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『笑う科学 イグ・ノーベル賞』(志村幸雄) [読書(サイエンス)]

 科学技術の裏面史を明るく楽しげに書いて読者を大いに楽しませてくれた『誰が本当の発明者か』の志村幸雄さん。彼の新作が出ていたので読んでみました。裏ノーベル賞として名高い「イグ・ノーベル賞」について紹介してくれる一冊です。出版は2009年11月。

 「人を笑わせ、そして考えさせる」ような研究に対して与えられるイグ・ノーベル賞は、もちろんノーベル賞のパロディという風刺の側面が強いのですが、同時に、笑いによって科学の権威化と硬直化を防ぎ、研究というものの楽しさを知らしめる、というけっこう興味深い賞でもあります。

 ちなみに日本は創設以来の18年間に総計13件を受賞した「イグ・ノーベル賞大国」なんですね。最近になって新聞などでも日本の研究者がイグ・ノーベル賞を受賞したという記事が掲載されるようになって知名度も上がってきたようですが、もっと喧伝されてもいいんじゃないかな。

 本書では、日本人が受賞した件をいくつか取り上げて詳しく紹介してくれます。

「ハトにはピカソとモネの作品を識別する能力があることの実証」

「イヌとの対話を実現するバウリンガルの開発」

「兼六園の銅像がハトに嫌われる理由の考察」

「カラオケの発明」

「バニラの芳香成分を牛糞から抽出することに成功」

「粘菌には迷路を解決する能力があることの発見」

 ハトや粘菌の研究も興味深いのですが、個人的には「金沢大学の新入生歓迎コンパの場で、兼六園にある日本武尊像にハトやカラスが寄りつかないことに気づき、それから粘り強い研究を40年も続けた結果、ついにその謎を解いた」という広瀬幸雄教授の成果に感銘を受けました。40年ですか。

 他に掲載されているイグ・ノーベル賞を受賞した研究はこんな感じ。

「トーストを落下させるとバター面が下になりやすいことを力学的に解明」

「古代の彫刻では睾丸の大小が実際とは左右逆になっていることの実証」

「性交中の男女の生殖器の様子をMRIで撮影した功績」

「ビスケットを紅茶に浸す理想的な方法の考察」

「犬に寄生するノミは猫に寄生するノミより高く飛ぶことの発見」

「尿検査の際に患者がどんな容器を持参するかを克明に調査」

「大量の髪などが必然的にからまってもつれることの数学的証明」

「人間はシロップの中と水中ではどちらが早く泳げるかの検証」

 イグ・ノーベル賞は研究そのものに対して与えられる賞であり、その結果の正当性についてはさほど問われません。『代替医療のトリック』(サイモン・シン、エツァート・エルンスト)でも詳しく紹介されていた「水は接触した物質の“記憶”を持つという研究」、さらには「ミステリーサークルの謎を完全に解明」という成果に対してもイグ・ノーベル賞が与えられています。

 ちなみに後者は、数百個ものミステリーサークル(クロップサークル)を長年かけてこつこつと夜中にこっそり作っていたサークルメーカーの二人の業績をたたえて授与されたものです。

 軽く読むだけで充分に楽しめますが、読後「研究者って何だか魅力的かも」という気分になります。高校生の皆さんが読むと「理系の大学に進んで研究者になろう」と決意するかも知れません。

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