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『東京コシツ』(森下真樹) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 新作公演『月の的を射る犬』を観に行ったついでに購入した森下真樹さんのプロモーションDVD。2005年に発表したソロダンス作品『東京コシツ』の舞台映像が収録されています。

 といっても、上演時間はわずか十分。充分じゃなくて10分。600秒。映像は荒いし、会場の雑音で音がよく聞こえないし、正直言って、素人が観客席からビデオカメラで隠し撮りした映像かい、という印象です。それら全てをひっくるめて「臨場感あふれる映像」と前向きにとらえられる方でないと、つらいかも知れません。

 さて、舞台装置も何もなく、床に白いテープを張って作った二畳くらいのスペースにスポットライトが当てられ、そこに森下真樹さんが立っています。何やら内股になって、ぎくしゃくと奇妙なダンスを踊り始めます。

 しばらく変な踊りが続き、ひょっとしてこのままラストまで「典型的な駄目コンテンポラリーダンス」が続くのかと観客が不安になった頃、いきなりスカートめくり上げ、股間にはさんでいたペットボトルを取り出すと、ぐいぐい飲みはじめる真樹さん。これまで股間で温めて攪拌していた、というわけです。

 飲んだ後にペットボトルに書いてある説明を読み始めます。というか読んでいるナレーション(録音されたご本人の声)が流れます。それがシャンプーの注意書きなので、げっ、と。ここでようやく会場から笑いが。

 続いてシャンプーの成分表が延々と朗読され、それに合わせて次々とポーズをとる真樹さん。「ラウレス硫酸ナトリウム」のポーズ、「脂肪酸ナトリウム」のポーズ、「表面活性剤」のポーズ。朗読はどんどん速くなってゆき、ポーズの切り換えも超スピードに。気がつくと何かダンスになっています。

 スピードがどんどんアップして、もはや朗読というより早口言葉になったシャンプー(に限らず栄養ドリンクとか他のも混ざっている)成分表に合わせ、無理やりの高速ダンス。あくまで真面目に、あくまで必死に。ときどき「人」だの「ハト」だの「ジャンプ」だの変な指示がはいるたびに困惑した様子で、それでも必死で指示に従おうと悪戦苦闘。それはもはやダンスというよりジェスチャークイズ。

 素晴らしい身体バランス。爽快なダンス。芸達者なナレーション。笑えるか笑えないか微妙な境界上にあるギャグ。でもなぜか必死になっているその切実さが観客に与える戸惑い。いずれも最新作『月の的を射る犬』と同じ印象で、好みは分かれるかも知れませんが、私は好きです。

 というわけで、このDVD、商品としてはともかく、作品としてはかなり気に入りました。森下真樹さんの舞台はこれからも観てみようと思います。


タグ:森下真樹
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