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『聖なる騎士たち:ハイチの生きた神々(The Divine Horsemen: The Living Gods of Haiti)』(マヤ・デレン) [映像(映画・ドキュメンタリー)]

マヤ・デレン
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 革命の年にロシアで生まれ5歳でアメリカに渡った少女は、26歳で以後のビジュアル・アート史に決定的な影響を与える傑作『午後の網目』を発表する。その作品に主演し、謎めいた神秘的な容姿を強烈に人々に焼き付けたマヤ・デレン。

 やがて彼女はヴードゥー教の研究に傾倒し、ハイチで芸術の女神として崇められるまでになる。 ダンサー、文化人類学者、巫女、映画作家。多様な活動でアンディ・ウォーホルやジョナス・メカスといったニューヨークのアーティストたちの注目の的であり、彼女が発散する創造的なエネルギーは、マルセル・ドゥシャンやアナイス・ニンも瞠目した。

 1961年、44歳の若さでこの世を去った彼女の死因は、麻薬の過剰摂取ともヴードゥーの呪いとも噂された。彼女の遺灰は17歳年下の夫の手によって東京湾に撒かれている。 彼女は6本の映画と1つの著作によって、今でも映画史上に輝く女神として様々なアーティストたちにインスピレーションを与え続けている。
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ドキュメンタリーフィルム『鏡の中のマヤ・デレン』イントロダクションより


 というわけで、前衛映画のパイオニア、アバンギャルドの女神と讃えられ、今も映画史上にその名を轟かす伝説の映像作家マヤ・デレンの(完成した)全映像作品と、マルティナ・クドラーチェク監督による彼女の生涯を追ったドキュメンタリーフィルム『鏡の中のマヤ・デレン』を観た興奮さめやらず、他にマヤ・デレンの映像が市販されてないか確認してみたところ、1947年から1951年にかけて彼女がハイチで撮影したドキュメンタリーフィルムがDVD 化されていました。

 ハイチにおけるヴードゥー教の宗教儀式を撮影した一時間弱のフィルム。激しいドラムのリズムに乗って、歌い、踊る人々の様子が克明に記録されています。

 ドラムから叩き出される強烈なリズム。狂騒的な音楽。ダンス、ダンス、ダンス。極度の興奮でトランス状態に陥って神に憑依される者。剣での戦いを模した儀礼舞踏。(日本の「精霊流し」のように)供物を海に流す儀式。仮装パレードの喧騒。牛や山羊を生贄として殺すシーン。全てが至近距離から撮影され、目の前で展開してゆきます。

 驚くのは、「儀式の様子をよそ者が外側から観察している」ようなカメラ視点ではなく、人々の集団に混じって内側から撮影していること。周囲で人々が踊り、歌い、儀式をしているそのただ中に自分が置かれているような臨場感に圧倒されます。

 1950年前後に、アメリカ人で、白人で、撮影機器を構えた女性が、ここまで現地の人々の信頼を得て、儀式に参加して撮影することを受け入れられたという事実には、とても信じがたいものがあります。マヤ・・・恐ろしい子。

 その鋭いカメラワークとスローモーション技法により、映像から緊迫感と生々しい臨場感が伝わってきて、観ていて退屈しません。記録映像としての価値はもとより、映像作品としても一見の価値があります。

 というわけで、ヴードゥー儀式やハイチの黒人文化(特に音楽とダンス)に興味がある方、ドキュメンタリーフィルム『鏡の中のマヤ・デレン』に挿入されていた断片的映像を観て好奇心をそそられた方、そしてマヤ・デレンの作品が好きな方にお勧めの、カルチャーショックに満ちた映像作品です。


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