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『「超常現象」を本気で科学する』(石川幹人) [読書(オカルト)]

 「超常現象について、今現在、「実際に何がどこまで分かっているか」、「何がどのように謎なのか」を皆さんに紹介しながら、「いかに未解明の現象に取り組んでいくべきか」という「科学的思考」を身につけていただくことを第一にしたいと思っています。本書は、あくまで本気の科学の本です」(新書版p.4)

 幽霊、超能力などの超常現象は科学的に解明できるのか。超心理学の研究者が、決着のつかない「ある/ない」論争を越えて、社会的有用性に論点を移行させることを提唱する一冊。新書版(新潮社)出版は、2014年5月です。

 「これまで、超常現象に関する議論は不毛すぎました。私は、個人的な幽霊体験などと、既存の科学的世界観のあいだの溝が、これまで強調され過ぎていたのだと考えています」(新書版p.22)

 ESP、いわゆる超能力などを研究対象とする超心理学という研究分野があるのですが、著者は日本におけるこの分野の第一人者ということで、これまでも超心理学の現状を紹介する本を出してきました。

 個人的に読んだ範囲で二冊だけ紹介しておきますと、まず超心理学の状況に関しては、『超心理学 封印された超常現象の科学』にまとめられています。単行本読了時の紹介はこちら。

  2012年09月12日の日記:
  『超心理学 封印された超常現象の科学』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-09-12

 研究対象が心霊現象からESP現象へ移行していった経緯など、近代的な超心理学の歴史については、石川先生が監修している『超常現象を科学にした男 J.B.ラインの挑戦』(ステイシー・ホーン)が面白い。単行本読了時の紹介はこちら。

  2011年07月05日の日記:
  『超常現象を科学にした男 J.B.ラインの挑戦』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2011-07-05

 上記に比べると本書はもっと一般向けで、「超能力について真面目に研究している科学者がいるなんて、思ってもみなかった」というような人を読者として想定しているようです。

 というわけで本書ですが、全体は三つのパートに分かれています。

 最初の「「反」の部----幽霊をめぐる非科学的主張に反論する」(第一章から第三章)では、幽霊、お守り、金縛り、夢のお告げ、幽体離脱などの「超常現象」を取り上げて、そのメカニズムが既存の科学で説明できることを紹介し、「無闇にオカルトを信じたり、怖がったりするのは止めましょう」と訴えます。

 続く「「半」の部----超能力現象を半信半疑で検証する」(第四章から第六章)では、テレパシー、PK(念力)、予知、といったいわゆるESP現象に関して、超心理学がどのように研究してきたかを紹介します。

 最後の「「汎」の部----超常と日常を合わせて広汎に考える」(第七章から終章)では、不安定で再現性に欠けている(というより、むしろ確証が残ることを“避ける”)超常現象というものを、決着がつかない「ある/ない」論争から解放し、「それが役に立つか」(社会的に「ある」として認められるか)という観点から考えよう、と提唱します。

 「私自身は、「ESPが現実に存在するかどうか(現実基準)」を議論するよりも、「ESPがあるとすると、私たちにとってどんな意味があるのか(意味基準)」を議論するほうが、実入りがあると思っています」(新書版p.106)

 「科学的概念でも、「存在するかどうか」という現実基準はあまり問題にはならず、実際のところ「システムを構築するうえで必要な科学的議論に使えるか」という、意味基準が重視されているわけです」(新書版p.47)

 「これまでの幽霊や超能力の主張の背景には、個人にとっての有益性や意味はあったでしょうが、社会に対しては十分に明示されていません。むしろ、霊感商法やカルト宗教の蔓延につながるという、社会にとっての不利益の方がつねに問題となってきました。そこで、社会的な実用性を目指したテーマとして、創造性に着目します」(新書版p.187)

 ESPと創造性には何らかの関連があるのではないか。例えば、ESPが発揮される条件や環境についての超心理学の研究は、社会にとって有益な、個人の「創造性」を高めるという実用的成果を生む可能性があるのではないか。そういった論点を持ち出して、ある/ない論争の先に進もうと提唱するのです。

 これを「不毛な議論から脱却し、止揚を目指すための、前向きで建設的な提言」と考えるか、「決定的証拠をいつまでも出せない研究の、継続(予算獲得)のための悪あがき」と見なすか、それは読者それぞれでしょう。

 本書自体はバランス良く書かれていて、超常現象に関する考え方の違いに関わらず興味深く読むことが出来ると思います。個人的には、ESPの作用原理は因果律ではなくシンクロニシティ(共時性)なのではないか、というアイデアが印象に残りました。

 ほとんど余談ですが、第六章にSFファンを持ち上げる記述があり、超能力に大いに興味があるくせに頑なに否定しがちな彼らを、何とか懐柔しようとしているようで、思わず笑ってしまいました。

 「2011年の夏にあった日本SF大会の記念すべき第50回大会には、超心理学の成果を紹介しながら、聴衆を被験者にした模擬実験を実施してほしいと頼まれて参加しました」(新書版p.131)

 「大学で学生相手に行う模擬実験では、いつも「何も見えません」という反応がほとんどなのですが、それをはるかに上回るESPの手ごたえです。SFの愛好家は想像力が高く、クリエイティヴな人たちだからESPが発揮されやすかったとも考えられます」(新書版p.132)

 というわけで、SFファンは、超心理学に対してもう少し優しく接してあげてもいいのではないでしょうか。


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