『ババア・ウォーズ 新たなる美貌』（中村うさぎ）

　週刊文春に連載された、ご存じ中村うさぎさんの女王様エッセイ集。出版は2009年9月です。

　中村うさぎさんと言えば、徹底的なまでに自分の身体による実践を通じて女性の自我に関する問題意識を深く過激に追求する随筆で注目されているわけですが、そういう極北的な随筆文学のかたわらで、オヤジ向け雑誌に連載している自爆ギャグ女王様エッセイをちゃんと書き続け、中高年男性読者へのおもてなし（および前借りした原稿料）もないがしろにしないプロ根性が立派。実はどちらにも同じことを書いているというのがまた凄い。

　というわけで、気軽に読める女王様エッセイ最新刊であります。

　最初の方こそ、女性の自意識や、中年男性はなぜ他人の視線を意識しないで生きていられるのか、といった問題を扱っていますが、おそらく読者のウケが悪かったのでしょう、後半はひたすら貧乏ネタ（お金に困って夫の財布から札を抜いた、税金を払うために年金暮らしの両親から借金した等）と、タイトルの由来でもある再度の美容整形手術の話が続きます。

　どう考えても破綻するのが分かりきっている恋愛沙汰のために何度も美容手術を受けて少しでも若返ろうとする心境は実のところよく分からないのですが、もはや他人がとやかく言えるような段階をはるかに超越した生きざまを実践している人なので、ここは素直に驚きあきれ笑って楽しむということでOKかと思います。

　なお、妙に可愛いイラストを描いた「るん　ビュイック」さんは著者の友人の娘だそうで、「中高生の頃は、自分がクラスメイトの娘と一緒に仕事する日が来るなんて、夢にも思わなかったよ」（p.215）とのこと。これまでの女王様シリーズのイラストでは最も気に入ったので、これからも彼女に描いてほしいものだと、そう思います。

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