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『もののけの正体 -怪談はこうして生まれた 』(原田実) [読書(オカルト)]

 妖怪から幽霊まで、この世ならざる存在についての伝承は、どのようにして生まれ、伝えられてきたのか。『日本化け物史講座』の著者でもある原田実さんが、江戸時代を中心として代表的な「もののけ」を取り上げ、その系譜を探ってくれる新書です。出版は2010年8月。

 全体は五章に分かれています。まず「第一章 もののけはどこから来たか?」では、日本を代表する妖怪として、「鬼」、「天狗」、「河童」を取り上げ、その始源から今日に至るまでの歴史を辿ってゆきます。

 「第二章 もののけ江戸百鬼夜行」では、江戸時代に人気を博した幽霊や妖怪として、「累」、「小幡小平次」、「玉藻前」、「化け猫」、「見越し入道」、「豆腐小僧」、「器物の怪」が取り上げられ、さらに「第三章 『百物語』のもののけたち」では江戸時代の妖怪図鑑である『絵本百物語』(画:竹原春泉、文:桃山人)から様々な怪異を紹介してくれます。

 「第四章 恐怖の琉球」および「第五章 もののけ天国・蝦夷地-アイヌともののけ」では、現在の沖縄と北海道で語り継がれてきた妖怪として、「アカマタ」、「キジムナー」、「キンマモン」、「メリマツノカワラ」、「コロボックル」、「ウエソヨマ」、「ミンツチ」について解説されます。

 そして「終章 もののけと日本人 -なぜ怪を求めるのか?」では、これほど多種多様な「もののけ」が伝えられきた理由、その心理的・社会的な役割についての知見が述べられる、という構成です。

 一読してよく分かるのは、何でもそうですが、怪異にも歴史というものがあり、時代と共に様々な形で変遷してきたのだ、ということ。言い換えれば「この妖怪は、こんな姿をしていて、こんな習性を持つ」という知識を頭に入れただけでは不足で、その伝承が背負っている、人々との関わり合いの長い長い歴史を知ることなしに、その「正体」をとらえることは出来ない、というわけです。

 また、妖怪にしても幽霊にしても、そのような「怖いもの」を人々が求めてきた理由もよく理解できるようになります。さらに恐怖の対象であったものがいつしか「親しみ深い」「愛嬌のある」ファンシーキャラになってゆく過程についても。

 そして、現代に生きる私たちが真剣に語り、ときには大真面目に信じている、怪談や都市伝説やオカルトも、江戸時代の怪異譚と無関係なものではなく、そこには歴史的連続性というものがあるし、その心理や社会的機能はよく似ている、ということにも気付かされます。

 怪異伝承の歴史について興味のある方はもちろんのこと、珍しい妖怪(特に琉球、アイヌの伝承)を含む様々な妖怪について知りたいという方にもお勧めできる一冊です。気に入った方は、ぜひ『日本化け物史講座』も合わせてお読み下さい。


タグ:と学会
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