『進化の存在証明』(リチャード・ドーキンス) [読書(サイエンス)]
これまで進化論を主要テーマとした科学啓蒙書を何冊も書いてきたリチャード・ドーキンスの最新刊です。出版は2009年11月。
本書の主張は帯に明確に示してあります。すなわち「進化は“論”ではなく“事実”である」。何を当たり前のことを今さら、と思うわけですが、必ずしもそうではないらしい。
「アメリカ国民の40パーセント以上がノアの箱船の物語を文字通りに信じているがゆえに、私はそうしなければならないのだ。彼らのことは無視して、自分たちの科学に邁進するということもできるのだが、彼らが教育委員会を支配し、自分の子供たちを自宅学習させて、適切な理科教師に近づく機会を奪い、しかも、多くの国会議員、何人かの州知事、さらには大統領候補や副大統領候補さえそこに含まれているがゆえに、ほっておくわけにはいかない」(単行本 p.389)
歳をとってますます怒りっぽくなったドーキンス教授、宗教的反進化論者たちをこてんぱんにやっつけるべく本書を書き下ろす、というわけです。もちろん彼らは本書を読んだりはしないでしょうけど。
正直に言うと、たとえば著名な天文学者が「地動説は単なる“説”ではなく、“事実”である!」と主張するために貴重な研究時間を削って本を書いている姿を見るような悲惨さと滑稽さを感じますが、まあ、仕方ないのでしょう。
ちなみに、各国における進化論の支持率を調査した結果は「付録」にまとめられています。けっこう信じがたい数字が並んでいるので、興味のある方は確認してみるとよろしいかと。
というわけで、本書は「進化論を裏付ける事実」を集めた一冊です。
冒頭に30ページ以上もの美しいカラー写真が掲載されており、ここが本書のハイライトになっています。昆虫の見事な擬態から、シファカのダンス、ワニ鴨のネクタイまで、眺めているだけで大いに楽しめます。
そしてページをめくるたびに読者が出会うのは、家畜や野菜の人為淘汰、昆虫と花の共進化、化石の年代測定、実験室内で観察された進化、中間種の化石、自己組織化、大陸移動説と種分岐、中立説と分子時計、進化の軍拡戦争、そして私たちを含む様々な動物の身体に見られる馬鹿馬鹿しいほどの不具合、といった事柄です。
一つ一つの事象がどのように進化論を裏付けているのかを著者は丹念に解説してゆきます。すでに知っていたことも多いのですが、例えば大腸菌を研究室内で進化させた実験の詳細や、蛋白質の自発的折り畳みのメカニズムなど、本書で初めて知った興味深い知識もありました。
進化をテーマに、地質学から分子生物学まで様々なトピックを横断的に解説した本として読みごたえたっぷりです。同じ著者による『祖先の物語』(個人的にはこちらの方が好きですが)と共に一読をお勧めします。
本書の主張は帯に明確に示してあります。すなわち「進化は“論”ではなく“事実”である」。何を当たり前のことを今さら、と思うわけですが、必ずしもそうではないらしい。
「アメリカ国民の40パーセント以上がノアの箱船の物語を文字通りに信じているがゆえに、私はそうしなければならないのだ。彼らのことは無視して、自分たちの科学に邁進するということもできるのだが、彼らが教育委員会を支配し、自分の子供たちを自宅学習させて、適切な理科教師に近づく機会を奪い、しかも、多くの国会議員、何人かの州知事、さらには大統領候補や副大統領候補さえそこに含まれているがゆえに、ほっておくわけにはいかない」(単行本 p.389)
歳をとってますます怒りっぽくなったドーキンス教授、宗教的反進化論者たちをこてんぱんにやっつけるべく本書を書き下ろす、というわけです。もちろん彼らは本書を読んだりはしないでしょうけど。
正直に言うと、たとえば著名な天文学者が「地動説は単なる“説”ではなく、“事実”である!」と主張するために貴重な研究時間を削って本を書いている姿を見るような悲惨さと滑稽さを感じますが、まあ、仕方ないのでしょう。
ちなみに、各国における進化論の支持率を調査した結果は「付録」にまとめられています。けっこう信じがたい数字が並んでいるので、興味のある方は確認してみるとよろしいかと。
というわけで、本書は「進化論を裏付ける事実」を集めた一冊です。
冒頭に30ページ以上もの美しいカラー写真が掲載されており、ここが本書のハイライトになっています。昆虫の見事な擬態から、シファカのダンス、ワニ鴨のネクタイまで、眺めているだけで大いに楽しめます。
そしてページをめくるたびに読者が出会うのは、家畜や野菜の人為淘汰、昆虫と花の共進化、化石の年代測定、実験室内で観察された進化、中間種の化石、自己組織化、大陸移動説と種分岐、中立説と分子時計、進化の軍拡戦争、そして私たちを含む様々な動物の身体に見られる馬鹿馬鹿しいほどの不具合、といった事柄です。
一つ一つの事象がどのように進化論を裏付けているのかを著者は丹念に解説してゆきます。すでに知っていたことも多いのですが、例えば大腸菌を研究室内で進化させた実験の詳細や、蛋白質の自発的折り畳みのメカニズムなど、本書で初めて知った興味深い知識もありました。
進化をテーマに、地質学から分子生物学まで様々なトピックを横断的に解説した本として読みごたえたっぷりです。同じ著者による『祖先の物語』(個人的にはこちらの方が好きですが)と共に一読をお勧めします。
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