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『DRAWDOWN ドローダウン ― 地球温暖化を逆転させる100の方法 』(ポール・ホーケン:著、江守正多:翻訳、東出顕子:翻訳) [読書(教養)]

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 本書は気候の不安がない世界を築くための青写真になるはずです。実践的で、研究が進んでいて、すでに実用規模になっている解決策をモデル化することによって、『ドローダウン』は、私たちが地球温暖化を逆転させ、新しい世代によりよい世界を残せる未来を提示します。
 ニュースや報道は私たちが行動しなければどうなるかに焦点を当てるので、私たちはつい気候の未来は厳しいと考えてしまいます。『ドローダウン』の焦点は、私たちに何ができるかにあります。(中略)気候変動を阻止するために必要な道具は、すべてそろっています。その道具をどう使うかという計画もポールたちのおかげで手に入りました。さあ、行動を起こして、温暖化を逆転させましょう。
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単行本p.9


 温暖化ガス排出量の増加を今後Xパーセントまでに抑えないとこんな恐ろしい事態に……。
 その話はもう聞き飽きた。今、私たちに必要なのは、大気中の温暖化ガスを“減らす”ための方策だ。それらは既に専門家によっていくつも考案されており、その多くは絵空事ではなく着実に実施されつつあり、やるべきことは優先順位をつけて推進することだけなのだ。
 エネルギー技術から農業改革や都市計画、女性の地位向上まで、大気変動を逆転(ドローダウン)させるための具体策をリストアップし、その効果とコスパによってランク付けすることで、実施計画の基礎を作り上げるプロジェクト・ドローダウンの最新成果をまとめた本。単行本(山と渓谷社)出版は2021年1月です。


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 私たちが収集した経済データは、世界中の問題がもたらす出費のほうが今や解決策を実行するためのコストを上回っていることを明確に示しています。言い換えれば、環境再生型の解決策に着手することで達成できる利益は、問題を引き起こしながら、あるいは現状維持で得る金銭的利益より大きいということです。たとえば、農業で最も収益性と生産性が高い方法は環境再生型農業です。発電産業の場合、2016年時点の米国では太陽光産業の雇用者数はガス、石炭、石油の合計より多くなっています。環境再生は環境破壊より多くの雇用を生み出します。未来を奪うのではなく、未来を修復する経済を実現するのは、まったく難しいことではないのです。
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単行本p.387


目次
・エネルギー
・食
・女性と女児
・建物と都市
・土地利用
・輸送
・資材
・今後注目の解決策




エネルギー
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 エネルギーに関する経済データに1年も浸っていれば(私たちがそうでした)、うなずける結論はこれしかありません。(中略)化石燃料の時代は終わり、今の問題はいつ完全に新しい時代になるかということだけなのです。クリーンエネルギーは高くない。となれば経済学の原則で、その新時代はいずれ必ずやってきます。
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単行本p.23

 再生エネルギーはもはやコスト高ではなく、経済的に最も理に適ったエネルギー源となっている。風力、地熱、太陽光、波力や潮力、バイオマス、そして原子力まで。様々な発電方式と、グリッド(送電網)、分散型エネルギー貯蔵など、発言・送電・蓄電に関する技術を整理して、そのコストと効果を数値化します。





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 食料の生産から流通、消費までの諸産業の相互関係からなるフードシステムは精巧で複雑です。そこで必要なもの、そのインパクトも並外れています。(中略)私たちが肉を好んで食べるには、600億頭以上の陸生動物が必要なうえに、その動物に食べさせる飼料と牧草のために農地の半分近くを使わなければなりません。二酸化炭素、亜酸化窒素、メタンなど、家畜由来の温室効果ガスの年間排出量は全体の18~20%を占めると推定され、化石燃料に次ぐ排出源です。
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単行本p.81

 肉食や食料廃棄の削減から、コンポスティング、農地再生、そして環境再生型農業まで。農業や牧畜を見直すことにどれほど大きなインパクトがあるかを解説します。




女性と女児
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 気候変動の影響を受けやすいのは圧倒的に女性と女児です。同時に、地球温暖化への取り組みを成功させるにも――そして人類の全体的なレジリエンス(復元力)を高めるにも軸となるのは女性と女児です。読めばわかるとおり、性別による抑圧と社会的排除は、実は誰にとっても損になります。一方、平等は誰にとっても利益になります。これから述べる解決策は、女性と女児の権利とウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)を向上させれば、この地球上の命の未来を好転させる可能性があることを教えてくれます。
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単行本p.149

