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『ポータルズ・ノンストップ』(コニー・ウィリス)、『ドラコ亭夜話』(ラリイ・ニーヴン) [読書(SF)]

 SFマガジン2010年1月号は「創刊50周年記念特大号PART-I 海外SF篇」ということで、人気の高い海外SF作家たちの作品をごっそり翻訳紹介してくれました。近作12篇に名作再録5篇というボリューム。年末に向けて少しずつ読んでゆくことにします。

 今回はオールドSFファン向け、「古き良きSF」へのオマージュ作品2篇。

 コニー・ウィリスの『ポータルズ・ノンストップ』は、観光名所など何もない田舎に仕事でやってきた主人公が、たまたま見かけた不思議な観光ツアーに飛び入りで参加するという話。

 その謎の観光ツアーは、SF作家ジャック・ウィリアムスンゆかりの地をめぐるという企画らしいのですが、主人公はツアー客たちの様子にどことなく違和感を感じます。どうも変だ。そもそも、こんなSFファンとも思えない普通の人々が、なぜジャック・ウィリアムスンに興味を持つのだろう?

 SFファンにとってジャック・ウィリアムスンと言えば“SF界の長老”、“SFグランドマスター”であり、SF黄金期の象徴なのですが、一般の知名度は決して高くはありません。そこら辺のギャップをネタにした作品です。

 余談になりますが、小説のラストから1ページめくると、中野善夫さんが評論(本作とは無関係)の冒頭で

「SFばかり読んでいた子供の頃、未来は明るく世界の変化は善であり科学の進歩こそ人類の進歩であると信じて疑わなかった」(p.162)

と書いておられ、意図的な編集かと一瞬疑うほど本作のテーマを的確に表した言葉なので驚きました。

 そうそう、あの頃は未来と科学を素直に信じてたよね、人類の進歩と調和だよね、というオールドSFファンにSF黄金期を懐かしんでもらうための作品。そういう読者なら、ラストの「また来いよ!」のリフレインにじ~んと感動するはず。そうでない読者は、うーん。そもそもタイトルが『火星ノンストップ』のもじりであることに気づかないような人は対象外かも知れません。

 ラリイ・ニーヴンの『ドラコ亭夜話』は、昔ながらのスペースオペラの定番「様々な異星人が集まる宇宙酒場」を舞台にしたショートショート連作。異なる種族間の文化や認識のずれが引き起こす騒動を扱っており、個人的にはどれもそれほど面白いとは思えないのですが、雰囲気は悪くありません。


タグ:SFマガジン
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