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『SFマガジン2010年7月号』 [読書(SF)]

 今月号のSFマガジンは、「メタルギアソリッド」特集。SFマガジンでゲームが特集されるのは初めてとのことですが(それもこれも伊藤計劃さんのせいでしょう)、残念ながらシリーズどれ一つもプレイしたことがないもので、ちょっとついてゆけませんでした。

 他に「柴野拓美追悼」として、そうそうたるメンバーが追悼エッセイをよせています。壮観です。うう、次号は朝倉久志さんの追悼特集だそうですし、何だか私にとってのSFがどんどん消えてゆくようで寂しい。

 さて、山本弘さんの『オルダーセンの世界』は、宗教的独裁権力に支配された陰鬱な世界を舞台に、一人の男が、「外の世界からやってきた」と言い張る不思議な少女と出会う話。少女は、この世界は排他的な信念によってかろうじて保たれているだけで本当は存在しないのだ、というようなことを言い出すのですが・・・。

 いわゆる「量子論的たわごとSF」ですが、どうにも中途半端。そもそも背景世界の「嫌さ」に説得力が欠けていて、たぶん性表現規制問題で感情的に規制を押しつけようとしている人々に対する皮肉なんでしょうが、今ひとつ冴えてないように感じられます。

 現実崩壊感覚やそれを支える理屈にも新鮮さはなく、またか、という印象が強い。全体から感じられる作者特有のナイーブさも、今作ではちょっと空回りしているようで、どうにも、もの足りませんでした。

 北野勇作さんの『カメリ、掘り出し物を探す』は、忘れた頃にふと掲載されるシリーズの最新作。赤いリボンをつけたレプリカメ、カメリの活躍(散歩とか)を描くこのシリーズ、まがい物しかない偽世界でふわふわとした悪夢を見ているような、というか要するにディックなんですが、いかにも北野さんらしい。

 今回、カメリが掘り出し物を見つけるためにやってきたのは、猫の背中がびっしり集まって出来た巨大なすり鉢状の場所。見渡す限り足元はずっと猫の背中。そこを跳びはねる電気蚤。そう、ここは「ノミの市」。ああ、北野さんだ。

 カメリとザリガニの闘いもありますし(というかレプリカメってもともとザリガニマンと戦うための戦闘兵器じゃなかったっけ。ああ、もう記憶が全然)、ヌートリアンのアンは頼もしいし、ヒトデナシたちはいつもの通り何やら仕事しているし、いつまでたっても何も変わらない不条理世界に、くつろぐもよし、不安になるもよし。まあ好みは分かれましょうが、私は割と好きです。


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