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『オカルトの帝国 -1970年代の日本を読む』(一柳廣孝 編著) [読書(オカルト)]

「信奉者(ビリーバー)と懐疑論者(スケプティスト)との対立は問題を先送りする限りにおいて共犯関係的であり、そこで見えなくなってしまうものが必ずあるからだ。(中略)真偽をめぐる論争さえも起こりえないくらいに両者が分断され、空虚なる中心がいまだ神秘のベールで被われ続けているこのオカルトの帝国で、いままさに問われなければならないことはその「中間」にある」
(単行本p.286)

 本書は、日本の1970年代の「オカルトブーム」に焦点を当て、現代日本のオカルトシーンを読み解く試みの一つです。様々な論者がそれぞれが担当するテーマについて書いた小論を集めたという、まあ別冊宝島みたいな感じ。

 「オカルトブーム」「日本沈没」「横溝正史」「エクソシスト」「ノストラダムス」「宗教書」「終末論」「心霊写真」「妖怪」「恐怖新聞」「コンタクティ」「ユリゲラー」という具合に目次を並べてみれば、雑多な感じがよく分かると思います。

 どのテーマについても、詳しい読者から見ると「ぬるい」と感じる内容ですが、まあ専門書ではなく広く浅く学び考えるための入門書として良いと思います。

 個人的に気に入ったのは、つのだじろう氏の「恐怖新聞」が、読者との双方向コミュニケーションメディアとして機能していたという話、週刊誌の記事を丹念に追うことで超能力ブームの全体像をつかもうとする小論、あとはエクソシストとイラク戦争の関係、といったところです。

「本書を編むために急遽結成されたオカルト研究会(通称オカ研)では、執筆者のみなさんと熱い議論を戦わせた。午後から始まり、酒席に場所を移した後も話題は尽きることなく、気がつけば日付が変わっていたりした。(中略)あたかも話題を奪い合うように怒鳴りあい笑いあうみなさんの声が、いまも耳の奥で鳴り響いています」
(単行本p.294)

という「おわりに」を読むと、他人事とは思えないような気がしてなりません。

 やや割高な本なので文庫化されるのを待つというのも手ではありますが、文庫化されるとは限りませんし、あの時代の雰囲気を思い出したい人、様々なオカルトネタの出発点に興味がある方は、ささっと一冊買ってしまってはいかがでしょうか。

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