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『今日も怒ってしまいました』(益田ミリ) [読書(随筆)]

 『すーちゃん』や『結婚しなくていいですか』で有名な益田ミリさんのエッセイ集。単行本の出版は2002年10月、私が読んだ文庫版は2009年9月出版です。

 タイトルが示す通り、著者がこれまでの人生で「怒りを覚えた体験」をテーマに書いた連作エッセイです。

 妹が交通事故にあったとき、加害者が誠意のかけらも無い対応をした話。いきなり泥棒よばわりされて罵られた話。高校のとき無欠席を目指して頑張っていたのに教師の勘違いで遅刻を欠席扱いにされた話。部屋探しのとき不動産屋にあからさまに冷淡な扱いを受けた話。様々な怒りの体験が語られます。

 毎回ただ怒っているだけでは著者も読者も疲れてしまうので、笑えるオチを用意したり、ときどき「いい話」や「おもしろい話」を混ぜてほっとさせたり、色々と工夫が効いていて飽きずに読み進められるのが嬉しい。

 4コママンガも多数収録されていて、こちらの方がむしろ生々しいです。特に編集者にしたり顔で言われたセリフの数々。「これからが勝負なんじゃない? キミはキミなんだし。キミ、自分で思ってるほどダメじゃないと思うよ」(文庫本p.138)とか。お気の毒です。

 個人的に印象が強かったのは、仔猫の墓が荒らされた話。「こんなことをする奴なんかできるだけ苦しんで死ねばいいんだ」と泣いた。そのことを回想しながら「あの怒りは時間とともに、もう薄まってしまったけれど、堤防で泣いていた14歳のわたしのことは、今でも可哀相だなと思う」(文庫本 p.125)というラストにはぐっときました。

 どれを読んでも、とにかく読者を共感させるのがうまい。感心させられます。『すーちゃん』や『結婚しなくていいですか。』が好きな人には文句なしにお勧めですが、そうでなくても読んでみる価値のある好エッセイ集だと思います。


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