『ネットワーク仮想化 基礎からすっきりわかる入門書』(渡辺和彦、法橋和昌、沢村利樹、池上竜之) [読書(サイエンス)]
--------
ITに関連して、「仮想化」(Virtualization)というキーワードがよく使われています。この言葉は、新しい技術用語として捉えられがちですが、実はその起源は古く、仮想記憶(Virtual Storage)やVPN(Virtual Private Network)のように、1960年頃から広く使われてきた概念です。最近、新しい仮想化技術にもとづいた製品や基盤が登場し、再びこのキーワードが注目を集めています。
仮想化は、「実際には存在していないものを、存在しているかのように見せかける」、「実際に存在している複数のものを、論理的に統合して別のものに見せかける」という意味を持っており、具体的には、システムやネットワークを構成する各種の物理資源を、あたかも論理的に異なる資源であるかのように認識させる技術や手法という意味で使われています。
--------
Kindle版No.13
VLANからVRF、仮想スイッチ、仮想NIC、DCI、TRILL、FCoE、SDN/OpenFlowまで。ネットワーク資源を仮想化する技術について、「そもそも仮想化とは何か」というレベルから体系的に学ぶための入門書。単行本(リックテレコム)出版は2013年6月、Kindle版配信は2015年9月です。
サーバ、ストレージの次はネットワークの仮想化だ。というわけで、昨今なにかと騒がしいSDN/NFVまわりの話題についてゆくための入門書です。全体は7つの章から構成されています。
「第1章 仮想化とは」では、そもそも仮想化とは何か、という解説から始まって、サーバ、デスクトップ、ストレージ、ネットワークという具合に、仮想化の対象ごとに分類整理した代表的な仮想化技術が紹介されます。
そしてクラウドコンピューティングの概要とクラウドサービスの分類(プライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、コミュニティクラウド、さらにインタークラウド)毎の構成とサービス内容を概説。また、仮想化やクラウドのメリット、デメリットについても解説されます。
「第2章 サーバ・デスクトップ・ストレージの仮想化」では、ネットワークを除く他の仮想化技術を学びます。仮想マシン、サーバ分割、サーバ統合、クラスタリング、RAID技術など。
「第3章 ネットワークの仮想化」では、いよいよ本題であるネットワーク仮想化技術について紹介してゆきます。まずはVLAN、リンクアグリゲーション、VPNといった伝統的な技術から始まり、アプライアンス、UTM、VRRP(ルータ冗長化)、VSS(スイッチスタック)などが紹介されます。
ここまでがいわば基礎篇で、次章から実地応用篇ということになります。
「第4章 仮想ネットワーク設計上の考慮点」では、まずは信頼性対策について詳しく見てゆきます。リンクアグリゲーション、BFDプロトコル、NICチーミングや仮想NIC、STP/RSTP、MPLSといった技術がどのように障害対策に用いられるかも解説されます。
続いてセキュリティ対策の観点から、ネットワーク分割、アクセス制御、ファイヤウォール、IDS/IPS、WAF、SSL/TLSなど紹介。さらに、ネットワーク管理、性能設計(負荷分散、QoS)といった観点からの仮想ネットワーク設計手法が解説されます。
「第5章 仮想ネットワークの利用」では、サーバ仮想化とネットワーク仮想化をどのように連携させるかという問題を、信頼性、セキュリティ、運用管理、といった観点から解説し、データセンタ仮想化へと進んでゆきます。
スタック技術やオーバレイ技術がどのように活用されるかと共に、VXLAN、NVGRE、EVBなどの技術も解説されます。続いてデータセンタ仮想化のための技術として、DCI技術や広域負荷分散についても解説されます。さらに、それらの技術を活用したパブリッククラウドのシステム構成について解説されます。
ここまでが実地応用篇で、次章から最新動向篇が続きます。といっても本書の出版は2013年なので、現在から見ると最新ではないことに留意は必要です。
「第6章 進化する仮想ネットワーク ~OpenFlow~」では、ネットワークにおけるコントロールプレーンとデータプレーンの分離を実現する技術としてOpenFlowを取り上げ、その背景、構成、基本動作などが比較的詳しく解説されます。
「第7章 仮想ネットワークを支えるその他の技術」は補遺のような感じで、TRILL、FCoE、PFC/ETS/DCBX、などが紹介されます。
まあ入門書だし、ネットワーク技術者なら常識的に知っていることばかりだろう、などと、なめていたら、実のところ知らないことが多くて勉強になりました。基礎から体系的に積み上げてゆく本なので、自分の知識に「何となく知っているつもり」の穴や偏りがないか、点検する上でもお勧めです。
なお、入門書ではありますが、あくまで「ネットワーク製品の企画開発や、ネットワークの設計運用に携わっている」専門家向けの本だということには留意して下さい。
今話題となっているOpenDaylightなどSDNまわりの話題は第6章で登場しますが、ごくわずかに触れられている程度です。NFVについては記述がありません。というわけで、SDN/NFVについては、まず本書で基礎をしっかり理解してから、最新動向を紹介してくれる本にあたる、というのがいいかと思います。
