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『極楽・大祭・皇帝 笙野頼子初期作品集』(笙野頼子) [読書(小説・詩)]

シリーズ“笙野頼子を読む!”第18回。

 1999年を起点に最新作まで読んだので、今度はいよいよ笙野頼子のデビュー作から順番に1999年を目指して読んでゆくことにします。

 今回の『極楽・大祭・皇帝』ですが、デビュー作『極楽』および『大祭』の発表が1981年。『皇帝』の発表が1984年。単行本出版は1994年。私が読んだ文庫版は2001年発行です。

 裏表紙に「暗黒の80年代を注ぎ込んだ引きこもり・憎悪小説集」とある通り、何と言うか、常軌を逸した短編集です。

 発表から単行本まで10年かかっているという事実を見ても、デビュー直後の笙野頼子が、一部で高い評価を受けながらも、事実上“黙殺”されていたことがよく分かります。

 『極楽』は、究極の地獄絵を完成させようとする画家の話。『大祭』は支配者である親を殺害しようとする少年の話。『皇帝』は自閉帝国という妄念にとらわれた引きこもり青年の話。

 極端に観念的で陰鬱で苦しみに満ちた作品ばかりで、いずれも自室に引きこもる主人公の苦悩と妄想が延々と書かれています。正直言って、読み進めるのはかなり苦痛です。

 中でも『皇帝』の凄絶というか、無限に繰り返す観念地獄の凄まじさは尋常ではなく、読後しばらく立ち直れないほどの精神的ダメージを受けました。

 まだ「引きこもり」という概念も社会的に認知されてない時代、それも世間が“浮かれていた”80年代に、それこそ引きこもり状態でこれを何年もかけてコツコツと書いていた20代の笙野頼子を想像すると、戦慄を覚えます。

 誰にでもお勧めできる小説ではありませんが、笙野頼子の戦いの原点を理解する上で重要な作品集だと思います。

タグ:笙野頼子
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