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『ロミオとジュリエット(ヌレエフ版)』(パリ・オペラ座) [舞台(バレエ)]

 1995年7月、パリ・オペラ座バスティーユで収録された舞台映像を観賞しました。演目は、ルドルフ・ヌレエフが振付・演出を担当したいわゆる“ヌレエフ版”『ロミオとジュリエット』です。

 実は、『ロミオとジュリエット』と言えばケネス・マクミランが振り付けた“マクミラン版”しか観たことがなく、ヌレエフ版を観るのは今回が初めて。そういうわけで、いちいちマクミラン版と比べながら観てしまいました。

 まず、マクミラン版と比べて全体的に演出が派手な印象を受けます。あちこちに死の象徴が出てくるとか、喧嘩のシーンの振り付け(というか殺陣)がものすごくカッコイイとか、男性群舞が異様に気合が入っていて目立つとか。

 もちろん男性ダンサーの見せ場は大盛りになっており、マキューシオ(リオネル・ドラノエ)もベンヴォーリオ(ウィルフリード・ロモリ)もティボルト(シャルル・ジュド)も、パリス(ジョゼ・マルティネズ)まで、がんがん踊るシーンが用意されています。

 そして主役の二人、ロミオを踊ったマニュエル・ルグリ、ジュリエットを踊ったモニク・ルディエール。どちらも神業のようなバレエを軽々と、長々と踊ってくれます。

 まだ若いルグリがそれはもう凄くて、驚くべき超絶技巧を、これ見よがしなところなくごく当然のように上品に踊っています。異様に細かく刻んでくる複雑極まりないステップを、丁寧に、正確に、そして流れるように自然にやってのけます。観ていて思わず我が目を疑うほどです。

 対するモニク・ルディエールも想像を絶するレベルで、いじめとしか思えない高難易度の振り付けを、いちいち可愛らしい仕種で観客を魅了しながら、楽しそうに踊ってみせます。ふわふわ跳ぶし、片足をゆっくり優雅に振り上げてそのままピタリと静止するし、リフトされながら旋回するし、もう恋する乙女は無重力。というか特撮。

 有名な『バルコニーの場』のパ・ド・ドゥなんて、あまりの凄さにチャプターを戻して見直してみましたが、二度目に観たときの方が感動しました。どうやら、あのやたら細かい複雑な振り付けがあってこそ、二人の心象が効果的に観客に伝わってくるようです。ここは、マクミラン版をもしのぐ名場面だと思います。

 全体的に、難しいと言われるマクミラン版と比べてもさらに難易度を上げて劇的効果を高めた、退屈な寸劇を極力なくして全て踊りで表現するようにした、ヌレエフ版はそういう印象です。個人的には、こちらの方がマクミラン版より気に入りました。しかし、これをちゃんと踊れるダンサーは、ほとんどいないんじゃないかと心配。

 ルグリやルディエールのファンなら当然観るでしょうが、そうでない人にも是非観てほしい名盤です。実は、個人的にロミジュリはあまり好きな演目ではなかったのですが、今回ヌレエフ版を観て印象が大いに好転しました。他の版も観てみたいです。

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