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『地球環境を映す鏡 南極の科学 -氷に覆われた大陸のすべて』(神沼克伊) [読書(サイエンス)]

 知ってそうで意外と知らない南極大陸の姿を教えてくれる解説書です。出版は2009年11月。

 著者が地震や火山の専門家であることから、解説は地学方面が中心となっています。類書ではたいてい大きくページを割かれているペンギン、アザラシ、オキアミといった生物系の話題はほんのわずかしか触れられていません。というか売り上げを支えるために、とりあえずペンギンの写真は入れておこう、というくらいの印象を受けます。

 さて、厚さ最大4000メートルの氷床に覆われた、総面積1205万平方キロメートルもの巨大な大陸。最低気温マイナス80度、最大風速は秒速100メートルに達するという、想像を絶する極限環境には圧倒される他はありません。

 南極大陸プレートは拡大しつつあるが、そのメカニズムは不明。1998年に南極にマグニチュード8.0の大地震が起きたが、その原因は今のところ謎のまま。日本の観測隊は南極で1万6000個以上の隕石を採集し、このため日本は「世界一の隕石保有国」となっている。3800メートルもの氷の下にある氷底湖の存在が確認された。南極大陸でしか化石が見つかってない恐竜がいる。

 ページをめくる度に「え、そうだったの!?」という驚きが待っています。

 二度の越冬を含め公務だけで十五回も南極に赴任したという著者ですから、南極基地での生活についての解説が充実していて、これがまた面白い。一日のタイムスケジュールから、食事、トイレまで、具体的なことを教えてくれます。

 南極で生活している人々についても色々なエピソードが語られます。例えばこんな感じ。

 アムンセン・スコット南極点基地には、かつて「300クラブ」というグループがあった。ここのメンバーになるためには、気温100度に達するサウナ風呂で裸になり、靴下一枚だけ身につけたまま飛び出して、基地から200メートルほど離れたセレモニーポール(南極点標識)まで行って帰ってこなければならない。この試練をくぐり抜けた者だけが真に南極の男を名乗れるのだっ。ちなみに現在では危険なので廃止されている(そりゃそうだ)。

 雪と氷に閉ざされた場所へあえて向かってゆく人々の気質について雄弁に物語ってくれるエピソードではありませんか。

 最終章では、南極に行くには、そこで働くにはどうすればよいのか、具体的なアドバイスが書かれていますので、我こそはと思う若者は挑戦してみるとよいかも知れません。


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