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『乳がん診療ガイドラインの解説(2006年版)』(日本乳癌学会) [読書(教養)]

 乳がんに関する解説書です。乳がん患者ならびにその家族を対象に書かれており、目的は専門知識の獲得ではなくて、正しい知識を元に自分にとって最も適した医療を“選択”するための手助けをすること、となっています。

 内容はけっこう高度なんですが、「予防」「健診」「治療」「治療後」「転移・再発」という時間順に沿って患者目線で構成されており、非常に分かりやすくなっています。

 各項目はQ&A形式で書かれており、「乳がんは遺伝しますか」、「現在の標準的な手術術式は何ですか」、「手術後の放射線治療は必要ですか」、といった患者や家族が最も気になるであろう質問が的確に並んでいます。

 Q&Aは46項目にもおよび、知りたい情報はほぼ全てカバーされています。中には「アガリスク、メシマコブなどの民間療法は効果があるのでしょうか」とか「大豆イソフラボンの摂取が乳がんの予防になるというのは本当ですか」といった項目まであります。

 また各項目の回答では、例えば「こういう具合に色々な治療法がありますが、選ぶのはあくまで患者です」など無責任に書き逃げするのではなく、まず冒頭に「推奨」として、患者が置かれている状況ごとに乳癌学会として現時点で最もお勧めする選択肢を明記しているのが安心感を与えてくれます。

 また、どの治療法にはどんなリスクがどれだけあるか、どういう場合に治療を打ち切る(死亡する)のか、どういう場合に治癒をあきらめ延命目的の医療に切り換えるのか、そういったことも言葉を濁すことなく明確に説明してくれるので、患者本人や家族の不安が心理的にかなり軽減される効果があります。

 もう一つ、分からないことは「分からない」と書くのは当然として、さらに踏み込んで「こういう調査研究が行なわれており、こういう結果やああいう結果が出ていて、こういう知見もあるが、現時点では最終的な結論とはなっていない」といった最新情報が示されていることも、かなり不安を和らげてくれます。

 付録として、乳がん治療薬一覧、代表的な化学療法、用語解説がついており、医者と相談するときなど手元にあると役立つと思われます。

 乳がんについて基本的な知識を得たい人、治療について相談する前に選択肢の全体像を把握しておきたい人、本人あるいは家族が乳がんと診断され不安でならない方、などにお勧めできます。現在、最新版は2006年版ですが、今後も新しい知見に沿って改訂を続けるそうなので、最新版を確認してから入手して下さい。

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