『ヒトデとクモヒトデ』(福島健児) [読書(サイエンス)]
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ヒトデ、クモヒトデ、ウニ、ナマコ、ウミユリからなる棘皮動物は、みな体のつくりが☆形なのである。口のほうから見てみると、これらは全部「五放射相称」の体のつくりをしている。すなわち、体が5つの同じような部分からなり、この5つが、口と肛門とを結ぶ軸をぐるりと取り囲んでいるのだ。
☆形をした動物は、棘皮動物以外にはいない。棘皮動物は、地球上の動物の中で、スターとなった唯一の動物たちなのである。
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単行本p.8
知っているようで知らない海のスター、棘皮動物。そのなかでもヒトデとクモヒトデに焦点を当て、歩行、反転、消化、そして子育てまで、ちょっと意外な生態を教えてくれるサイエンス本。単行本(岩波書店)出版は2022年8月です。
目次
1 海の☆の正体――真の姿を知っていますか
2 歩いて、潜って、でんぐり返し――動きまわる☆たち
3 食べるためのあの手この手――☆たちの食事
4 ☆たちの子育て――知られざる一生
5 ☆形の謎
6 ヒトとヒトデとクモヒトデ
1 海の☆の正体――真の姿を知っていますか
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明るい日中はほぼ均一な暗い茶色だが、日が暮れて暗くなってくると、灰色と黒の縞模様が現れるという。こうした色彩の変化は、色素体の形や配置を変えることによって実現されており、クモヒトデが腕に「眼」のようなしくみをもつことの発見にも一役買った。ただその一方、なぜ昼夜で色彩を変えるのかは、依然として謎のままだ。
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単行本p.21
深海底を覆い尽くすクモヒトデの群れ、変幻自在に硬さを調整できる骨格構造、腕の先端にある「目」、昼夜で変わる体色。そして発光。ヒトデとクモヒトデの身体のしくみについて解説します。
2 歩いて、潜って、でんぐり返し――動きまわる☆たち
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ヒトデの反転行動は意外と研究者の興味を惹くらしく、昔からそれなりに研究対象とされてきた。ひっくり返ってしまった無防備な体勢は、やはりいち早く解消したいだろうから、決まった腕を使ってこの動きを学習すれば短時間で反転できるのではないか……といった仮説のもと、行動の観察実験も行われてきたが、どうも繰り返しこの行動をさせてみても、学習できる結果は得られていないようだ。
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単行本p.32
ヒトデとクモヒトデで異なる歩行方法。泳ぎ、潜り、クラゲにヒッチハイクし、そして反転する動き。ヒトデたちの運動能力について解説します。
3 食べるためのあの手この手――☆たちの食事
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ヒトの消化管の中も見方によっては体「外」だが、ヒトデの場合は正真正銘の対外で、胃を反転させて、口から外に出してしまうのである。そうして、捕まえた餌をその場で消化する。このような口外摂食であれば、口に入らないような大きさの動物でも、餌とすることができる。
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単行本p.35
二枚貝を全身で包み込んで、ちからわざでこじあけ、隙間から胃袋を押し込むという強烈な捕食法。待ち伏せ、濾過、そして集団での狩りまで。多種多様な捕食行動について解説します。
4 ☆たちの子育て――知られざる一生
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さらにクモヒトデでは、よその家の子ならぬ、他の種のクモヒトデを子守しているとみられる例もある! 先述のダキクモヒトデと同様、小さいクモヒトデが大きなクモヒトデにしがみついているのだが、同種のオスとメスが口側と口側を合わせるダキクモヒトデとは異なり、大きい個体が小さい個体を背中側に「おんぶ」している格好であり、しかも、これが違う種なのだ。
このような異種クモヒトデの共生は「ベビーシッティング」とよばれている。
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単行本p.70
ペアリング、抱卵、幼生の生きざま、そして驚くべき子育て行動まで。謎多きヒトデたちの一生を解説します。
5 ☆形の謎
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古生代の棘皮動物の多くは固着性の動物であり、動き回るものは後から進化してきた。2+1+2の五放射相称の体が進化してから、ウミユリ綱の系統と別の系統の二つに分岐し、この後者の系統の中から、残りの動き回る棘皮動物――真の☆たるヒトデとクモヒトデ、そして腕をもたないウニとナマコが進化した。☆たちのたどった道は、ざっとこんなシナリオのようだ。
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単行本p.94
スター形、すなわち五放射相称の身体デザインはどのようにして進化してきたのだろうか。その進化史をたどります。
6 ヒトとヒトデとクモヒトデ
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1個体のオニヒトデが、1年間に5~6平方メートルのサンゴを食べていたという報告がある。オニヒトデが大発生した地域では、その捕食でサンゴ礁が台無しになってしまう可能性があるのだ。
そんな被害を食い止めるべく、ダイバーによるオニヒトデの駆除作業が行われている。しかし、さらに厄介なのは、オニヒトデがとても強力な毒をもっているということだ。駆除のさいにダイバーがオニヒトデに刺されてしまい、死亡事故も起きたことがあるほどの猛毒を、オニヒトデはもっているのである。
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単行本p.98
