『異国伝』(佐藤哲也) [読書(小説・詩)]
シリーズ“佐藤哲也を読む!”第5回。
佐藤哲也さんの著作を出版順に読んでゆくシリーズ。今回は、オムニバス形式の短編集『異国伝』です。単行本出版は2003年9月。
収録作は短いもので2~3ページ、長いものでも6~7ページしかないので、短編集というよりショートショート集というべきかも知れません。全 45話の標題は「あ:愛情の代価」から「ん:ンダギの民」までアイウエオ順に並んでおり、また全て「○○の××」という形になっています。「き:禁断の惑星」、「せ:絶対の危機」、「て:帝国の逆襲」といった具合です。
さらに収録作は全て「その昔、とあるところにそれは小さな国があった。あまりにも小さいので地図に載ったことがなかったし、旅行者向けの案内書にも載ったことがない」という書き出しから始まっており、各作品はその異国の奇妙な風習や歴史をめぐって展開します。
一見すると、童話か寓話、あるいは『なつかしく謎めいて』(アーシュラ・K・ル=グウィン)のような異世界ファンタジー連作を想像するのですが、読んでみるとこれがいかにも佐藤哲也というか、読者の予想をことごとく外す変な作品ばかりです。
ナンセンス、ギャグ、パロディ、言葉あそび。明らかにふざけている話があるかと思えば、しんみりとした余韻を残すいい話があったり、面白いところで唐突に終わってしまう話や、シュールで心に残る不思議な話もあり、読み終えるまでどういう話なのか予想できません。というか、読み終えてもどういう話だったのか把握できない作品も。
何だか読者をはぐらかすことに執心しているような、作者の意図がつかめず途方に暮れる読者を想像して楽しんでいるかのような、そんな印象すら与える、独特の味わいを持つ作品集です。
意外にも読後感はけっこう充実。ああ変なものを読んだなあ、というか本当に変なものを読んだのはひさしぶりだなあ、佐藤哲也さんはやっぱり変な作家だなあ、という感想です。
例によって読者を選ぶ本で、何だこれは人をおちょくってるのかふざけているのかなめてるのかと怒る真面目な読者がいても不思議ではありません。しかし、何だかよく分からない異色短編に軽やかに翻弄されるのを好む読者なら、この作者独特の文体にのせて次から次へと繰り出される手練手管を大いに楽しめることと思います。
佐藤哲也さんの著作を出版順に読んでゆくシリーズ。今回は、オムニバス形式の短編集『異国伝』です。単行本出版は2003年9月。
収録作は短いもので2~3ページ、長いものでも6~7ページしかないので、短編集というよりショートショート集というべきかも知れません。全 45話の標題は「あ:愛情の代価」から「ん:ンダギの民」までアイウエオ順に並んでおり、また全て「○○の××」という形になっています。「き:禁断の惑星」、「せ:絶対の危機」、「て:帝国の逆襲」といった具合です。
さらに収録作は全て「その昔、とあるところにそれは小さな国があった。あまりにも小さいので地図に載ったことがなかったし、旅行者向けの案内書にも載ったことがない」という書き出しから始まっており、各作品はその異国の奇妙な風習や歴史をめぐって展開します。
一見すると、童話か寓話、あるいは『なつかしく謎めいて』(アーシュラ・K・ル=グウィン)のような異世界ファンタジー連作を想像するのですが、読んでみるとこれがいかにも佐藤哲也というか、読者の予想をことごとく外す変な作品ばかりです。
ナンセンス、ギャグ、パロディ、言葉あそび。明らかにふざけている話があるかと思えば、しんみりとした余韻を残すいい話があったり、面白いところで唐突に終わってしまう話や、シュールで心に残る不思議な話もあり、読み終えるまでどういう話なのか予想できません。というか、読み終えてもどういう話だったのか把握できない作品も。
何だか読者をはぐらかすことに執心しているような、作者の意図がつかめず途方に暮れる読者を想像して楽しんでいるかのような、そんな印象すら与える、独特の味わいを持つ作品集です。
意外にも読後感はけっこう充実。ああ変なものを読んだなあ、というか本当に変なものを読んだのはひさしぶりだなあ、佐藤哲也さんはやっぱり変な作家だなあ、という感想です。
例によって読者を選ぶ本で、何だこれは人をおちょくってるのかふざけているのかなめてるのかと怒る真面目な読者がいても不思議ではありません。しかし、何だかよく分からない異色短編に軽やかに翻弄されるのを好む読者なら、この作者独特の文体にのせて次から次へと繰り出される手練手管を大いに楽しめることと思います。
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