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『YES(or YES)』(橘上) [読書(小説・詩)]

 「すべてうそですがしんじてください」
  (『この先の方法』より)

 ひらがなの氾濫、平然と刻む五七調リズム。まっ黒い装幀に白の手書き文字タイトルが不思議な存在感を放つ詩集。単行本(思潮社)出版は、2011年07月です。

 「「ゆうやけをもやしつくすこと、それがさいしょのしごとです」しじんのせつめいせきにんが こうていてきにしはいする にじげんきどりのよじげんの、しすてむてちょうはていぎをかえる」
(『GO』より)

 ひらがなのちからとりずむ。よく知っているはずの言葉が、まるで初めて見たかのように異質なものに感じられる、そんな奇妙な感覚を生み出す詩集です。リズムへのこだわりようも尋常ではありません。

 「そらがとぶ そらでとぶ そらがとぶ そらでとぶ そらがとぶ そらでとぶ そらのそらでそらがそらでそらのそらがそらでとぶ」
 (『この先の方法』より)

 「ありくいをくいちらし ありどもがふえつづけ くにくのさくににくがない ふあんでたのしいわたしはこわれ しようのこぴーをくりかえす」
  (『GO』より)

 意味がすこーんと抜け落ちて拍子歌のようなものになる直前の言葉をすくい取ったような。ときどき漢字が出てくる詩に出会うとほっとするのですが、これがまた、漢字を表意文字として使わないところが一途。

 「水が流れる 水が流れる/水は疲労する 疲れきる/水の疲労は声には届かず 水の疲労は水に流れる/水は水しか与えられずに 水だけ飲んで 水になる/美しい色 水が水にしか見せない水色の微笑/水は水を飲み干して 水は水しかいなくなる」
  (『THE END』より)

 読んでいるうちに、「水」という漢字が、何だかヘンな記号に見えてくるのです。収録作品のほとんどがこんな風に言葉を扱っているという、おそろしく生真面目な詩集。ひらがなと語のリズムが生み出す酩酊感を味わいたい方に。

 「ひとのいろしたひといろに いろにはなれぬひといろに いろのようにもえつづけないのであるならば いのりなさい あなたはいろでないことを いのりなさい あなたはうたでないことを」
  (『しんぐ・あ・そんぐ』より)


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