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『トワイライト・テールズ』(山本弘) [読書(SF)]

 ファンタジーとしての怪獣、UMAとしての怪獣、そして神としての怪獣。日本の郊外で、北米の湖畔で、タイの田舎で、コンゴの密林で、世界各地を舞台に怪獣と人間との様々な関わり合いを描く、人気シリーズ『MM9』の番外篇となる短篇集。単行本(角川書店)出版は2011年11月です。

 本格怪獣小説『MM9』シリーズの世界観を元に、世界各地で「ご当地怪獣」が活躍する楽しい短篇集です。

 『夏と少女と怪獣と』の舞台となるのは北米の湖。むろん、レイクモンスターが現れます。それも日本では「ハーキンマー」、というより「スクリューのガー助」として人気の高い、フラットヘッド湖のモンスターが主役なのが嬉しい。少年少女の恋と冒険を描いたジュブナイルですが、ちょっぴりブラッドベリも入っています。

 『怪獣無法地帯』は、多々良島ではなく、アフリカの密林が舞台。アフリカ産UMA総出演の上、キングコングと、当然のように女ターザンも登場して、秘境探検と怪獣対決モノの醍醐味を楽しめます。特定世代の読者であればプロローグを読んだだけでラスボスの見当がつきますが、油断しているとびっくりさせられることに。

 『怪獣神様』は、タイの田舎が舞台。宇宙から降臨した神である怪獣と少女の心の交流と避け得ない悲劇を描きます。暗い話ですが、存在を許されず徹底的に排除される「巨大怪獣」を社会からの疎外感に重ねる物語というのは、怪獣ストーリーの定番の一つなので、やはり外せないでしょう。

 『生と死のはざまで』は日本の郊外住宅地が舞台となります。現実に立ち向かう勇気がなく、安っぽいファンタジーにひたすら逃避する少年が主人公。出現した怪獣を「自分をこの嫌な世界から夢と冒険に満ちた異世界に連れていってくれるドラゴン」だと信じて出現ポイントに向かった彼を待っていた運命は。「トワイライトゾーン」っぽい仕掛けのある、ちょっとイタい話。

 舞台もプロットも雰囲気も様々ですが、とにかく巨大怪獣と美人(および/あるいは)美少女が出てきて活躍する(しかも、けっこう脱ぐ)、心踊る楽しい短篇集。SF度は低めですし、対象読者も『MM9』本編よりやや低年齢層がターゲットのようですが、怪獣ものが好きなら年齢問わず理屈抜きに楽しめるでしょう。

 あちこちにUMAや怪獣映画などのネタが散りばめられており、原典を探すという楽しみ方も出来ます。年号と地名がセットで出てくれば、それは作者の「目配せ」だと思って間違いありません。


[収録作品]

『生と死のはざまで』
『夏と少女と怪獣と』
『怪獣神様』
『怪獣無法地帯』


タグ:山本弘
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