと たたかう

わたしが おどりくるうのを くろめで みている
うたを うたうと ひっくりかえる
あしたも ぜったい とりを ねらう
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『ホロホロチョウのよる』文庫版p.80


 ちなみに、『ホロホロチョウのよる』の紹介はこちら。


  2018年02月08日の日記
  『ホロホロチョウのよる』(ミロコマチコ)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2018-02-08


 あの鉄三が絵本に。子どもが勢いよく描いたような活き活きとしたタッチ、心踊る色彩、どこ見てるんだか分からない「てつぞう」の絶妙な表情。読者に「てつぞう」を一所懸命に紹介してくれます。


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てつぞうはね
だれもが おそれる あばれねこ

 めをひんむいて いかりくるうよ
にんげんも ねこも だいっキライ
だれとも なかよくなんて しない

でも わたしのことだけは だいすき
グルグル スリスリ あまえてくるよ
――


――
なつの てつぞうはね
ひんやりする せんめんだいで ねるよ

わたしは かおも あらえないし
はみがきも できないよ
――


――
ふゆの てつぞうはね
おふろの マットで ねるよ
おふろの あったかい くうきが すきだから

わたしが おふろから あがっても しらんふり
だから わたしは
てつぞうで あしを ふくんだ
――


 転換点を経て、読者にではなく「てつぞう、」「てつぞう、」という呼びかけから始まるようになるところで、何度でも泣けるのです。泣ける。



タグ:絵本
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