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『fマクベス』(中村蓉) [ダンス]

 2023年9月23日は、夫婦で吉祥寺シアターに行って中村蓉さんの公演を鑑賞しました。マクベスをダンス化した作品です。

[キャスト他]

振付・構成・演出: 中村蓉
出演: 中村蓉、池上たっくん(OrganWorks)、山田暁(YUKIO SUZUKI projects)、山田ゆう子、LINDA、武井琴、大澤寧音、中川友里江

 マクベスのいくつかのシーンを取り出し、ダンス、演劇的セリフ、マイム、その他さまざまな手法で再構成してゆきます。個人的にはカンパニーデラシネラの小野寺修二さんの作風を連想しました。

 前半けっこう笑わせにくる演出が多く気楽に見ていられるのですが、そのうち段々とシェイクスピア四大悲劇へと至り、最後のほうは狂気と暴力をダンスの振付で表現してみせます。同じ動きをひたすら繰り返す振付が強烈で、ちょっと忘れがたい印象。中村蓉さんの作品を観たのは実は初めてなのですが、かなり好み直撃だと感じました。次の作品も観ようと思います。





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『月の砂漠』(勅使川原三郎、佐東利穂子) [ダンス]

 2023年9月9日は、夫婦でKARAS APPARATUSに行って勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんのアップデイトダンス公演を鑑賞しました。二人が踊る一時間ほどの新作です。

 先月は東京芸術劇場プレイハウスで見たばかりですが、やはりひさびさのKARAS APPARATUSでの公演は高揚します。10周年記念公演ということもあってか、今作は比較的エンタメ性が高いというか、盛り上がるシーンが多く、感動的でした。

 照明効果だけで神話的異界を創り出す演出はいつもながら冴えていて、そこでお二人ががんがん踊ってくれるわけです。個人的には、佐東利穂子さんの、空間を切り裂くような鋭い動きから水中をゆらめくような幻想的な動きまで、腕の動きの様々なバリエーションを一気に見ることが出来たのが嬉しかった。





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『全自動煩脳ずいずい図』(康本雅子) [ダンス]

 2023年8月19日は、夫婦でKAAT神奈川芸術劇場に行って康本雅子さんの代表作を鑑賞しました。康本さんを含む8名の出演者が踊る上演時間100分の作品です。


[キャスト他]

振付・演出: 康本雅子
出演: 小倉 笑、菊沢将憲、小林 萌、小山まさし、鈴木春香、辻本 佳、村上 渉、康本雅子


 康本雅子さんの代表作なんですが、実は観たことがなく今回が初鑑賞となります。100分にわたって康本やりたい放題という舞台ですが、次の瞬間の展開が読めないというか目を離しているすきに何するか分からないので常に緊張を強いられる100分。

 康本雅子さん自身のダンスはとても不可解で、別に奇矯な動きではないのに意表をつかれまくる。こちらの把握が追い付かないうちにどんどん先に進んじゃう感じが心地よく同時に居心地が悪く。後から思い出そうとしても全くイメージが湧いてこない。とても気になるので、もっときちんと観なきゃなと思います。





タグ:康本雅子
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『ランボー詩集 ー地獄の季節からイリュミナシオンへー』(勅使川原三郎、佐東利穂子) [ダンス]

 2023年8月11日は、夫婦で東京芸術劇場プレイハウスに行って勅使川原三郎さんと佐東利穂子さん、さらにハンブルクバレエのリアブコなど二名のゲストが参加する新作を鑑賞しました。80分ほどの作品です。

出演: 勅使川原三郎、佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコ、ハビエル・アラ・サウコ

 2017年7月にKARAS APPARATUS、同年12月にシアターχで見た『イリュミナシオン』、のアップデイト版だと思うのですが、ほとんど別の作品のように感じられます。

 最もめだつ分かりやすい違いは、舞台中央を占める舞台道具。高さ人間の背丈の数倍はある巨大な本(詩集)が客席に向かって90度くらい開かれた状態で置かれています。実際には数枚のプレートを並べたものですが、照明の具合によってこれが本に見えたり奇怪なオブジェに見えたり迷宮に見えたりするのです。

