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『SFマガジン2010年12月号 冲方丁特集/J・P・ホーガン追悼特集』 [読書(SF)]

 SFマガジンの2010年12月号は、『マルドゥック・スクランブル』アニメ化を記念して冲方丁の特集、および7月12日に逝去したJ・P・ホーガン追悼特集の二本立て。ホーガン追悼特集は追悼文および翻訳書リストに加えて、本邦初訳短篇が掲載されました。

 そのホーガンの本邦初訳短篇『プリンセスに銀の靴を』ですが、巨大な恒星間宇宙船に乗っている一人の少女と一体のロボットとの会話で構成された作品。発表は1979年といいますから、30年以上前に書かれたもの。

 少女は生まれたときからそこにいて、世話をしてくれるロボットを除けば他に人間を見たことがありません。彼女は成長するにつれて様々な疑問を持つようになります。なぜ自分はここにいるのか、なぜロボットと自分は違うのか。そしてついにロボット(を制御している人工知能)は時が来たと判断し、少女に世界の真実を明かす決意をします。彼女は何なのか、なぜここにいるのか、その真相を。

 まあ、要は『未来の二つの顔』の逆バージョンです。向こう側からアプローチしても結末は同じという、実にホーガンらしい作品。一部、『造物主の掟』のモチーフも混ざっています。

 科学と宗教の対立(そして科学は必ず勝つ!)、異質な知性どうしの出会い(そしてボクたちは必ず分かり合えるんだ!)。不見識にも近いオプティミズムと、無責任にも近いナイーブさ。ぜんぜん科学的じゃなくても、「科学」っていう言葉の響きから感じられる興奮はちゃんとある。あの頃、僕らを熱くさせたホーガンが、まさしくここにいます。

 今となっては正直読むに耐えない作品かも知れませんが、そう言って切り捨てたりすると『星を継ぐもの』に感動したあの頃の自分を否定するようで悲しい。多くのオールドSFファンがそう感じるんじゃないでしょうか。やっぱりホーガンはボクらのSF原点の一つ。「衝突する宇宙」SFを書いても、時間虫を書いても、ホメオパシーSFを書いても、心はいつもハードSF。というかホメオパシーSFは書いてないと思う。


タグ:SFマガジン
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