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『銀河物理学入門』(祖父江義明) [読書(サイエンス)]

 銀河系の構造や活動について基礎から教えてくれる本です。出版は2008年12月。

 私たちの太陽系を含む銀河系の大きさや質量、その回転速度などのデータは、天文年鑑を調べるまでもなく、ちょっとネットで検索すればすぐに答が見つかります。ではその値をどのようにして測定したのでしょうか。本書の狙いはまさにそれを理解させることにあります。

 まず銀河系の大きさ、続いて質量、そして回転速度といった基礎データの測定方法について解説されます。ここを大筋理解した上で、次は銀河系の立体構造(中心部から周辺部に向かってどのように恒星が分布しているか)を調べる方法に進みます。

 さらに、様々な銀河の形態分類、渦状腕の構造、銀河核における活動、星の生成、といったテーマに進んでゆきます。

 話題を「銀河系の構造と活動」という一点に絞ってあるため、一般的な天文学や宇宙論の本に比べて話の流れが分かりやすく、すらすらと読み進めることが出来ます。なぜ暗黒物質(ダークマター)が存在すると考えられているのかも理解できますし、銀河中心核(マッシブコア)に超巨大ブラックホールがある証拠についても知ることが出来ます。

 我々の銀河系とアンドロメダ銀河との間にある空間、どんなに観測しても何も見つからない空間に存在する正体不明の質量、すなわちダークマターの質量は、両銀河の質量を合わせた値の何と10倍に達するというのは驚きでした。

 語り口は地味であっさりしているのですが、こういうスケールのでかい話が満載です。銀河中心核にあるブラックホールの質量は太陽の3000万倍だとか、銀河系の中心核は1500万年前に「スターバースト」と呼ばれる爆発を起こしたことが分かっており、その衝撃波の痕跡を観測した結果、爆発エネルギーは超新星(スーパーノヴァ)の10万倍だと判明したとか。

 そのスケールに圧倒されるわけですが、単に数字がぽんと示されるのではなく、様々なデータをどのように計測したのかという理解を積み重ねていった上で、結果として出てくる数字なので、何と言っても迫力が違います。

 というわけで、物理学にせよ天文学にせよ、豆知識よろしく結果だけを覚えるのではなく、それを計測する方法、そのための努力について知ることが大切、センス・オブ・ワンダーはそこにこそある、という当たり前のことを改めて思い知らされました。ていうか銀河系すげえっ。


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