SSブログ

『Mad Science 炎と煙と轟音の科学実験54』(Theodore Gray) [読書(サイエンス)]

 やろうと思えば家庭で出来る興味深い(そして危険な)化学実験の数々を、美しいカラー写真満載で紹介してくれる一冊。単行本出版は2010年5月です。

 振り返ってみれば、私が技術者への道を歩むことになったのは、高校の理科実験が楽しかったせいかも知れません。理科の教師がちょっとやんちゃな方で、私たちは大学受験にさほど必要ない知識を実践的に探求することが出来ました。

 例えば、ビーカーの底に水を浅く入れて、そこに純粋な金属ナトリウムの小片を落としたらどうなるか(ヒント:爆発)。試験管に入れた塩酸に金属を加え、ぶくぶく発生する水素ガスが、いい具合に大気中の酸素と混じり合う辺りに、マッチの火を近づけるとどうなるか(ヒント:爆発)。アルミニウム粉末を鉄さびとよく混ぜ、ガスバーナーの炎を当てるとどうなるか(ヒント:爆発)。

 本書は、やんちゃな理科教師が身近にいない子供たちや、その親のために、それなりに危険で派手な実験をいっぱい紹介してくれる本です。燃え上がる炎、飛び散る破片、輝くプラズマ、弾ける放電、吹き出す白煙など、心踊る美しいカラー写真が全ページに掲載されており、写真集としても楽しめます。

 何しろ最初のページから、劇物(ナトリウム)と毒ガス(塩素)を反応させると何が出来るか試してみましょう、というあり得ないくらい危険な実験の紹介から始まります。カメラがとらえたその結果は、燃えながら爆発四散する液状ナトリウムの花火という恐ろしくも美しい写真。すげー、すげー。吹き上がる白煙の正体は、自分で考えてみましょう。

 他にも、熱湯に入れると解けてしまうスプーンを作る(ヒント:合金)、水に沈む氷を作る(ヒント:重水)、クッキーを燃料にしてロケットを飛ばす(ヒント:酸化剤)、液体酸素を作って引火させる、酸素と水素の混合気体で作ったシャボン玉を飛ばす(そしてもちろん、爆発させる)、自作テルミット爆薬で鉄を溶接する、水銀でアルミニウムを粉々に破壊する、プラズマアークで鉄板を切断する、磁石を空中浮遊させる、強化ガラスを粉々に粉砕する。面白そうでしょ?

 さらに、マッチ、電球、鉛筆、ナイロン繊維、化学電池、霧箱、メッキ、さらには「銀の弾丸」に至るまで、自分で作ってみよう、というDIY精神が素晴らしい。

 アクリル板に封じ込めた稲妻の結晶(としか言いようがないもの)、永久保存できる「雪の結晶」の剥製、など美しい写真も満載。石灰で沸かした風呂に入っている著者、カウボーイのコスプレをして得意気にマグネシウム弾を爆発させている著者、などやや見苦しい写真もあります。

 大放電の嵐の中で静かに読書している姿を写したニコラ・テスラの有名な写真に比べると、威厳というものが少々不足しているようにも感じられますが、まあ「マッドサイエンス」にふさわしい光景と言えるでしょう。

 こんな具合に、どのページを開いても爆発と閃光と白煙が読者の目を引きつけ、ユーモアたっぷりの解説が「科学の面白さ」を伝えてくれ、そして実際に実験するための材料と手順まで教えてくれる、素晴らしいサイエンス本です。

 夏休みの自由研究の宿題に悩んでいる中高生の皆さんにお勧めしたいところですが、しかし、絶対に試してはいけません。受験に合格して大学に入ってしまえば、そう、液体窒素だって化学薬品だって高電圧起電機だって使いたい放題ですから。それまでは、写真と解説だけで我慢しておきましょう。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0