 この詩集の前でランボー役であろう勅使川原三郎さんが苦悩したり熱に浮かされたように興奮したり。詩の言葉あるいはペンの動きに扮したアレクサンドル・リアブコ、ハビエル・アラ・サウコがページの間を行き来し、佐東利穂子さんが詩の霊感となって詩人を翻弄する、という感じ。特にストーリーやキャラクターが示されるわけではなく、すべて抽象ダンスとして表現されます。外界で何が起きているのかは音楽で暗示されるのみで、舞台上はひたすら詩人の内面と化します。

 勅使川原三郎さんのランボーは記憶のなかにある『イリュミナシオン』よりも内省的な雰囲気になっていて、細かい動きと表情で丁寧に詩人を表現してゆく技はすごい。佐東利穂子さんは生身の女性を踊ることもあれば、運命とか精霊とか死とか象徴的なものを踊ることもあるのですが、今作は象徴的なほう。様々な動きを組み合わせて詩人にとっての霊感のようなものをダンスで表現する様には大きな感銘を受けました。





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『リヴァイザー/検察官』(クリスタル・パイト、キッドピボット) [ダンス]

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 クリエイションのプロセスについては、最初は茶番劇の形式から始まり、そこからどんどん脱構築していって、最終的には劇自体を査察していくような形式を取りました。比喩的に言うなら、この『リヴァイザー』における茶番劇は仮面のようなものであり、その仮面を剥がしていくような作品になっていると思います。(中略)そして仮面が剥がれると、世界がガラリと変わります。何か中間的な領域へと入っていき、照明も大きく変化して、神秘的な空間が生まれるのです。その場面は極めて脱構築的で、いわば夢のような空間です。それが前半の茶番劇表面化に潜んでいたもの、真実そのものであるということ。この作品は「真実であること」と「変容の可能性」を示したものであると考えています。
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公演パンフレット「クリスタル・パイト インタビュー」より


 2023年5月28日は、夫婦で神奈川県民ホールに行ってクリスタル・パイトひきいるキッドピボットの来日公演を鑑賞しました。ゴーゴリの戯曲『検察官』を元にした上演時間90分の作品です。


キャスト等

演出・振付: クリスタル・パイト
脚本: ジョナソン・ヤング
出演: ラキーム・ハーディ、鳴海令那、ジュリアン・ハント(ブランドン・アリーの当日代役)、ダグ・レサレン、エラ・ホチルド、グレゴリー・ラウ、ジェニファー・フロレンティーノ、レネー・シグワン


 まずゴーゴリの原作に近い(ただしセリフはすべて“現代風に”リヴァイズ(改訂)されている)茶番劇から始まって、途中でそれまでの展開を自己言及的にリヴァイズしてゆく、という構成です。

 茶番劇も楽しいのですが、なんといっても脱構築パートが凄い。クリエイション時のクリスタル・パイトの内面がそのまま作品になったような感じで、背景に反射光を投影する巧みな照明設計により現実から遊離して深層心理を探るような舞台が生まれます。

 表層的なプロットは剥ぎ取られ、もはや言葉は意味を失いダンサーの動きを乗せる背景音となり、あとは登場人物たちや「機構」の本当の姿がダンスの表現によって暴かれてゆく。人の性根や社会システムの奥底に到達すると、そこには恐ろしい怪物が徘徊しており、このシーンは息を飲む迫力。

 この脱構築パートにおける色々なものを切り裂くような振付はシャープで切れ味が鋭く、スタイリッシュというかシンプルにカッコいい。シビれる動きがてんこ盛りです。このパートだけ取り出して抽象ダンス作品として鑑賞したいくらい。

 全体的に言葉とダンスをこんな形で反応させるというのは驚きでした。自分が知らないだけで新しい試みというものはちゃんと続いてるんだなという感慨を覚えました。





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