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『画詩 百鬼夜行』(nonya、遠野魅雨) [読書(小説・詩)]

――――
人は街を作り
街は闇を喰らった
人は闇を畏れなくなり
鬼は忘れ去られたが
人の中の闇は濃くなるばかりだった

闇を追われた鬼は
やがて人の中の闇に忍び込み
人の住まない街を人に作らせた
醜く膨張するばかりの街を
鬼に憑かれた人々が右往左往し始めた

もう誰が人か鬼か分からない
――――
『東京百鬼夜行』より


 妖怪テーマの詩作と、友禅染による「妖怪イラスト」がコラボレーションした、現代の妖怪絵巻。同人誌頒布は2009年7月です。

 都会の闇に追いやられた妖怪、あるいは妖怪変化した現代人。それぞれに事情を抱えながらも、したたかに、あるいは世をすねて、ときに楽しげに、東京を生き抜いています。そんな妖怪たちの声を詩として、姿を友禅染として、表現したフルカラーの美しい一冊。

お問い合わせは発行者であるnonyaさんまで。
nonya@wf6.so-net.ne.jp


[目次]

飛頭蛮(ろくろくび)
火車(かしゃ)
ぬらりひょん
ふらり火
塗壁(ぬりかべ)
橋姫
キツネ火
般若(はんにゃ)
ぬっぺふほふ
土蜘蛛(つちぐも)
窮奇(かまいたち)
木魅(こだま)
百々目鬼(どどめき)
赤舌(あかした)
一反木綿(いったんもめん)
姑獲鳥(うぶめ)
手の目
濡男(ぬれおとこ)
玉藻前(たまものまえ)
鉄鼠(てっそ)
乳女(ちちおんな)
日和坊(ひよりぼう)
雪女(おきおんな)
以津真天(いつまで)
猫また
高女(たかおんな)
酒顛童子(しゅてんどうじ)
震々(ぶるぶる)
覚(さとり)
狂骨(きょうこつ)
反枕(まくらがえし)
絡新婦(じょろうぐも)
鵺(ぬえ)
逆柱(さかばしら)
山姥(やまうば)
陰摩羅鬼(おんもらき)
河童(かっぱ)
毛倡妓(けじょうろう)
魍魎(もうりょう)
逢魔時(おうまがとき)
東京百鬼夜行


 現代を生きる妖怪たちの苦労も様々です。非正規労働者として、ていよく搾取されてたり。


――――
東京タワーのライトアップのバイトは
少し怖かったけど時給の油揚は厚かった
明日は午後6時にお台場集合らしいけど
エコとか言って体よく使われてる気がする
人はあやかしなんかよりずっと腹黒いらしい
真夜中の公園のブランコを揺らしながら
溜息を燃やしたらいつもより青白かった
――――
『狐火』より


 生活に疲れてたり。


――――
もうそろそろ思い出して欲しいの
あの冬の日の美しい青年も
今じゃ肉色の雪だるまで7人の子だくさん
どうにも暑苦しくて耐えられないわ
今年も余計に雪を降らせてやったけど
あなたはゴルフに行けないと不機嫌なだけ
いっそあの時凍らせとけば良かったわ
――――
『雪女』より


 都会の夜をハードボイルドに放浪したり。


――――
つい50年前にあの子と出会った川縁は
無骨なコンクリートで蓋をされたけれど
僕はまだ生臭い闇が忘れられなくて
水掻きをポケットに突っ込んでそぞろ歩く
都会の夜は頭の皿よりも胸の真ん中が
ヒリヒリと乾いてやり切れないけれど
人の中の薄っぺらな闇には飛び込めない
――――
『河童』より


 粋がってみたり。


――――
ブランドって何でしょう
トレンドって何でしょう
ステータスって何でしょう
セレブリティって何でしょう
誰かの視線につながれた風船になるよりも
飾り羽が多すぎて飛べない鳥になるよりも
布きれ一枚で夜空を漂うのが粋ってもんですよ
――――
『一反木綿』より


 今も昔も変わらず普通によくいるおやじだったり。


――――
つかみどころなんてあってたまるか
若い頃の苦労はすぐに質入れしたし
長い物は巻かれるふりして帯にした
真っ正面から当たるなんてドジは踏まない
折れない柳は風を知り尽くしているものさ
今宵も夜の街にぬらりと這い出して
ひょんなおやじギャグを散布してやるぜ
――――
『ぬらりひょん』より



タグ:同人誌
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