サンゴを全滅させたり、世界の侵略的外来種ワースト100に挙げられたり、食用になったり、お土産品として売られたり、ヒトデとクモヒトデとそして人類の関わり合いをまとめます。
ヒトデ、クモヒトデ、ウニ、ナマコ、ウミユリからなる棘皮動物は、みな体のつくりが☆形なのである。口のほうから見てみると、これらは全部「五放射相称」の体のつくりをしている。すなわち、体が5つの同じような部分からなり、この5つが、口と肛門とを結ぶ軸をぐるりと取り囲んでいるのだ。
☆形をした動物は、棘皮動物以外にはいない。棘皮動物は、地球上の動物の中で、スターとなった唯一の動物たちなのである。
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単行本p.8
知っているようで知らない海のスター、棘皮動物。そのなかでもヒトデとクモヒトデに焦点を当て、歩行、反転、消化、そして子育てまで、ちょっと意外な生態を教えてくれるサイエンス本。単行本(岩波書店)出版は2022年8月です。
目次
1 海の☆の正体――真の姿を知っていますか
2 歩いて、潜って、でんぐり返し――動きまわる☆たち
3 食べるためのあの手この手――☆たちの食事
4 ☆たちの子育て――知られざる一生
5 ☆形の謎
6 ヒトとヒトデとクモヒトデ
1 海の☆の正体――真の姿を知っていますか
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明るい日中はほぼ均一な暗い茶色だが、日が暮れて暗くなってくると、灰色と黒の縞模様が現れるという。こうした色彩の変化は、色素体の形や配置を変えることによって実現されており、クモヒトデが腕に「眼」のようなしくみをもつことの発見にも一役買った。ただその一方、なぜ昼夜で色彩を変えるのかは、依然として謎のままだ。
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単行本p.21
深海底を覆い尽くすクモヒトデの群れ、変幻自在に硬さを調整できる骨格構造、腕の先端にある「目」、昼夜で変わる体色。そして発光。ヒトデとクモヒトデの身体のしくみについて解説します。
2 歩いて、潜って、でんぐり返し――動きまわる☆たち
――――
ヒトデの反転行動は意外と研究者の興味を惹くらしく、昔からそれなりに研究対象とされてきた。ひっくり返ってしまった無防備な体勢は、やはりいち早く解消したいだろうから、決まった腕を使ってこの動きを学習すれば短時間で反転できるのではないか……といった仮説のもと、行動の観察実験も行われてきたが、どうも繰り返しこの行動をさせてみても、学習できる結果は得られていないようだ。
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単行本p.32
ヒトデとクモヒトデで異なる歩行方法。泳ぎ、潜り、クラゲにヒッチハイクし、そして反転する動き。ヒトデたちの運動能力について解説します。
3 食べるためのあの手この手――☆たちの食事
――――
ヒトの消化管の中も見方によっては体「外」だが、ヒトデの場合は正真正銘の対外で、胃を反転させて、口から外に出してしまうのである。そうして、捕まえた餌をその場で消化する。このような口外摂食であれば、口に入らないような大きさの動物でも、餌とすることができる。
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単行本p.35
二枚貝を全身で包み込んで、ちからわざでこじあけ、隙間から胃袋を押し込むという強烈な捕食法。待ち伏せ、濾過、そして集団での狩りまで。多種多様な捕食行動について解説します。
4 ☆たちの子育て――知られざる一生
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さらにクモヒトデでは、よその家の子ならぬ、他の種のクモヒトデを子守しているとみられる例もある! 先述のダキクモヒトデと同様、小さいクモヒトデが大きなクモヒトデにしがみついているのだが、同種のオスとメスが口側と口側を合わせるダキクモヒトデとは異なり、大きい個体が小さい個体を背中側に「おんぶ」している格好であり、しかも、これが違う種なのだ。
このような異種クモヒトデの共生は「ベビーシッティング」とよばれている。
――――
単行本p.70
ペアリング、抱卵、幼生の生きざま、そして驚くべき子育て行動まで。謎多きヒトデたちの一生を解説します。
5 ☆形の謎
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古生代の棘皮動物の多くは固着性の動物であり、動き回るものは後から進化してきた。2+1+2の五放射相称の体が進化してから、ウミユリ綱の系統と別の系統の二つに分岐し、この後者の系統の中から、残りの動き回る棘皮動物――真の☆たるヒトデとクモヒトデ、そして腕をもたないウニとナマコが進化した。☆たちのたどった道は、ざっとこんなシナリオのようだ。
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単行本p.94
スター形、すなわち五放射相称の身体デザインはどのようにして進化してきたのだろうか。その進化史をたどります。
6 ヒトとヒトデとクモヒトデ
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1個体のオニヒトデが、1年間に5~6平方メートルのサンゴを食べていたという報告がある。オニヒトデが大発生した地域では、その捕食でサンゴ礁が台無しになってしまう可能性があるのだ。
そんな被害を食い止めるべく、ダイバーによるオニヒトデの駆除作業が行われている。しかし、さらに厄介なのは、オニヒトデがとても強力な毒をもっているということだ。駆除のさいにダイバーがオニヒトデに刺されてしまい、死亡事故も起きたことがあるほどの猛毒を、オニヒトデはもっているのである。
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単行本p.98
サンゴを全滅させたり、世界の侵略的外来種ワースト100に挙げられたり、食用になったり、お土産品として売られたり、ヒトデとクモヒトデとそして人類の関わり合いをまとめます。
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