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『宇宙を解くパズル 「真理」は直観に反している』(カムラン・バッファ:著、大栗博司・水谷淳:翻訳他) [読書(サイエンス)]

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 本書には一貫したテーマがある。それは、物理的現実の根底にはたった一つの支配的な考え方でなく、相反するような概念がいくつも存在していて、それらが組み合わさって物理的現実を形づくっているということだ。相反するそれらの概念がどのようにからみ合って調和し、驚きの結果をもたらしているか、それを理解することが本書の大目標である。これまでに発見されてきた自然界の重要な原理のいくつかを、パズルを通じて見つめることで、それらの概念を説明できればと思う。
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「はしがき」より


 ニュートンの運動方程式は運動量保存則から導き出され、運動量保存則は空間並進対称性から導き出される。対称性、保存則、双対性といった物理法則の基盤に位置づけられる重要な概念を、簡単なパズルを解くことで学べる素敵なサイエンス本。単行本(講談社)出版は2022年10月です。




目次

序章 現代物理学への招待
第1章 対称性と保存則
第2章 対称性の破れ
第3章 単純で抽象的な数学のパワー
第4章 直観に反する数学
第5章 物理的直観
第6章 直観に反する物理
第7章 双対性
終章 本書をふりかえって




第1章 対称性と保存則
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 物理における対称性のそれぞれに対して、自然界で保存される量が一つずつ存在する。1918年に発表されたネーターの定理によれば、連続対称性が一つあるごとに、それに対応した保存則が必ず一つ成り立っている。この章の前のほうで説明したように、対称性は美しいだけでなく、物理学にとって欠かせない役割を果たしているのだ。
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「奇数人の兵士がいて互いの距離はそれぞれすべて異なる。各兵士は、自分から一番近い兵士を見守るよう指示されている。少なくとも一人の兵士が誰からも見守られていないことを証明せよ」




第2章 対称性の破れ
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 物理学者は長い学びを経て、対称性の自発的な破れがいかに強力であるかを認識するに至った。(中略)もしも対称性が破れていなかったら、宇宙には質量ゼロの粒子が光速で飛び交っているだけで、恒星や惑星、銀河やブラックホール、そして我々自身を含め、この宇宙に見られる驚くべき存在はいっさい形づくられなかったことだろう。
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「4つの都市が正方形の4つの頂点に位置している。最小のコストですべての都市を結ぶ高速道路網を設計せよ」




第3章 単純で抽象的な数学のパワー
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 ここで取り上げる概念の中には、きわめて深遠な形で姿を現しているものもある。また、きわめて基本的なレベルでは法則と制約条件の違いがなくなって、我々が原理とみなしている事柄の多くが、実は制約条件に由来していることがわかってくるはずだ。
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「負けても1回だけ敗者復活戦に挑むことができるトーナメント戦に64チームが参加する。優勝チームが決定するまでに何試合が行われるか」




第4章 直観に反する数学
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 数学に関して言うと、与えられた問題に対して、答えはこうであるはずだという先入観を持って挑んでしまうかもしれない。直観もときには役に立つが、惑わせることもある。しかし、数学的に単純に考えることで、物事がはっきり見えてくることが多いのも確かだ。
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「5組の夫婦だけが参加するパーティが開かれ、どの参加者もまだ知り合いではない人とだけ握手をした。あなたの配偶者を除いて全員が、それぞれ異なる人数(ゼロも含む)と握手したという。あなたの配偶者は何人と握手したか」




第5章 物理的直観
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 物理的直観は数学的真理を導き出すのにも使える。(中略)もともと数学の問題だったものに物理を当てはめると、ひらめきが得られて、もとの数学的な形式では難しそうに思えた答えを単純な形で導き出せるのだ。
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「ボールを投げて壁で跳ね返らせて、天上に取り付けられている特定の物体に当てたい。壁のどこを狙えばよいか」




第6章 直観に反する物理
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 多くの人は、現代物理学は直観に反するものだと思っているし、そういった感覚にもうなずけるところはある。現代物理学は分野外から見るとますます奇妙に映る。しかし、非直観的な物理はけっして現代になってから生まれてきたものではなく、もっとずっと昔に端を発している。その一例である浮力は、2000年以上前から知られている。そしてそんなに歳月が経っていながら、いまだにかなり直観に反している。
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「強力な小型送風機と、大きくて軽いビーチボールがある。送風機だけを使ってビーチボールを空中に安定的に浮かべるにはどうすればいいか」




第7章 双対性
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 近年、数学や物理学では、複雑な問題をそれと等価な、つまり双対的なもっとずっと易しい問題に置き換えようとする動きがたびたび見られる。その易しいほうの問題の答えを利用すると、複雑なほうの問題がほぼ自明になってしまい、もともと考えられていたよりもはるかに簡単だったことがわかるのだ。
 出来のよいパズルもそういうもので、解くために必要なのは視点の転換。重要なのは、どのように、そしてどのような形で視点を転換するかである。
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「平面上を4匹のアリが、互いに異なる方向に一定速度でまっすぐ歩いている。アリ1とアリ2のペアを除いて、すべてのアリどうしのペアはどこかで互いに衝突する(または衝突した)ことがわかっている。アリ1とアリ2もどこかで確実に衝突するといえるだろうか」





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