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『機龍警察 自爆条項』(月村了衛) [読書(SF)]

 人気シリーズ『機龍警察』長編第二弾。警視庁特捜部と国際テロリストの死闘。警察内部の権力闘争から機動メカ白兵戦に至るまで様々な闘いが重層的に描かれ、緻密で重厚な展開に大興奮。SF、ミステリ、警察小説、冒険活劇、どのジャンルの読者も満足させる傑作。単行本(早川書房)出版は2011年9月です。

 凶悪化の一途をたどる機甲兵装(軍用パワードスーツ)犯罪に対抗するために特設された、刑事部・公安部などいずれの部局にも属さない専従捜査員と突入要員を擁する警視庁特捜部SIPD(ポリス・ドラグーン)。通称『機龍警察』。

 龍機兵(ドラグーン)と呼ばれる三体の次世代機を駆使するSIPDは、元テロリストやプロの傭兵など警察組織と馴染まないメンバーをも積極的に雇用し、もはや軍事作戦やテロと区別のなくなった凶悪犯罪に立ち向かう。だがそれゆえに既存の警察組織とは極端に折り合いが悪く、むしろ目の敵とされていた。

 そんなとき、北アイルランドのテロ組織が日本で大規模テロを計画しているとの情報が流れる。おりしも機甲兵装が国内に大量に密輸される事案が発生。果たして警察はテロを未然に防ぐことが出来るのか。外務省、公安、警察庁、そして特捜部の間で、激しいつばぜり合いが始まる。

 だが、ドラグーン<バンシー>のパイロット、ライザ・ラードナー警部にとって、本件は特別な意味合いを持っていた。戦う相手は、かつて彼女が所属した組織。そして今や裏切り者として彼女の命を狙う組織の「処刑人」たち。テロ、憎悪、暗殺、裏切り。ライザは自らの過去と対決し、それを乗り越えることが出来るのだろうか。

 「<敵>だ。間違いない。奴らが再び現れたのだ」

 沖津特捜部長の声が響きわたるなか、様々な勢力の思惑を巻き込んで、日本史上最大の国際テロ事件の幕が切って落とされた・・・。

 『SFが読みたい!2011年版』において、ベストSF2010国内篇第13位に選ばれた警察ハードボイルド戦闘メカSF『機龍警察』、その続編というか第二長篇です。前作については、2011年03月30日の日記を参照して下さい。

 前作に比べてぐんとスケールアップしています。重厚な警察小説としても楽しめるし、機甲兵装同士の息詰まる白兵戦もあり。東京をチェスの盤面に見立てた攻防戦の成り行きを手に汗握って見守るも良し。巧みに張られた伏線が次々と弾けてドラマチックな展開を生み出してゆく様には、もう大興奮。

 さらに今作では主要登場人物の一人であるライザの過去が丁寧に書かれており、この「過去パート」も読みごたえがあります。まあ、非常に定型的ではありますが。

 というわけで、SF、ミステリ、警察小説、冒険活劇、様々なジャンルの面白さを集大成したような傑作。どのジャンル読者が読んでも楽しめるでしょう。まだまだ話は終わってない、というよりまだ主要登場人物に順番に主役をふって読者に紹介している段階のようにも思え、今後の展開が非常に楽しみです。


タグ:月村了衛
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