 家族計画、教育や就業の機会など、女性の地位を向上させることでどれほど社会的資源拡大や人口圧力低減に効果があるかを検証します。平等と差別撤廃は、倫理的社会的な効果はもとより、気候変動問題の解決にも強い影響を与えることが分かります。




建物と都市
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 都市に対する認識は、環境破壊の病巣だと非難の目が向けられていた時代から大きく変化しました。今や適切にデザイン・管理された都市環境ならば一種の生物学的な“箱舟”にも、文化的な“箱舟”にもなる、つまり、人間が地球環境への影響を最小限に抑えながら、教育を受け、創造性を発揮し、健康に過ごせる場所になると見なされています。(中略)都市は、劣化の原因ではなく、環境と人間の健康や幸せを再生させる存在になりつつあります。
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単行本p.161

 環境負担ゼロのビルや都市設計。自転車や徒歩だけで生活できる都市づくりから、屋上緑化、LED照明、スマートガラス、スマートサーモスタット、水供給システム、そしてビルオートメーションまで。都市を環境問題解決の中心にする様々な技術や計画を解説します。




土地利用
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 土地の使い方が違えば、あるいは放牧法や栽培法が変われば、どうなるかを計算しました。計算には含まれていませんが、22の解決策がいずれも後で後悔することのない解決策であることは調査結果にはっきりと示されています。実行すれば、土壌水分、雲量、作物収量、生物多様性、雇用、人間の健康、収入、レジリエンス(抵抗力や回復力)が増す一方、農地に投入しなければならない化学肥料や農薬は格段に減ります。
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単行本p.201

 森林、熱帯林、沿岸湿地、泥炭地などの保護。植林や竹の活用、そして先住民による土地管理まで、土地利用の方策を見直すことによる影響を解説します。




輸送
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 輸送の利用と持続可能性は、人がどこで、どのように住まい、働き、遊ぶかということと切り離せません。今後、大きな影響を及ぼすのは、都市環境の設計と過剰消費の削減、この2つになるでしょう。
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単行本p.251

 高速鉄道、船舶、飛行機やトラック。電気自動車、テレプレゼンス、ライドシェアなど、人や物を大量に移動させるためのインフラに関する解決策の数々を解説します。




資材
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 製品や建築に使われる資材についても、資材のリデュース(削減)・リユース(再利用)・リサイクル(再資源化)の手段についても、社会は再設計や再考にまだ手をつけはじめたばかりです。当然ながら、このセクションに最新の発見は含まれていませんが、ここでは地球温暖化を逆転させるために必須の、すでに一般的になっている方法や技術を詳しく紹介します。なんといっても、解決策ランキング1位はこの分野にあるのです。
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単行本p.289

 冷媒やセメントの代替品、再生紙やバイオプラスチックなど、新素材を中心に、節水からリサイクルまで資材をどのように循環させ環境負荷を減らすかを解説します。




今後注目の解決策
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 前ページまでの80の既存の解決策の場合、私たちはきっちり一線を引いていました。実績とコストに関して豊富な科学的・経済的情報があり、しっかりと確立された解決策であること、という基準です。しかし、すでに普及しつつある解決策に絞ることで、私たちの地球温暖化を解決する力が、すでに知っていること、やっていることに限られているかのような印象を与えたくはありませんでした。本セクションでは、遠からず登場する手の届きそうな解決策をお見せしましょう。(中略)ここで紹介する技術と解決策はまぎれもないゲームチェンジャーになる可能性を秘めています。
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単行本p.311

 人工光合成、自動運転、海洋農業、スマートグリッド、ハイパーループ、環境再生型養殖、微生物農業、スマートハイウェイ、大気中からの二酸化炭素の直接回収。これまでに紹介したすでに実施されている施策に加えて、近いうちに実用化されるであろう技術やプランは数多い。ドローダウンは実現できるし、解決策の実施による直接的利益はそのコストを大きく上回る。人類に明るい未来はあるし、何をすればよいかはもうわかっている。あとは行動するだけなのだ。





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