ITに関連して、「仮想化」(Virtualization)というキーワードがよく使われています。この言葉は、新しい技術用語として捉えられがちですが、実はその起源は古く、仮想記憶(Virtual Storage)やVPN(Virtual Private Network)のように、1960年頃から広く使われてきた概念です。最近、新しい仮想化技術にもとづいた製品や基盤が登場し、再びこのキーワードが注目を集めています。
仮想化は、「実際には存在していないものを、存在しているかのように見せかける」、「実際に存在している複数のものを、論理的に統合して別のものに見せかける」という意味を持っており、具体的には、システムやネットワークを構成する各種の物理資源を、あたかも論理的に異なる資源であるかのように認識させる技術や手法という意味で使われています。
--------
Kindle版No.13
VLANからVRF、仮想スイッチ、仮想NIC、DCI、TRILL、FCoE、SDN/OpenFlowまで。ネットワーク資源を仮想化する技術について、「そもそも仮想化とは何か」というレベルから体系的に学ぶための入門書。単行本(リックテレコム)出版は2013年6月、Kindle版配信は2015年9月です。
サーバ、ストレージの次はネットワークの仮想化だ。というわけで、昨今なにかと騒がしいSDN/NFVまわりの話題についてゆくための入門書です。全体は7つの章から構成されています。
「第1章 仮想化とは」では、そもそも仮想化とは何か、という解説から始まって、サーバ、デスクトップ、ストレージ、ネットワークという具合に、仮想化の対象ごとに分類整理した代表的な仮想化技術が紹介されます。
そしてクラウドコンピューティングの概要とクラウドサービスの分類(プライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、コミュニティクラウド、さらにインタークラウド)毎の構成とサービス内容を概説。また、仮想化やクラウドのメリット、デメリットについても解説されます。
「第2章 サーバ・デスクトップ・ストレージの仮想化」では、ネットワークを除く他の仮想化技術を学びます。仮想マシン、サーバ分割、サーバ統合、クラスタリング、RAID技術など。
「第3章 ネットワークの仮想化」では、いよいよ本題であるネットワーク仮想化技術について紹介してゆきます。まずはVLAN、リンクアグリゲーション、VPNといった伝統的な技術から始まり、アプライアンス、UTM、VRRP(ルータ冗長化)、VSS(スイッチスタック)などが紹介されます。
ここまでがいわば基礎篇で、次章から実地応用篇ということになります。
「第4章 仮想ネットワーク設計上の考慮点」では、まずは信頼性対策について詳しく見てゆきます。リンクアグリゲーション、BFDプロトコル、NICチーミングや仮想NIC、STP/RSTP、MPLSといった技術がどのように障害対策に用いられるかも解説されます。
続いてセキュリティ対策の観点から、ネットワーク分割、アクセス制御、ファイヤウォール、IDS/IPS、WAF、SSL/TLSなど紹介。さらに、ネットワーク管理、性能設計(負荷分散、QoS)といった観点からの仮想ネットワーク設計手法が解説されます。
「第5章 仮想ネットワークの利用」では、サーバ仮想化とネットワーク仮想化をどのように連携させるかという問題を、信頼性、セキュリティ、運用管理、といった観点から解説し、データセンタ仮想化へと進んでゆきます。
スタック技術やオーバレイ技術がどのように活用されるかと共に、VXLAN、NVGRE、EVBなどの技術も解説されます。続いてデータセンタ仮想化のための技術として、DCI技術や広域負荷分散についても解説されます。さらに、それらの技術を活用したパブリッククラウドのシステム構成について解説されます。
ここまでが実地応用篇で、次章から最新動向篇が続きます。といっても本書の出版は2013年なので、現在から見ると最新ではないことに留意は必要です。
「第6章 進化する仮想ネットワーク ~OpenFlow~」では、ネットワークにおけるコントロールプレーンとデータプレーンの分離を実現する技術としてOpenFlowを取り上げ、その背景、構成、基本動作などが比較的詳しく解説されます。
「第7章 仮想ネットワークを支えるその他の技術」は補遺のような感じで、TRILL、FCoE、PFC/ETS/DCBX、などが紹介されます。
まあ入門書だし、ネットワーク技術者なら常識的に知っていることばかりだろう、などと、なめていたら、実のところ知らないことが多くて勉強になりました。基礎から体系的に積み上げてゆく本なので、自分の知識に「何となく知っているつもり」の穴や偏りがないか、点検する上でもお勧めです。
なお、入門書ではありますが、あくまで「ネットワーク製品の企画開発や、ネットワークの設計運用に携わっている」専門家向けの本だということには留意して下さい。
今話題となっているOpenDaylightなどSDNまわりの話題は第6章で登場しますが、ごくわずかに触れられている程度です。NFVについては記述がありません。というわけで、SDN/NFVについては、まず本書で基礎をしっかり理解してから、最新動向を紹介してくれる本にあたる、というのがいいかと思います。
タグ:その他(サイエンス)
コメント 0