『サラの柔らかな香車』(橋本長道) [読書(小説・詩)]
「サラを使って将棋を殺す? 冗談よね」
「俺はあんたの話を信じる。彼女は将棋界を壊すよ。いや、壊させるさ」
将棋界から脱落しすさんだ生活をおくっていた棋士の前に現れた金髪碧眼の美少女、サラ。盤上に色、匂い、風景、痛みなど、「世界を構成するありとあらゆるものを同時に見る」という異能者たる彼女は、将棋を覚えてわずか数年で女流名人戦に挑むことになる。
運命の一局。サラがもたらすものは「未来の将棋」か、それとも「将棋の終焉」なのか・・・。小説すばる新人賞を受賞した新鋭の話題作。単行本(集英社)出版は、2012年02月です。
常人には理解困難な異質な精神と感覚の持ち主であるサラ、サラと同世代の天才少女、そして孤高の女流名人。三人の戦いと生きざまを描き、第24回小説すばる新人賞を受賞した長篇小説です。
誰よりも強く美しい女流名人をめぐって三角関係にある二人の男性棋士。彼らはそれぞれに天才少女を見出し、将棋を教える。彼女たちの対決のその先には、女流名人との決戦が待っているのだ。だが、病におかされた女流名人には、もはや最後の一局を指す時間しか残されていなかった・・・。と、まあ、やりすぎというか、将棋漫画もかくやというべき強引な展開です。
しかし、何しろ異能と天才と名人が火花を散らす話ですから、これが単純明快に面白い。読み始めた途端にぐいぐい引き込まれ、一気に最後のページまで駆け抜けるように読了してしまいました。
惜しいのは、長さの割に詰め込み過ぎて、駆け足で終わってしまった感があること、そしてヒロインであるサラの印象が薄いことでしょうか。最近話題になった『盤上の夜』(宮内悠介)にも異能の女性棋士が登場しますが、こちらはヒロインの「誰にも理解できない感覚の世界で戦っている」「よく分からないけど何か凄そう」という感触を出すことに巧みに成功していたので、ついつい比べてしまい不満が残ります。
むしろサラと対局するライバルたちの方が、やや類型的な人物造形ながら、忘れがたい印象を残してくれます。個人的には、『ひらけ駒!』(南Q太)に登場する女性棋士たちのビジュアルを脳裏に浮かべながら読みました。しっくり。
というわけで、将棋のルールを知らなくても読める女流棋士小説。かなり無理やりな設定ながら、最後まで勢いで引っ張ってゆくので、安心して楽しめます。著者経歴によると、奨励会で一級まで昇級したそうで、将棋小説で新人賞をとる、というのも自然な流れでしょう。この先どんな題材で書くのか、それとも将棋小説で勝負を続けるのか、次の一手が楽しみです。
「俺はあんたの話を信じる。彼女は将棋界を壊すよ。いや、壊させるさ」
将棋界から脱落しすさんだ生活をおくっていた棋士の前に現れた金髪碧眼の美少女、サラ。盤上に色、匂い、風景、痛みなど、「世界を構成するありとあらゆるものを同時に見る」という異能者たる彼女は、将棋を覚えてわずか数年で女流名人戦に挑むことになる。
運命の一局。サラがもたらすものは「未来の将棋」か、それとも「将棋の終焉」なのか・・・。小説すばる新人賞を受賞した新鋭の話題作。単行本(集英社)出版は、2012年02月です。
常人には理解困難な異質な精神と感覚の持ち主であるサラ、サラと同世代の天才少女、そして孤高の女流名人。三人の戦いと生きざまを描き、第24回小説すばる新人賞を受賞した長篇小説です。
誰よりも強く美しい女流名人をめぐって三角関係にある二人の男性棋士。彼らはそれぞれに天才少女を見出し、将棋を教える。彼女たちの対決のその先には、女流名人との決戦が待っているのだ。だが、病におかされた女流名人には、もはや最後の一局を指す時間しか残されていなかった・・・。と、まあ、やりすぎというか、将棋漫画もかくやというべき強引な展開です。
しかし、何しろ異能と天才と名人が火花を散らす話ですから、これが単純明快に面白い。読み始めた途端にぐいぐい引き込まれ、一気に最後のページまで駆け抜けるように読了してしまいました。
惜しいのは、長さの割に詰め込み過ぎて、駆け足で終わってしまった感があること、そしてヒロインであるサラの印象が薄いことでしょうか。最近話題になった『盤上の夜』(宮内悠介)にも異能の女性棋士が登場しますが、こちらはヒロインの「誰にも理解できない感覚の世界で戦っている」「よく分からないけど何か凄そう」という感触を出すことに巧みに成功していたので、ついつい比べてしまい不満が残ります。
むしろサラと対局するライバルたちの方が、やや類型的な人物造形ながら、忘れがたい印象を残してくれます。個人的には、『ひらけ駒!』(南Q太)に登場する女性棋士たちのビジュアルを脳裏に浮かべながら読みました。しっくり。
というわけで、将棋のルールを知らなくても読める女流棋士小説。かなり無理やりな設定ながら、最後まで勢いで引っ張ってゆくので、安心して楽しめます。著者経歴によると、奨励会で一級まで昇級したそうで、将棋小説で新人賞をとる、というのも自然な流れでしょう。この先どんな題材で書くのか、それとも将棋小説で勝負を続けるのか、次の一手が楽しみです。
タグ:その他(小説・詩)
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