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『パラダイス・モーテル』(エリック・マコーマック) [読書(ファンタジー・ミステリ・他)]

「正直いって、これは小説ではありません。ゆるやかに結びつけられた短編の集まりにすぎません」

「それが人生というものだ。小説のふりをしたひと握りの短編というやつが」(p174)

 最近、文庫化されたマコーマックの短編集『隠し部屋を査察して』を再読し、改めて感銘を受けたもので、他に翻訳された作品がないかと思って検索しました。

 そしたら、ありましたよ。彼の第一長編『パラダイス・モーテル』が翻訳されてました。

 慌てて手に入れて読みましたが、これも素晴らしい。というか『隠し部屋を査察して』と兄弟関係にあるような作品。

 『隠し部屋』に収録された『パタゴニアの悲しい話』の一部(外科医が妻を殺して遺体をバラバラにして、4人の子供達の身体に埋め込む挿話)が、そのまま導入部になっています。

 他にも、登場人物の一人である作家が書いた本が『隠し部屋を査察して』そのものだったり、『一本脚の男たち』が語り手の故郷で実際に起きた話とされていたり、『庭園列車』に登場する架空の島が実在していることになっていたり、『トロツキーの一枚の写真』のヒロインの話題が出てきたりします。

 構成も似たようなもので、変な話、猟奇的な話、ホラ話、意味不明な話、などが次々に語られるだけで、長編全体としての「構成」は見えません。というか、ありません。

 でも、その挿話が異様に面白いんですよ。例によって。

 『隠し部屋』が気に入った人は、文句なくこちらも気に入ると思います。奇妙な話が大好きな人は、まず『隠し部屋』からどうぞ。

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