SSブログ

『ラークライト -伝説の宇宙海賊』(フィリップ・リーヴ) [読書(SF)]

 『移動都市』のシリーズにおける巧みなストーリーテリングに感心したので、フィリップ・リーヴの別シリーズを読んでみました。子供向きの冒険物語です。しかし、子供向きだからって甘く見てはいけません。

 こちちの舞台は1851年、万国博覧会の準備が進むヴィクトリア朝の英国。ニュートン卿が発明した錬金術エンジンにより宇宙に乗り出した大英帝国は、木星までの太陽系内の天体を次々と植民地化しています。

 宇宙船は錬金術の力で飛ぶし、宇宙空間には薄い空気があって何とか呼吸できるし、重力制御や機械召使(ロボット)は実用化されているし、英国海軍と宇宙海賊はしょっちゅうドンパチやっているし。まあ、そんな古き良きスペースオペラの世界です。

 主人公とその姉は「ラークライト」と呼ばれる古い屋敷(月のそばの宇宙空間に浮いています)に父親と共に住んでいました。そこを、謎の宇宙グモが強襲して父親は捕らえられ、姉弟は命からがら脱出。彼らを救出したのは宇宙海賊の一味でした。そこから二人の大冒険が始まります。

 海賊船は太陽系狭しと飛び回り、舞台は月、金星、火星、木星の衛星、木星、土星、地球、という具合に次々と移ってゆきます。次第に主人公が追われている理由が明らかになってゆき、ついに太陽系全体を破壊せんとする大陰謀(手始めにロンドンを壊滅させるのだ!)と戦うはめに。

 実に楽しい冒険小説で、確かに子供向きではあるのですが、大人が読んでも充分に楽しめます。

 出版社(ブルームズベリー社)の目論見としてはハリー・ポッターの二匹目を狙ったのでしょうが、木星の大赤斑が知的生命体だったり(電磁波そのものが意識を構成)、ロンドンに軌道エレベータが建っていたり(科学的に突っ込んではいけません)、水晶宮がクモ型巨大ロボットにトランスフォームして怪光線を放ちながらロンドンを破壊していったり、隠しようもなく懐SF魂があふれています。

 古いスペースオペラのおおらかさを懐かしむ大人も、とにかく次々と危機また危機のハラハラドキドキ冒険物語を求めている子供も、どちらも楽しめる良作です。こういう本を活用して、ぜひ子供たちにSFを読ませてやってほしいと思います。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0