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『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』(斉藤倫、高野文子:イラスト) [読書(小説・詩)]

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 きみたちの話は、こうなふうに、ときどきに、かぜにとばされるように、ちらばって、そのままで、詩じゃないかとおもえる。
 詩は、たのしめばいい。おもいついたら、書けばいい。でも、すこし、その〈かたち〉を、考えるだけで、ぐっと視界がひらけたりする。
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 じっさいにあったことや、げんじつにあったこととはべつに、ほんとうにあったこと、が、ある。ひとは、ことばをつくって、こころを、あらわそうとした。それでも、あらわせないものが、詩になった。
 大人と子供の対話を通じて、詩とはなにか、詩の言葉がどうして大切なのかを、丁寧に教えてくれる一冊。単行本(福音館書店)出版は2019年4月です。


 文法的に正しい言葉を論理的に組み立てて、解釈が分かれないように結論をはっきり示し、誰にでも正確に伝わるようにする。それが正しい言葉の使い方だ。そんな風に学校で教わった子供たちに、この世にはそうでない言葉の使い方があることを教えてくれます。例えば。

 嘘やでたらめやあり得ないことを書く。文法的に間違った言葉や表現を使う。意味の分からないことを書く。意味がなさそうな言葉遊びのようなことを書く。比喩だけで終わってしまって、何を例えたのか説明しない。解釈が分かれることを書いて、どう解釈するのが正しいのかを教えない。そもそも何を言いたくて書いたのかさっぱり分からない。

 こうしたやり方で書くのには、ちゃんと理由があること。詩はそういった言葉で書かれていること。詩には、「正しい言葉」ではうまく表わせないような、ほんとうのこと、が書いてあること。コツさえつかめれば、詩を読むのはとても楽しいということ。そして、たぶん、書くのはもっと楽しいだろうということ。

 詩人でもある斉藤倫さんが、詩を読むときに知っておいた方がいいちょっとした知識、いわば詩を読むためのノウハウを伝えてくれる本です。様々な詩作品が引用され、詩を読む練習をすることが出来ます。

 大人が読んでも得るものは多いのですが、ぜひ子供たちに読んでほしい。というか、全国の小学校で国語の副読本として採用してほしい一冊です。


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文法としては、でたらめかもしれない。けど、それは、ただしい、ことばなんだ。
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言葉のいみなんて、わかりはしないけど、わかろうとしなくていいわけじゃない。
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それぞれのことばには、それぞれの、ひびきやリズムがある。あたまのなかで、ぱっともじにおきかえて、いみにしてしまうから、きこえなくなるんだよ。
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 たくさん、くりかえそう。
 いちどきりのことを見つけるために。
 たのしいことも、くるしいことも、人生がつづくかぎり、ほんとうの、くりかえしなんてものはないんだから。
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こわいのは、たぶん、ふだんのことばが、生まれるまえの、なまのげんじつに、むかいあってしまうから。
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ひゆは、ことばのいちばんだいじなぶぶんで、詩のいちばんだいじなぶぶん。そこを考えることで、とびらがひらくんだ。
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むねに、そんなかんじがあったこと。そして、せつめいが、できなかったこと。それだけ、ちゃんとおぼえていれば、いい。
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じっさいにあったことや、げんじつにあったこととはべつに、ほんとうにあったこと、が、ある。
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 ばしょが、二か所あったら、それは、ひとつにならない。ぜったいに。
 かこと、現在とか、みらいでも、ふたつのべつのじかんが、あったら、それは、いっしょにはならない。ぜったいに。
 でも、ことばは、それを、ひとつにすることが、できる。
 なにかをひとつにして、ほんとうのことが、ちらっとでも見えたら、それは、〈いい詩〉っていえるんじゃないか。
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タグ:斉藤倫
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