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『東京飄然』(町田康) [読書(随筆)]

 シリーズ“町田康を読む!”第18回。

 町田康の小説と随筆を出版順に読んでゆくシリーズ。今回は、「婦人公論」に連載された随筆です。単行本出版は2005年10月。

 『耳そぎ饅頭』の続編というべき随筆集です。前作が「偏屈からの脱却」を目標に掲げて世間的なこと(ディズニーランドとかカラオケとか)に挑戦しては破れ去る様を面白おかしく書いていちびっていたのに対して、本作は「飄然とした旅」をテーマに掲げて、またもや負け続けます。

 正直言って前半はさほど面白くありません。「意識が話の本筋から外れて放浪する様を、省略しないで律儀に書く、そういう力業による原稿枚数の水増し」という技法が、どうも空回りしている印象を受けます。

 ところが、大阪は梅田の串カツ屈辱事件(8本セットの串カツを注文したのに自分だけ7本しかもらえんかった。どうせ自分なんて世間からこんな扱いされて抗議も出来ずに黙って金を払ってしまうしょうもない奴なんだ。10日たっても抑鬱気分が去らない)あたりから、頭の中をぐるぐる回る思考があっち飛んでこっち飛んで気がついたら落ち込んでいるという内容と、前述の水増し技法ががっつりかみ合ってきて、ここから面白くなります。

 リベンジのため串カツを求めて東京を彷徨い、なぜか銀座で串カツを喰らう。上野の美術館に行って芸術について考えようとしているうちに酒を飲んで訳がわからなくなる。最後は自由と反逆の叫びにロック魂を爆発させるべく高円寺のライブハウスへ。どこが「飄然とした旅」なのかさっぱり分かりません。

 単行本には著者が撮影した脱力気味の風景写真が多数掲載されており、これは『爆発道祖神』を思い起こさせます。

 さほどの傑作とは思いませんが、『耳そぎ饅頭』のとほほ感、『爆発道祖神』の妙な味わいのある写真、それらが気に入った方なら大いに楽しめるに違いありません。

タグ:町田康
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