『大人が知らない ネットいじめの真実』（渡辺真由子）

　いわゆる「ネットいじめ」問題についてのルポルタージュです。取材により、今の小中学生がどのような状態にあり何を苦しんでいるのかを明らかにしてくれます。

　そこに見えてくるのは、携帯電話のせいで24時間どこにも逃げ場がなく常に人間関係に気をつかい「場の空気」を読み続けなければ生きてゆけない（失敗したり逃げようとしたりすれば、自殺するまで追い詰められる）悲惨な子供たちの姿。彼らは戦場にいるといっても過言ではありません。

　読んでいて気が滅入ります。何でこんなことになってしまったのか。この問題は根が深く、技術（有害サイトのフィルタリング）や、教育（ネットリテラシー）では解決できそうにないということも、一読すればよく分かります。そもそも大人の社会だって似たようなものになりつつありますし。

　著者のスタンスの一部（例えば、ＴＶ番組やゲームなどのメディアが子供たちの攻撃性をあおっているという主張）には必ずしも賛同できないものも含まれていますが、とにかく子供たちの命と人生を救うために大人はこの問題をきちんと理解し本気で取り組む必要がある、マスコミは二次被害を与えるような報道は止めるべきだ、被害者を責めたり強くなればいいと言ったりするのは無責任で有害な態度だ、といった主張には共感できます。

　なお、巻末には「相談連絡先一覧」として、各種の団体や組織のいじめ被害相談窓口連絡先が挙げられており、緊急時の対応として、また情報収集の手段として、活用できるようになっています。

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