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『本当は記号になってしまいたい』(斉藤倫) [読書(小説・詩)]

 斉藤倫さんの最新詩集です。単行本出版は2010年5月。

 この詩集ですが、現時点で、東京の青山ブックセンター青山本店か、京都の恵文社一乗寺店でしか売ってないそうです。ネット書店等では手に入らないためその出版に気づくのが遅れました。

 私のブログに「斉藤倫」で検索してやってくる人がこのところ多くなっているのには気付いていたのですが、でもきっと同姓同名のメジャー漫画家さんの新作が出たか何か賞をとったかアニメ化されたかそんなとこだろうと思い込んでいたのです。つい先日ふと気になって調べて、ようやく気付いた愚かな私。慌てて青山ブックセンターまで行って購入して参りました。

    両書店まで行くのが困難な方は、こちらを参照して下さい。
    書影および問い合わせ先が掲載されています。
    http://dhikidashi.exblog.jp/14759405/

    最新状況については、著者のブログで確認できます。
    http://teofulteoful.seesaa.net/

 さて、いかにも高級感ただよう格調高い美しい詩集(しかも私家版)なので、もしや内容も難解な現代詩だったらどうしよう、おののきつつページをめくりましたが、内容は、ええ、いつもの斉藤倫さんでした。

 全文引用すると叱られそうな気がするので、いくつかの作品をその前半だけ引用してみます。後半ぶった切ったせいで作品を台無しにしちゃってごめんなさい。気になった方はぜひ購入して全文お読み下さい。

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『カビ』より(前半)

  「おんぶにだっこってどういう状況なんだろう」
  「おんぶをされている側から見ると
   おんぶをしているひとを
   背後からだっこしていることになるという意味です」
  「二面性だ」
  「二面性ですね」

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『Wash in the Sahara』より(前半)

  「サハラ砂漠の洗濯指数って
   きっとすごく高いよね」
  「そうね」
  「だけど
   水がないからけっきょく洗濯できない」
  「あー」
  「ずっとそういうかんじなんだ
   オレの人生」
  「洗濯はしたほうがいいよ」

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『感情』より(前半)

  「こんばんは
   プロの皮をかぶったシロウトです」
  「やーん あっちいって」
  「どうしてそんなにけぎらいするんですか」
  「だって人生は一度だけ
   そんな二重生活をおくっているひととは暮らせない」

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『処理班』より(前半)

  「ただいま到着しました 処理班です」
  「うかがってます
   それで何を処理するんでしょう?」
  「処理というより
   むしろ班のほうで」
  「お一人なのに?」

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『闘争』より(前半)

  「負け犬はいるけど負け猫はいないね」
  「シー、シー」
  「化け猫はいるけど化け犬はいないね」
  「シー、シー」

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『ミステリーズ』より(前半)

  「すごいラップ現象で
   家じゅうが夜中にピシピシいうっておもってたら
   ただ貧乏なだけだった」
  「あるねあるね いつも生焼けなやきとり屋があって
   火の上に並べた串が勝手にひらいちゃうの
   床下を掘ったら埋蔵金がでた」
  「ダウジングだ!」

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『四年間』より(前半)

  「裏庭の石をもちあげたら
   下にびっしりと事情通がいた」
  「うわー いやだ
   駆除しないの?」
  「殺すとふえるんだって
   おたがいのたましいを食べてるから」
  「そんなのぜんぶ迷信だよ」

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 あまりの素晴らしさ、その言語感覚のねじれ具合に、ただ歓喜するのみで何も感想が出てきません。今はただ、早く次の詩集を出せ、と思うばかりでございます。最後に、最高傑作を、いや最高でも傑作でもないかも知れませんが個人的に大好きな作品を全文引用して、結びの言葉に替えさせて頂きます。

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『キモイザウルスの発生と衰退』

  「キモイザウルス」
  「帰ってきたキモイザウルス」
  「さよならキモイザウルス」
  「夏草やキモイザウルスの夢の跡(夏休み特別)」
  「キモイザウルス VS ヤバイザウルス」
  「キモイザウルス マジック・オン・アイス(代々木体育館)」
  「キモイザウルス バチカンを救え!(全米公開)」
  「キモイザウルス フォーエバー」
  「キモイザウルス サバイバー」
  「キモイザウルス フォックストロット(サントラ)」
  「みんなキモイザウルスだった!(再編集+インタビュー)」
  「キモイザウルスの夕べ(地方公演)」
  「キモイザウルスは存在しなかった(二十周年記念)」
  「キモクナイザウルスがやってきた!(来春公開予定)」

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タグ:斉藤倫
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