SSブログ

『日本の花火はなぜ世界一なのか?』(泉谷玄作) [読書(教養)]

 名人花火師へのインタビューを軸に、日本の花火とそれを支える花火師たちの職人魂について教えてくれる一冊。出版は2010年6月です。

 まず収録されているフルカラーの花火写真に魅せられます。夜空をバックに浮かび上がる美しい打ち上げ花火の数々。見ていると、ひゅーるひゅる、どどーっん、ぱらぱらぱら、みたいな音まで聞こえてきそうです。

 様々な伝統的花火だけでなく、創作花火、変わり花火など珍しい花火の写真も含まれているのが嬉しい。個人的には、型物花火の名人である今野義和さんが墨田川花火大会にて打ち上げた『アフロでキメる俺のヘアースタイル』(p.51)が好き。

 著者は花火写真集を何冊か出している写真家。本書の花火写真の美しさにも納得です。「おわりに」によると、本書は「文章を主体にした本を出してみたい」という著者の思いが結実したものだそうですが、それでも文章より写真の方に多くのページが割かれており、客観的にいって「文章も充実した花火写真集」といったところでしょうか。

「「五重芯」の玉が高度330メートルの夜空で「開発」すると、六重の層に詰められた星々は、いっせいに飛散し、直径320メートルの外輪の内側に五重の輪を描く。星の一粒一粒の燃焼時間は約6.5秒。丹精込めて作られたその星は、飛散とともに変色し始め、わずか6.5秒のうちに、6回もの変化をとげるものさえある」(p.9)

「6.5秒という時間の中で表現される「五重の芯」「六回の変色」は、実は肉眼での確認は難しい。驚くべきことに日本の花火は、肉眼では認識困難な領域にまで、すでに踏み込んでいるのである」(p.9)

 びっくり仰天。動体視力の限界を超えている花火技術。著者が花火通の知人にそのことを話すと、「そんなバカな。目で見てわからないようなものを作るわけないよ」とあきれたような返事が返ってきたそうで、そりゃまあそうですわな、写真を見せてようやく納得してもらったそうです。

 写真判定が必要な花火、というのも驚きですが、何と著者のようなプロが撮影した写真でもとらえられない変化さえあるそうです。

「日本の花火は、私たちの動体視力の限界を超えてしまっているだけでなく、写真さえも欺くほどに精微の度を増していて、花火玉の中身を容易に想像することを許さない領域にまで、進化しているということのようだ」(p.86)

 何でそこまで、と思いますが、そういうことをやっちゃうのが職人魂というものでしょうか。

 というわけで、花火職人の技に驚嘆するも良し、美しい花火写真に酔いしれるも良し、全国の花火大会情報(第三章)をガイドとして参照するも良し。花火の解説や巻末の花火用語集を覚えておいて、友人や恋人と花火大会を見物するとき話題に出して知ったかぶりする、などの活用法もありそうですね。花火大会を見に出かける際のお供にどうぞ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0