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『点と線』(小野寺修二、ニコラ・ビュフ) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 小野寺修二ひきいるカンパニーデラシネラの新作公演を観るために、夫婦で川崎市アートセンターのアルテリオ小劇場まで行ってきました。『点と線』、もちろん原作は松本清張の代表作。

 日仏ダンスコラボレーションということで、舞台美術をフランスの現代アーティストであるニコラ・ビュフが担当しています。チョークで、線路、時刻表、時計といった作品のシンボルを落書きした、モノリスのような巨大な黒板が数枚。終演までに落書きは全て消されてしまうのが印象的で、毎回公演前に描き直しているのでしょう。ご苦労様です。

 他には巨大な麻雀牌のような直方体がいくつか。これを並べてテーブルにしたり、列車にしたり、東京駅のホームにしたり、様々な「見立て」で活用します。

 公演内容は基本的にこれまでのカンパニーデラシネラ作品と同じく、ダンスを多用したマイム作品です。今回はセリフも多いのですが、直線的にストーリーを進めてゆくような作品ではなく、原作に書かれているセリフやシーンをコラージュしたような感じになっています。

 私は直前に原作を読んで予習してきたので、それぞれ誰が誰に対してどんな状況で言ったセリフなのか理解できましたが、何しろ前後の脈絡どころか瞬間瞬間における会話の脈絡さえほとんどない舞台なので、原作を読んでない観客はかなり困惑したのではないでしょうか。まあ、基本的にダンス公演なのでストーリーを理解する必要はないのですが。

 複数人物の完璧に計算された動きが変にかみ合って精巧なメカニズムのように舞台が展開してゆくという小野寺さんの振付はいつもにも増して素晴らしく、原作の雰囲気(時刻表を駆使した精微なアリバイトリック、という一般的なイメージ)とうまくマッチしています。なるほど、何で『点と線』を選んだのかと不思議でしたが、こういう符合なんですね。

 普通の演劇的シーン(場の状況、時間経過、人物の行動、会話、などがそれぞれかみ合っていて、何がどう進行しているのか観客が容易に判断できるような場面)は最小限におさえられています。その代わり、どのシーンにも異常な工夫が凝らされており、そのサービス精神というか、ハッカー気質というか、ほとんど病的なまでの仕掛けへのこだわりには大いなる感銘を受けました。
 
 個人的に大好きなのは、演技、振付、ダンス、舞台美術、大道具、照明、そして音楽(スティーヴ・ライヒ作『ディファレント・トレインズ』)の全てを駆使して原作の有名な「東京駅15番ホーム4分間の偶然と作為」のシーンを見事に再現した大がかりで凝りに凝った馬鹿馬鹿しいシーケンス。あの数分間だけでもチケット代分の価値はあると思いますね。

 というわけで、とにかく退屈なシーンが一つもない素晴らしい公演でした。小野寺さんの前作を見逃してしまったのが今さらながら悔やまれます。うう。


『点と線』(カンパニーデラシネラ)
2009年12月20日、川崎市アートセンター(アルテリオ小劇場)
原作:松本清張
演出:小野寺修二
美術:ニコラ・ビュフ
出演:佐藤亮介、鈴木美奈子、関寛之、藤田桃子、森川弘和、小野寺修二


タグ:小野寺修二
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