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『シカク』(井手茂太、斉藤美音子、イデビアンクルー) [ダンス]

 2016年10月22日は、夫婦でにしすがも創造舎に行って井手茂太さん率いるイデビアンクルーの新作公演を鑑賞しました。Aキャスト版(女性4名)、Bキャスト版(男性4名)という二つのバージョンがあり、私たちが観たのはAキャスト版、つまり女性4名が踊る1時間の舞台です。


[キャスト他]

振付・演出: 井手茂太
出演
  Aキャスト: 斉藤美音子、依田朋子、宮下今日子、福島彩子
  Bキャスト: 小山達也、中村達哉、松之木天辺、井手茂太
音楽: ASA-CHANG&巡礼


 中央の広い部屋、それを四つの小部屋が囲むような配置になっている、4LDKの住居見取り図のような舞台。実際にあるのは床だけで壁は存在しないのですが、建物の中で起きている日常生活をこっそり見ているという設定らしく、壁を通り抜けるようなことは原則しません。

 登場する4名はどうやらこの共同住宅に引っ越してきたという設定らしく、部屋や窓の外の景色をしげしげと観察する、掃除機をかけ始める、中央の大きな部屋(共同で使う広間らしい)をうろついて他の部屋の様子を窺う、など色々な動きが繰り広げられます。各人が自分の部屋で寝転がったり、夢遊病で徘徊したり、荷物を取りに裏口に回ったり。

 だらしない部屋着を着て「自室」でくつろいでいたりと、衣装は地味。斉藤美音子さんだけは真っ赤なチュニックに星条旗柄のスパッツという、かなり派手というか変な格好していますが、何しろ何事にもこだわらないように見えるので、観客含め誰も気にしません。

 ささいな諍いから意地になって他人をぐいぐい押しやるうちに何かラインダンスになったり、それが面白いのでメンバー変えてまたやったり。ごく日常的な動きから、本来の意義が失われて動きそのものが独立し、ダンスになってゆく様がステキです。4名が同時多発的にあたふた走り回る(玄関を出て家の裏手に回って窓から手を振ったり、トイレの前で入る順番を譲り合ったり)動きを何度も繰り返すシーンは圧巻。

 人間関係の微妙な齟齬、という表現は、さすがのイデビアンクルーです。例えば共同広間のテーブル一つに、椅子は三つ。一人だけ椅子がなくて仲間外れになった斉藤美音子さん。ここで椅子とりゲームが始まるのかなと思うと、いきなり寿司屋さんごっこに移行して一人だけ立っている気まずさを強引に解消してしまう、とか。

 ダンスシーンのすっとぼけた動きはたまらなく魅力的です。実際には二畳くらいしかない狭い「小部屋」で、互いにぶつからないよう、壁も抜けないようにしながら、4名が激しく踊るシーンは忘れがたいものがあります。完璧にタイミングを合わせた緻密な振付なのに、誰もが好き勝手に自分だけのすっとんきょーダンスを踊っているように感じられるという、この凄さ。

 わたしたちが観たのはAキャストだけですが、終演後、あのシーン、このシチュエーション、井手茂太さんが踊ったらこんな感じか、いやこうか、と頭の中で色々と想像して、両キャストのチケットを確保しておくべきだったと軽く後悔しました。



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