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『浄土』(町田康) [読書(小説・詩)]

 大槻ケンヂさんのロック小説を読んだら、次はやはりこの人のパンク小説。

 というわけで、町田康の短編集です。単行本は2005年6月、私が読んだ文庫版は2008年6月に出版されています。収録作品は『犬死』『どぶさらえ』『あぱぱ踊り』『本音街』『ギャオスの話』『一言主の神』『自分の群像』の7篇で、どれもこれも底意地の悪い話ばかり。

 会社によくいる無能な男に振り回されてストレスを溜めて倒れる、理事会からどぶさらえを押しつけられて自棄になってビバ!カッパ!と叫ぶ、運勢が下がっているので霊能力者に相談しにいったら逆効果だった。そんな、浄土から遥かに遠いところで生きる、小市民的な、やたら親近感を覚えてしまう人々の、みっともない姿を描いています。

 そのまま書けば実にもって辛気臭い話になりそうなところを、不条理な展開やらブラックユーモアやら超絶的リズム感あふれる文章やら、そういうものを総動員して読者を笑わせます。はっはは、はは、はぁ~~、と力なく。そんな感じ。

 個人的に最も気に入ったのは『自分の群像』で、これは会社によくいる駄目なやつの姿をこれでもかこれでもかと描写するリアリティまみれの作品。タイトルからすると、登場人物は全員「自分」ということなんでしょうか。ちなみに掲載誌は「群像」。

 他には「ギャオスの話」が凄くて、何がどう凄いのかというと、ギャオスが出てきてビルをどつきまわし街をぼろくそにする、それだけの話、というのが凄い。

 あとは『犬死』『どぶさらえ』は文章のリズムが素晴らしい。どんどん逆境の深みにはまってゆく主人公を軽快に笑い飛ばして、読後にちょっと嫌な気分になる、そういう変な味があって癖になりそう。

タグ:町田康
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